2024年04月19日( 金 )

企業経営ワンポイント~事業承継と法人化

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(株)アンツインシュアランス 玉井 省吾 代表取締役社長

 2017年12月に発表された「2018年度税制改正大綱」は、事業承継税制の抜本拡充を始め、賃上げ、設備投資などを後押しする税制が実現!と、将来の納税不安を大幅に軽減する事業承継税制として期待されています。

 事業主は、法人と個人の税のバランスを今まで以上に考えることが重要になります。先日、ある事業主から事業の法人化の相談を受けました。一般的に法人化のメリットは、経営面では、財産を個人と法人に明確化し経営分析が可能となる、決算期を自由に設定できる、経営者・経営権の交代手続きが比較的容易である―などに対して、デメリットは、手続きが煩雑で費用(登記費用など)がかかることだとされています。税率面では、売上規模や事業主の事業所得などを考慮した、個人事業と法人の比較検討が必要です。

 なかでも事業承継(経営者の交代)において、「法人化」は非常に有効な手段となり得ます。生前に事業を後継者と一緒に運営し、計画的に承継を進めることが理想ですが、なかなか親族が一同に会して将来のことをしっかりと話し合うことは、現実的には難しいものです。法人設立には事業目的などの決め事(定款)が必要ですから、自ずと親族での話し合いが必要となります。当たり前のことですが、このことが事業承継において最も重要なことなのです。

 何回かお話しした結果、この事業主は事業承継手段として「法人化」を選ばれました。今回は、事業主を代表取締役社長とし、後継者を株主とする法人を設立するお手伝いをしました。「後継者に事業の運営を今のうちから引き継ぎたい」という事業主の要望を実現するとともに、生命保険を活用し、社長の退職金の原資づくりを計画。また、後継者の経営参画を進めることと、事業保障と将来的な退職金・年金の準備も計画することができました。

 生命保険の具体的なプランは、(1)契約者法人、被保険者社長、受取人法人の生活障害保険、(2)契約者法人、非保険者後継者、受取人法人の長期平準的保険の契約です。現在、(1)は全額損金、(2)半額損金の経理処理となっていますので、今後10年間のシミュレーションをじっくり行い、長期的・短期的に見ても円滑に安心できると喜んでいただきました。

 このように、法人化は事業承継対策の非常に有効な手段となります。また法人化した際の生命保険の活用も、事業承継対策に非常に有効な手段となります。これを機会に税制改正を理解し、法人と個人の税のバランスを考えてみてはいかがでしょうか。

<プロフィール>
玉井 省吾(たまい・しょうご)
1965年生まれ。長崎出身。88年、福岡シティ銀行入行。県内外の支店に勤務し、中小企業の法人営業を担当。事業者に対し、事業融資、経営アドバイスを行う。99年、外資系保険会社に入社し、ライフプランナーとして勤務。その後、保険を活用した経営コンサル業を開始。2018年1月より現職。(株)アンツインシュアランス 代表取締役社長

 

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