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2019年07月08日 15:40

華南経済圏視察を振り返って~トランプ大統領の恫喝に屈せず(2)

マカオは現世の天国、30年で様変わりし隔世の感

 昨年、マカオに入国手続きをしたのは3580万人。そのうち、約70%は中国人(下記資料参照)である。

 マカオは陸続きで中国とつながっている珠海市とタイパ島とで分けることができる。珠海市はポルトガル植民地時代の中心地帯。一方のタイパ島は中国に返還されて以降、賭博産業を育成する政策が実施され、ほぼ無人島だった2島を埋立・拡大し、観光=賭博拠点化していった。

 筆者は、その中心部に位置するベネチアンリゾートに宿泊した。このホテルはラスベガスにあるものと同じつくりである。部屋数は3,000室と福岡市中央区地行浜にあるヒルトン福岡シーホークの約3倍の規模がある。さらにその中にカジノ施設が設置してあるので、単純に部屋数が3倍というだけではない、桁違いの大きさだと想像してもらいたい。

 この1泊70,000円の部屋に中国人の家族や若者たちが押し寄せてくるのである。おそれいった。彼らが徹夜でガンガン賭博をしている光景を想像していただきたい。

 20年ぶりにマカオを再訪したAが3時間ほど滞在しての第一印象を語ってくれた。「20年前の薄寂れた町の光景を覚えている。香港から船で到着し、日帰りコースでマカオ半島の歴史的な観光コースを回っただけだった。観光コースですら道路がまともに舗装されていなかった。カジノがあるギラギラと派手な街並みはまるで記憶にない。今晩、宿泊するホテルの場所が埋立地とは驚いた。時間の経過があるが、隔世の感がある」(Aが語ったマカオ半島の観光地域は「マカオ歴史地区」として2005年ユネスコに世界遺産登録された)。

(参考資料)
訪マカオ旅客数

 近年、訪マカオ旅客数は右肩上がりに増加しており、昨年通期のインバウンド旅客数は前年から9.8%増の3580万3663人で、前年に続き過去最多を更新。国・地域別で最多だったのは中国本土旅客で、前年から13.8%増の2526万0556人。中国本土旅客が全体に占める割合は70.6%だった。

 また、昨年(2018年)10月の港珠澳大橋開通もあり、今年に入って以降も好調を維持している。今年1~5月累計の訪マカオ旅客数は前年の同じ時期から21.0%増の1718万8780人。宿泊を伴う旅客は8.7%増の795万7408人、日帰り旅客は34.0%増の923万1372人。国・地域別では中国本土旅客が22.7%増の1221万3900人で、全体の71.1%を占めた。その他の国・地域では、人数の多い順に香港が22.9%増の307万1796人、台湾が2.2%増の44万1519人、韓国が6.3%増の38万9387人、フィリピンが42.4%増の18万2633人、日本が12.5%増の14万9917人。

躍進の起点は2002年に行われたカジノ事業の国際入札

 中国ツアーでは、いつも西日本中国旅行社を使っており、オーナーの治田氏がガイドを買って出てくれる。同社は現地のガイドを雇っているが、日本語ができるガイドが減り、非常に難儀していると治田氏が現状を語っていた。

 治田氏にマカオでの旅行事業を託したのはB社長の会社。B社長は治田氏の大学の先輩で、聞くところによると北九州市立大学中国語科を卒業しているという。1968年~1975年あたりの同科の卒業生は素晴らしいチャンスを掴んでいる。中国との国交が正常化して以降、中国語ができる人材の需要が急増したからだ。

 B社長もそうした時代背景のもとで決断をくだす。マカオで観光旅行会社を設立したのである。B社長はマカオ滞在40年になる。日本に帰らないということは、それなりに資産を形成し、事業に成功したからだろう。だが、過去には事業が不振で苦しんだこともあったらしい。特に1975年~1985年の10年間は苦しく、ひたすら耐える時期だったそうだ。

 晩餐はポルトガル料理だった。食材をポルトガルから調達しているとか。ワインが本当においしい。その会食の場でマカオの歴史講話を聞いた。

 歴史講和の要旨は以下のようになる。中国政府は香港と比較してあまりマカオを重視しておらず、「別にポルトガルに統治を託していても構わない」という姿勢だった。本音はどうであれ、マカオは1999年に返還され、マカオ特別行政区となった。中国政府は「さぁ、マカオをどう発展させるか?」と真剣に検討し、「やはり伝統の賭博産業を育成させるしかないな」という結論に至ったという。

 「どうしてマカオの産業は精彩がないのか?」という現状分析では「スタンレー・ホー財閥だけに託していたから停滞してきたのだ」という結論に至った(スタンレー・ホーは元々、中国人である)。

 2002年にカジノ経営の国際入札を行い、最初は香港資本、ラスベカス資本と次々に許可を与え、後はラスベガスのドン「ラスベガス・サンズ」にも登場願った。このサンズ・グループはラスベガスユダヤ資本のトップに君臨しており、トランプ大統領と昵懇の間柄である。

 記憶に新しいトランプ大統領と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長がシンガポールで対談したホテルはサンズ・グループ所有のものだ。タダで貸したそうだが、元は充分に取れている。中国共産党政権は「資本主義の朽ち果てた賭博場経営権をアメリカ賭博資本によくも許可したものだ」と驚愕する。ここから、マカオの奇跡の復権が始まったといえる。

マカオ市民は医療費無料・お年玉あり

※クリックで拡大

 ラスベガスのカジノのドンが乗り込めば、繁栄は決まったようなものだ。中国人は賭け事が大好きである。経済的に裕福な人たちはマカオに押し寄せた。そして何よりも中国共産党幹部、国・地方政府役人の接待にカジノが利用されるようになった。

 莫大な接待資金・裏金作りが蔓延したこともあり、マカオはラスベガスを凌ぐようになった。その状況に危機を感じた中国共産党政権が規制を強めた結果、目に余る接待カジノは少なくなったようだ。

 ただ「ラスベガスを超えたマカオへようこそ!!」という誘い文句に惹かれた観光客は、うなぎ登りに増加している。福岡空港からもマカオへの直行便がある。この一例からも観光客は急増していくだろう。ただ現在のマカオのカジノ産業は、30年前のラスベガスと同じで、イメージチェンジを図る必要がある。

 いまや「IRの時代」である。ラスベガスの賭博収入は総収入の約40%しか占めていない。現在、日本では「IR」の誘致合戦が行われている。事業計画によるとカジノ施設は総面積の3%で、その他をホテル・コンベンションホール・娯楽施設が構成している。ラスベガス同様、全体に占めるカジノ収入の割合は40%になっている。一方、マカオの場合、収入の100%がカジノによるものだ。今後、マカオがこうした世界の潮流に乗れるかが課題だろう。

 ツアーの仲間に賭博の達人がいる。午前2時には70万円負けていたが、8時までに取り返し、170万円勝ったという。さすがに達人だと自慢するだけはある。

 マカオの賭博繁栄の恩恵を60万人のマカオ市民は受けている。なんと医療費はタダ、新年には一人あたり12万円のお年玉が配布される(家族4名で48万円なり)。こんな恩恵を受けられるのであれば、マカオ市民は中国政府に忠実だろう(香港とは対照的である)。だが、厳しい現実もある。マカオ特別行政府は市民権を増やすつもりはないようだ。

  今回のツアーの目的 (4)「マカオでカジノを体験して同地の将来を読み解くため 」は完了した。

 (つづく)

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