2024年03月29日( 金 )

非常用発電機の点検厳格化、ビジネスチャンスの裏に潜む罠(後)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

消防庁「誤解与える表現」

※クリックで拡大

 JLAについては、さらなる疑惑も浮上している。JLAが3月に東北地方で配布した1枚の案内文書がある。義務付けられた消防用設備が設置されていないなど、重大違反のある建物を公表する「違反対象物公表制度」を告知する内容となっているが、このなかに気になる一文がある。赤字の「これらの消火設備を作動させる非常用発電機も含まれています」という部分だ。

 消防庁が公表の対象としている「例示」では、屋内消火栓設備、スプリンクラー設備、自動火災報知設備などであり、非常用発電機は含まれていない。消防庁に確認したところ、「各自治体によって判断は異なるが、消防庁としては非常用発電機の例示はしていない。そのため誤解を与える表現になっている」と回答している。

 そもそも、なぜ違反対象物公表制度の告知に対象として含まれていない「非常用発電機」を加えたのか――。案内の下半分には、突如として非常用発電機の負荷試験の案内が続いており、違和感を覚える記載内容だ。

 この案内文を見た関係者からは、「(非常用発電機を)点検しないと、公表されるというイメージを与える、脅し商法ではないか」との声も出てきており、JLAまたはその加盟店の営業手法に疑惑が生じている。

権利金トラブル、加盟者「仕事が回ってこない」

 実際にトラブルに見舞われた、相談者Aさんのケースを紹介しよう。
 Aさんは、一連の非常用発電機の点検が厳格化されるずいぶん前から、点検業務を生業としていた。数年前、紹介を受けて知り合ったのは、負荷試験を推進するX協会。協会の説明では、「ある協会と業務提携しているので、年間相当数の点検業務が入ってくる。加盟金を払えば、仕事を斡旋する」というものだった。X協会の話を信じて、Aさんは加盟金として、数百万円を支払い、仕事を待った。

 しかし、待てど暮らせど、仕事は回ってこない。不審に思ったAさんは、X協会と某協会の関係を調べた。そこで発覚したのが、業務提携の事実がなかったことだ。Aさんはその真偽をたしかめるためにX協会に直訴。しかし、返ってきた答えは「業務提携を結んでいるといった覚えはない」というものだった。

 X協会は法人登記されているものの、その稼働実態は確認できず。加盟金の返還を求めて、法的手続きを取る予定だ。

 全国的に非常用電源の点検義務は厳格化されつつあり、今後、点検業務に関する新たなビジネスチャンスが広がると予想される。そこにはさまざまな思惑をもって、群がる怪しい人間がいるのも事実だ。有事の際に、消防設備が動くようにと、真っ当に事業を行っている企業がほとんどだが、1つでも疑念や疑惑があれば、業界全体が疑いの目で見られてしまう。広く一般的に知られている話ではないし、ニッチな業界だけに、正しい情報が少ないのも事実。少ない情報のなかで、いかに正しい情報を見極められるかが、何よりも重要になってくる。

(了)
【東城 洋平】

 
(前)

月刊誌 I・Bまちづくりに記事を書きませんか?

福岡のまちに関すること、再開発に関すること、建設・不動産業界に関することなどをテーマにオリジナル記事を執筆いただける方を募集しております。

記事の内容は、インタビュー、エリア紹介、業界の課題、統計情報の分析などです。詳しくは掲載実績をご参照ください。

企画から取材、写真撮影、執筆までできる方を募集しております。また、こちらから内容をオーダーすることもございます。報酬は1記事1万円程度から。現在、業界に身を置いている方や趣味で再開発に興味がある方なども大歓迎です。

ご応募いただける場合は、こちらまで。その際、あらかじめ執筆した記事を添付いただけるとスムーズです。不明点ございましたらお気軽にお問い合わせください。(返信にお時間いただく可能性がございます)

関連キーワード

関連記事