• このエントリーをはてなブックマークに追加
2019年08月15日 07:00

年に一度のご先祖さまの里帰り~お盆にまつわるエトセトラ

 「盆と正月がいっぺんに来たようだ」とは、嬉しいことなどが重なったときに使われる言葉だが、正月はともかくとして、お盆は何が嬉しいのだろうか?――と、子どものころに思ったことがある。

 盆も正月も、普段なかなか会えない祖父母や親戚などが一堂に会するところは似たようなものだが、お年玉がもらえたり、初詣に行ったり、おせちがあったりと、華やかなイメージが強い正月に比べると、仏間に盆提灯などを飾り付け、お坊さんを家に招いて仏壇の前で皆が手を合わせるようなお盆は、幼心にどうしても暗いイメージを抱いていたものだった。正月とは違い、直接的な人の“死”を感じさせる行事だということも大きかったのだろう。

 やがて時が経ち、筆者もそれなりに歳を重ねた。もう随分前に祖父母らを見送ったこともあって、今では盆に対する暗いイメージなどはすでになく、どちらかというと厳かな気持ちで迎えるようになっている。だが今年も盆が近づいてくるにつれ、幼いころに感じた気持ちを何となくふと思い出した。せっかくなのでこの機会に、盆について改めて考えてみたいと思う。

 夏季に行われる祖先の霊を迎えて祀る一連の仏教行事――というのが、そもそも盆についての一般的な認識ではないだろうか。人が亡くなり、通夜・葬式および四十九日法要を終えた後に最初に迎える盆を「初盆」と呼ぶのも、よく知られている。

 盆とは、仏教行事である「盂蘭盆会(うらぼんえ)」の略称であるとされるが、実は仏教伝来とともに日本にこの盆の風習が伝わったわけではない。祖先の霊を迎えて祀る風習自体は仏教伝来の以前からあったとされ、「先祖祭り」や「精霊祭り」「みたま祭り」などと呼ばれていたそうだが、後に仏教行事の盂蘭盆会と習合。そして、今のようなお盆のかたちになったといわれている。

 お盆の期間については、全国的に多いのは8月15日前後の3~4日間だが、7月15日前後に行うところや、8月1日前後に行うところなどもあり、全国一律で定められているものではない。一連の行事は、盆初日の「迎え火」から始まり、最終日の「送り火」や「灯籠流し」で終わることが多く、その途中の期日でお墓参りや、お坊さんを招いての法要を執り行うというのが一般的だろう。

 「盆踊り」というのも、本来はその名の示す通り、踊りによって祖先の霊を供養するための儀式とされており、盆期間中に行われることが多い。なお、盆の行事の内容や風習については、各地域や各宗派、さらには各家庭によってもさまざまな様式の違いがあり、こちらも一律のものはない。なかには、花火や爆竹を鳴らすといった少々過激な風習のところもあるようだ。

 前述の「灯籠流し」も、長崎を中心とした九州の一部地域では、歌手・さだまさしの曲名として知られる「精霊流し」と呼ばれたりもする。ちなみに、前述の送り火として全国的に最も有名なのは、おそらく京都の「大文字焼き」であり、盆踊りとして最も有名なのは、徳島の「阿波踊り」だろう。

 期間中、主に仏壇の前では盆提灯を飾って絶やさず灯し続けるほか、故人や祖先の霊魂があの世とこの世を行き来するための乗り物として、キュウリやナスでつくられた「精霊馬(しょうりょううま)」などを飾るところも多い。盆の飾りつけの内容も、地域や宗派、各家庭によって異なり、こちらもさまざまな様式があるようだ。

 なお基本的には、お盆の際に帰ってくるのは故人や祖先の霊魂だが、そのときにいわゆる“無縁仏”や供養されない霊魂なども訪れるとされており、そうした“方々”のために仏壇の横や戸外に「餓鬼棚(がきだな)」を設け、そこにもお供え物をするような風習もある。余談だが、筆者の祖母や母もお盆には餓鬼棚を設けてお供え物をしており、祖先以外の霊魂も来ているという話を聞いて、幼いころは何となく怖さを覚えたものだった。

● ● ●

 ここまで、取り留めもなくつらつらと書き連ねてみたが、こうして改めて考えてみると、お盆というのは故人や祖先を敬いしのぶ機会が得られるという、実に日本らしくて、良い風習なのではないだろうか。

 もちろん本来であれば、毎日は無理でも折に触れて仏壇に手を合わせ、故人や祖先に対する想いを常日頃から伝えておくのに越したことはない。だが、核家族化が進み、さらには単身世帯も増えている現在、仏間や仏壇がない家庭も多く、日々仏壇に手を合わせるという行為は難しくなってきている。だが、お盆であれば、実家への帰省とともに、故人や祖先へのお参りをする、またとない動機付けになるに違いない。

 今ではお盆は、正月やゴールデンウイークと並ぶ、長期休暇の代名詞的な位置づけになっており、その期間を利用して、旅行やレジャーを楽しむ方も多いだろう。そうした過ごし方ももちろん素敵なのだが、ときには故人や祖先をしのび、ゆっくりと過ごしてみるのもいいのではないだろうか。

【坂田 憲治】

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

     

トップニュース

2020年06月02日 16:47

九州電力 海外での地熱発電事業を強化へ~米国の地熱技術サービス企業を買収NEW!

 (株)キューデン・インターナショナルと西日本技術開発(株)が、地熱技術サービスを提供する米国サーモケム社の買収に係る株式購入契約を締結(5月29日調印)した...

2020年06月02日 16:16

岩田屋、福岡三越~顧客へのメッセージNEW!

 先日、岩田屋と福岡三越を運営する(株)岩田屋三越より弊社代表の児玉直宛に手紙が送られてきた。手紙の内容は...

2020年06月02日 16:15

第2次補正予算の新給付制度「家賃支援給付金」の概要!NEW!

 新型コロナウイルス感染症を契機とした5⽉の緊急事態宣⾔の延⻑などにより、売上の急減に直⾯する事業者の事業継続を下⽀えするため、地代・家賃の負担を軽減することを⽬的と...

2020年06月02日 16:00

2020年度の第2次補正予算案を閣議決定!中小事業者向けの主な支援策NEW!

 2次補正では、医療従事者への最大20万円の慰労金のほか、都道府県向けの「新型コロナ緊急包括支援交付金」、中小事業者の支援や財務基盤の強化策などを盛り込んだ...

2020年06月02日 15:38

建築家・有馬裕之氏のニューヨーク現地レポートNEW!

 ミネソタ州ミネアポリスで黒人のジョージ・フロイド氏が白人警察官から暴行を受け死亡した問題が波紋を広げています。コロナ禍の「限界ストレス」のなか、ニューヨークは...

2020年06月02日 15:30

九州地銀の20年3月期決算を検証する(3)NEW!

  【表1】を見ていただきたい。九州地銀(18行)の20年3月期の預貸率順位表である。 ~この表から見えるもの~ <1位~9位> ◆1位はふくおかFG...

2020年06月02日 15:00

アフターコロナ時代、「オンライン」=「品定め」の場にNEW!

 当社は動画コンテンツの制作やテレビ番組の制作を行っているが、業務にはハイスペックなパソコンが欠かせない。高画質の映像をテンポよく編集するには、処理能力の低いパソコン...

2020年06月02日 14:25

(一財)神奈川県経営者福祉振興財団(神奈川)/共済保険事業

 同社は6月1日、東京地裁に民事再生法の適用を申請し、同日、同地裁から監督命令を受けた...

2020年06月02日 13:03

四国新幹線「ないのがおかしい」(前)

 基本計画路線がある地域では、程度の差こそあれ、地元自治体、経済界などが中心となり、それぞれの地域ごとに国への要望活動などを行っている。そのなかの1つに、四国新幹線が...

2020年06月02日 13:00

AIやビッグデータで激変するまちづくり~内閣府スーパーシティ構想の行方(前)

 AI(人工知能)やビッグデータの活用で、まちが大きく変わるといわれている、内閣府の「スーパーシティ構想」を始め、自動運転や省エネ、スマートホームなどの「スマートシテ...

pagetop