2024年04月20日( 土 )

スマホ決済「セブンペイ」が出足からつまずく 「食品ロス削減」の実験はどうなる(前)

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 コンビニの王者、セブンーイレブン・ジャパンがおかしい。満を持して7月1日に始めたスマホ決済「7Pay(セブンペイ)」が、多額の不正利用の被害が判明し、開始わずか4日目で新規停止に追い込まれた。

運営会社トップが2段階認証を理解していなかった

 運営会社セブン・ペイの小林強社長は7月4日、記者会見を開いて謝罪した。ネット上で話題になったのが、記者からの質問に対し、「2段階認証?」と戸惑う様子。「責任者が2段階認証を理解していない」と驚きの声が挙がったのも無理はない。

 経済産業省はセブンペイが、ほかのスマホ決済事業者が採り入れている「2段階認証」と呼ばれる安全対策を使っていなかったことを問題視した。

 セブン側は4日の会見では、2段階認証を採用しないことは問題ないとしていたが、一転して5日夜、2段階認証の導入などの安全対策の強化を公表した。

 専門家のアドバイスを受け、システムはIT会社に委託するのが通常だが、セキュリティ費用をケチったのだろうか。2段階認証を採り入れなかった理由がよく分からない。

 持株会社セブン&アイ・ホールディングス(HD)とコンビニのセブン-イレブン・ジャパン(以下セブンと略)の経営陣には、セブンペイのセキュリティよりも、もっと大事なことが頭のなかを占めていたことは間違いないだろう。

セブンペイで10%値引き実験をやる予定だった

 セブンは、セブンペイの開始と同時に「食品ロス」削減の実験を始めることになっていた。実験は7月から約1カ月間、全国20の直営店で、弁当やおにぎりなど消費期限が1日間の商品を対象に実施する。

 消費期限まで5時間程度に迫った商品を買えば、自社で展開する電子マネー「nanaco(ナナコ)」や、7月に開始するスマホで決済できる「セブンペイ」に、商品価格の7%または10%分のポイントがたまる。還元費用は本部側が負担する。

 セブンは今秋から全国約2万1000店舗で値引き販売を本格実施する。7月の実験結果を基に最終的な値引き率を決める考えだ。

 これまでセブンは値下げに消極的だった。今秋から本格実施する値引き販売は、創業以来の大転換である。ところが、スマホ決済セブンペイは不正アクセスで登録停止に追い込まれ、実験ができない。セブン本部と加盟店には大問題なのだ。

セブンの巨額収益源はロスチャージにある

 セブンはどうして巨額の収益を上げることができるのか。そこにはマジックがある。セブン本部は発足して以来、加盟店から30件以上の裁判が提起された。裁判の過程で、セブンの収益構造が明らかになった。

 その象徴がロスチャージである。賞味期限切れなどによる廃棄ロスに、チャージ(料金)を課すことから生まれた用語だ。これがセブンの富の源泉であり、触れることがタブー視されてきた暗部である。

 コンビニ本部が長らくマル秘としてきたロイヤルティー(経営指導料)の計算方式に、ロスチャージが上手に隠されていた。セブンは弁当やパン、おにぎりといった賞味期限の決まった食品を置いている。すべてを売り切れるわけではない。毎日大量に廃棄品が出る。

 膨大な商品が捨てられても、セブン本部は何の痛痒を感じない。賞味期限切れで廃棄された商品についても、加盟店がロイヤルティーを支払う取り決め(契約)になっている。これがロスチャージの実態である。商品を廃棄すると、本部の利益になる。世の中の常識とは真逆だ。

(つづく)
【森村 和男】

(後)

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