2024年04月20日( 土 )

【虎党記者のちょっとひとい記】~福岡県朝倉市・築90年の古民家とモダンな空間「gallery cobaco」

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 大分自動車道甘木ICを下りて国道386号線を朝倉方面へ走ること約10分。朝倉街道沿いに築90年の古民家があるのをご存じだろうか。現在「gallery cobaco」として、母屋の座敷二間にはカフェ・店舗を併設しており、屋内から季節の移ろいを楽しむことができる。

新緑溢れる庭、モダンなギャラリー、築90年の母屋が来訪者を優しく出迎える

 門より玄関への路地と庭をⅬ型に囲むように母屋が建ち、庭の離れにはギャラリーが設けられている。石門をくぐるとまるで実家を思わせるような佇まい。思わず「ただいま」と言いそうになるくらい、懐かしい気持ちにさせられた。初夏ということもあり、庭全体は緑で覆われ、思わず深呼吸。呼吸を通して新緑の香りが体内に取り込まれ、気分が清々しくなっていくのがわかった。

 ギャラリーはモダンな建物ながら、周りの風景とも調和し、何ら違和感はない。ここではコンテンポラリーアートを始め、さまざまなジャンルの展示を季節のうつろいとともに楽しめるとともに、誰でも身近にアートに触れられるのが魅力だという。

 奥に立つ母屋は築90年。近づくとその重厚さを感じるとともに、玄関は木目の温かな色調が来訪者を優しく出迎えてくれるのがわかった。

 しばらく進むと、向かって右側には各種雑貨を取りそろえたショップ、左側にはカフェスペースが設けられていた。このところ取材と原稿が立て続き、県内各地を行ったり来たりの日々を過ごしてきた記者。思わず「一息入れよう」という気分になり、アイスコーヒーを注文した。

 注文を待っている間、辺りを見渡すと、まず目にとどまったのが縁側。窓から見える美しい表庭とgalleryの調和がただただ素晴らしく、四季折々の姿を想像すると期待感が膨らむ。

 続いて右側にある店舗スペースへ。ここでは、食器や生活雑貨、作家さんとcobacoのコラボ商品を販売している。

 奥に進むとここからも庭の景色が。「枯山水」を思わせる庭の風情―先ほどの庭の景色が「動」とするなら、こちらはさしずめ「静」の雰囲気を醸し出していた。

 しばらくすると卓上にはアイスコーヒーが運ばれてきた。程よく冷えたアイスコーヒーは芳醇な香りを損なうことなく、香りと味の両方が楽しめる。コーヒーを飲みながら庭園の風景を眺め、しばし余韻に浸る・・・。

この家に流れてきた時間を大事に

 建物の設計コンセプトとして掲げられていたのは、「とくに新しいデザインを施すのではなく、可能な限り建築時の状態に戻す」ということ。そして「この家に関わられた人たちに流れてきた時間を大事にしたい」という想い。母屋の至るところに置かれている調度品からは、持ち主の愛情が伝わってくる。まるで持ち主の帰りを待っているかのように…。

 お盆休みは実家に帰省する方が多いだろう。朝倉市周辺およびその近郊の方は、帰省の折にぜひ立ち寄ってほしい。小さい頃過ごした田舎の家、懐かしの実家の香りが、きっと感じられるはずだ。

【長谷川 大輔】

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