2024年04月24日( 水 )

『脊振の自然に魅せられて』「雨上がりの山歩き ブナ林の幻想的な光景を求めて」

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霧のベールで覆われたブナその1

 梅雨時の山歩きは幻想的な光景に出会うことができます。脊振山系には多くのブナやリョウブがあります。雨上がりで霧に覆われ、それらが幻想的に佇んでいるのです。静寂の中、自然界の生命を感じる時間でもあります。

 霧のシルエットを撮影した写真を友人に贈ると、「日本画家の東山魁夷の世界だね」と言ってくれました(私の写真集「脊振讃歌」に見開きで掲載しています)。

 今年7月14日(日)、間もなく雨が上がりそうだったので、家内に「雨上がりの山は幻想的な光景がみられる」と伝えると「行ってくれば」と言われました。

 体がだるく、山行きを躊躇していましたが、家内の一言が背中を押してくれました。自宅を出たのは、いつもより遅い午前9時、国道263号・旧道の三瀬峠を車で越え、佐賀県の金山脊振林道の登山口に着いたのが午前10時でした。

 林道に入ると雨はあがっていました。小爪峠の登山口に車を停めて、雨対策のスパッツ、レインコート、ザックカバーを装備し、いざ出発。

 ガス(霧)※に覆われた山は静かで、落ち葉を踏みしめる音がよく聞こえます。昨年、取り付けた小型道標が緩んでないかをたしかめながら、小爪峠へと向かって登山道を進んでいきます。

 その時のことです。「ドドッ!」という音が・・・。中型のイノシシが一匹、私の10m先を走っていたのです。体は丸く、尻尾は垂れていました。多分、食事中だったのでしょう。私の足音に驚いて逃げたものと思われます。雨上がりは地表にミミズや昆虫が出てくるので、土や落ち葉をイノシシが掘った後を登山道で良く見かけます。

 20分ほどで小爪峠に着きました。ススキで覆われた峠に10年前に立てた道標が浮かび上がっていました。

 ここから金山(967m)の縦走路へとさらに歩を進めます。雨で濡れた登山道沿いに樹木がガスのなかに浮かびあがっています。6月に咲いたドウダンツツジやヤマボウシが咲き終わり、種となる姿を見せていました。

 小爪峠―金山の中間地点のビューポイントで一休み。展望台となる岩の上に腰かけ、ザックから非常食の練乳とペットボトルに入れた柿の種を口に入れます。あたりはガスに覆われ真っ白、何も見えません。普段なら脊振山が見渡せる場所です。

目の前には10年前に立てた道標がこちらを向いています。今年の春、この道標を磨いたので、雨に濡れた木製の道標は光っていました。

 ここから金山方面へ進んだ時、「ド、ド、ド!」と、登山道左の笹藪から右の笹藪へと3頭のイノシシが猛スピードで駆け抜けていきました。3頭が隙間なく連なり、一直線に走り抜けたのです。びっくりするというよりも「すごい!」という感じでした。猛スピードで駆け抜けるイノシシを目の前で見たのは初めてのことでした。

ブナその2

 少し雨が降ってきました。大きなブナをふと見上げると枝から幹へと雨が伝わり、流れていました。ひさしぶりに見る光景でした。

 早速、カメラをビデオモードにして撮影します。しかし、濡れたモニター画面がよく見えずピンボケになってしまいます。そこで、カメラモードに切り替えて撮影を続けます。縦、横とアングルを変え、感度が足りないので、高感度に切り替え、さらにシャッターを切ります。「手ぶれするなよ」と祈りますが、良い写真は撮れませんでした。

 その後、すばらしいブナ林がある場所に到着。ガスの中、登り斜面にブナの木が浮かび上がっています。感動を覚え、アングルと露出を少しオーバー※にして、さらにシャッターを切りました。ブナの樹々は美しく、枯れ木がシルエットとなって浮かび上がっています。私は曇りかけのファインダーからレンズのなかへと、この光景を呼び込みました。

 撮影は終わりました。ここから10分の金山の山頂へは行かず、踵を返し小爪峠へと引き返すことにします。時計を見て時間を確認、午後1時30分には登山口に戻れるはずです。

道標をきれいに

 道中、気になっていた道標「NO.13」を磨きます。雨で濡れているので、道標の汚れはすぐに取れ、きれいになりました。さらにペットボトルの水をかけて仕上げます。まだまだ道標は丈夫だなと確認し、登山口へと戻ります。飲み水をすべて道標にかけてしまったので、喉に渇きを覚え、雨で増えた沢の水で喉を潤します。到着時間は予定通りの午後1時30分。汚れた登山靴、スパッツ、ザックのレインカバーを沢の水で洗いました。雨上がりの登山は思い描いた通りの光景でした。

※山では霧のことを「ガス」と呼びます。
※霧のなかの撮影は露出を少しオーバーにします(+0.3か0.7にすると幻想的に撮影できます)

2019年7月18日
脊振の自然を愛する会
代表 池田 友行

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