2024年04月18日( 木 )

【夏期集中連載】金融機関を取り巻く現状(前)

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■融資先がない~疲弊続く地方経済界

 日銀のマイナス金利政策が3年以上続く中、金融機関は依然として厳しい経営環境にある。しかも、少子高齢化が進展する日本では、国内産業全体の大きな発展は今後も望むべくもない。企業が衰退すれば、そこに金を貸して利ザヤで儲ける金融機関も一蓮托生だ。メガバンクなどは、すでに国内に見切りをつけ、ビジネスの主力を海外に移しつつある。

 だが、地域に足場を置き、地域とともに発展してきた地域銀行(地方銀行、第二地方銀行)や信用金庫、信用組合などの地域金融機関は、そうもいかない。少子高齢化の加速を背景にマイナス金利のあおりを受け続けており、今や青息吐息の様相。地域の衰退と運命をともにしようとしている。

 6月6日、金融庁は地域銀行の「2019年3月期決算の概要」(単体ベース、以下同)を公表した。それによると実質業務純益は、債券等関係損益の増加やコストカットなどにより、前年同期比0.4%の増益となったが、当期純利益は、与信関係費用の増加などにより、前年同期比22.9%の減益。貸出金は前年同期比で87兆円の増で、今後も増加が続くとみられている。

 これは無理からぬことで、利ザヤが薄い以上、少しでも貸し出し規模を拡大して、利益に走らなければならない。これにともない、不良債権額も不良債権比率も増加傾向。バブル崩壊後に訪れた悪夢の影がまたぞろチラつき始めている。ジャブジャブと融資が拡大しているため総自己資本比率も低下。国際統一基準行(8%)、国内統一基準行(4%)ともに低下傾向だ。

 ディスカウントショップ並の薄利多売を展開しても得られる利益は多くはなく、与信関係費用の増加も招く。しかし、それでも貸し先があるところはまだマシだ。リーマン・ショック以降、疲弊が続く地方中小企業には、そもそも資金需要自体が少なく、「融資先がない」のである。

■金融機関の「手数料ビジネス」

 思わぬ「伏兵」もいる。せっかく融資先を見つけてきても、日本政策金融公庫、商工中金などの政府系金融機関が割って入ってくる。政府系金融は低利融資が可能なので、借り手としては当然「利子の安い方」に流れる。民間もその利率に引き下げねばならなくなる。本来、地域産業の保護のために企業を倒産から救うのが政府系金融の使命だが、さして財務状態も悪くない会社の案件に入ってくる事例も。「民業圧迫」と批判されても仕方がない。

 それやこれやで、今や、地域金融機関の「稼ぐ力」は風前の灯だ。本業で稼げないのなら手数料で稼ぐしかない。近年、金融機関が注力しているのが手数料ビジネスだ。M&A(企業合併)や事業承継、販路拡大、人材確保など企業が抱えるあらゆる課題でコンサルティングを展開し、その手数料で稼ぐのだ。また、「企業が金を借りないなら個人に」と個人向け不動産ローンなどに活路を見出すところもある。さまざまな収益モデルを模索し、涙ぐましい努力をしている。

 実際、これらで成功しているところも多いのだが、過ぎたるはおよばざるが如し。行き過ぎて思わぬ陥穽に落ちた事例も出てきている。その光と影については次回。

(つづく)
【渋谷 良明】

(中)

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