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2019年07月12日 09:52

アジアに「経済民主主義」を普及させ、共同体構築を図る!(前)

 7月7日(日)、法政大学・外濠校舎4階S406教室において、「国際アジア共同体学会 2019年春季大会」(共催:日本ビジネスインテリジェンス協会・日本華人教授会議、後援:日本中国友好協会・国際善隣協会)が開催され、学者を中心に約80名の有識者が集合した。午前の部の総会では4代目理事長に黒瀬直宏氏が選出された。午後の部の統一テーマは「中小企業によるアジア共生の道を探る―アジアの亀裂100年を振り返りつつ」であった。

中国とロシアの経済格差は中小企業発展の差だと考えています

黒瀬 直宏 新理事長

 午後の部は午前中に国際アジア共同体学会の4代目理事長に就任した黒瀬直宏氏の挨拶から始まった。専門を中小企業論(嘉悦大学 ビジネス創造学部教授)とし、特定非営利活動法人アジア中小企業協力機構(ICOSA)理事長でもある黒瀬氏は抱負を次のように語った。

 「私は中小企業の研究者であると同時にアジアに大きな関心をもっています。アジアには発展段階が異なる中小企業が多数あり、それぞれがさまざまな役割をはたしています。21世紀がアメリカの時代からアジアの時代に変わりつつあるなかで、アジア発展の大きな柱となるのが中小企業です。中小企業が次から次へと活発に開業できるかどうかで、その国の経済発展の命運が決まると言っても過言ではないと思います。

 このことは、「移行経済」(中央集権的計画経済から自由主義市場経済への移行を目指す旧社会主義国や社会主義政権を維持しながら斬新的に市場経済化を目指す国の経済)の観点から、中国とロシアを比較することによって理解が可能です。中国は、3つの柱によって市場経済を爆発的に発展させ、世界第2位の経済大国になり、購買力平価ベースのGDPではアメリカを抜きました。その1つ目は国営企業の民営化、2つ目は外資の導入です。そして、最も市場経済に寄与したのが3つ目の郷鎮企業(中国で人民公社解体後の 1985年頃から急増した農村企業の総称)の勃興です。

 一方、ロシアを見れば、もちろん領土は小さくなりましたが、現在のGDPは韓国並みです。どうして、こんなに差が開いてしまったのでしょうか。私は極東ロシアにいったことがありますが、そこでは少数の国有企業に生産が集中していました。たとえば、消費財である靴製造業は日本であれば都市の至るところにありますが、極東ロシアには大きなものが5つ、6つしかありませんでした。ロシアでも国有企業の民営化で市場経済を発展させようとしたのですが、独占によって利益を得る体質を変えることができず、中小企業が生まれる余地がありませんでした。

 私の信念でもあるのですが、中小企業が発展しないと、本当の意味での経済は発展しません。ただし、日本でも、アジア全体でも、その中小企業発展の前には、大企業との経済格差、不公正取引、従業員不足など、さまざまな問題が横たわっています。私は、国際アジア共同体学会の活動を通じて、その課題を解消し、アジアにおいて「経済民主主義」(注1)を普及させたいと考えています」

【注1】経済民主主義:経済的側面の民主化により、労働者大衆の生活を向上させること。政治制度としての民主主義が実現されたとしても経済的不平等が残存する場合には、民主主義は不完全であるといわねばならない。このため経済民主主義の主張が生じた。

社会変革を促す技術開発のほとんどは、中小企業から生まれる

内田 弘 氏

 黒瀬新理事長の挨拶の後、内田弘氏(専修大学名誉教授)のⅠ.『記念講演』「アジアの亀裂の歴史を振り返り、アジア共生社会を展望する~近現代東アジア史と三木清の技術哲学」が始まった。コメンテーターは苑志佳氏(立正大学教授)であった。

 内田氏は「アジア共同体の基盤になるものは中小企業の技術である」ことを強調した。そして、「日本の中小企業技術は現在も、中国を含めてアジアの中小企業のレベルを大きく上回る。アジアの中小企業は日本の中小企業の技術を欲している。日本で始まった5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)は製造業の現場で、アジア全体の生産管理の共通言語になっている」と語った。

 続けて、三木清(大正―昭和時代前期の京都学派の哲学者)の研究者でもある内田氏は、三木清の「技術哲学」や「東亜協同体論」(注2)に言及した。最後に、小説『下町ロケット』の神谷弁護士のモデルでもある鮫島正洋弁護士の言葉、「社会変革を促す技術開発はほとんど、大企業からでなく、中小企業から生まれる」(2019年5月14日、朝日新聞)を披露して話を結んだ。

【注2】東亜協同体論:東亜協同主義においては、1つの民族の協同は単に閉鎖的でなく同時に開かれ、そこに東亜諸民族の協同への道が考えられ、同様に東亜諸民族の協同も単に閉鎖的でなく、同時に世界に対して開かれたものとして考えられる

(つづく)
【金木 亮憲】

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