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2019年08月14日 07:30

百貨店としての本流を守り、進めていく(前)

(株)井筒屋 代表取締役社長 影山 英雄 氏

 北九州市小倉の老舗百貨店、(株)井筒屋。2016〜18年度までの井筒屋グループ中期3カ年計画を実行し、今期から新たな中期3カ年計画を進めていく。昨今、国内の百貨店業界全体が苦戦して競争が激化するなか、今後どのように事業構築をしていくのか、同社代表取締役社長・影山英雄氏にインタビューを行った。

(聞き手:データ・マックス顧問・浜崎 裕治)

井筒屋本館外観

営業効率を高める

 ――前期までの中期3カ年計画を実行されての率直な所感をお聞かせください。

 影山英雄社長(以下、影山社長) 当初掲げておりました計画の最終年度(2019年2月期)売上高830億円、営業利益20億円、営業利益率2.4%、経常利益13億円、経常利益率1.6%と対比し、売上高789億5,500万円、営業利益13億6,800万円、営業利益率1.7%、経常利益7億9,500万円、経常利益率1.0%の結果となりました。(連結)18年2月期実績および19年2月期の計画値と比較して、それぞれ数値はすべて上昇していたものの、前中期3カ年計画の目標値にはおよびませんでした。衣料品(婦人・紳士)販売の低迷、主要なお客さまの高齢化と次世代のお客さまへの対応の強化が途上であること。そしてインターネットなどお客さまの購入されるチャネルが増加し、競合が激化していることは明らかです。当社としては想定していたことでありながらも、我々百貨店ができるサービスを実直に行ってきました。

※クリックで拡大

 ――前期の18年12月に(株)山口井筒屋宇部店と、19年2月に(株)コレット井筒屋を整理した影響はいかがでしょうか。

 影山社長 マイナス要因であることは明らかです。苦渋の決断でしたが、不採算であったことで営業を終了しました。他方、現在お中元の季節でありますが、このカテゴリーに関して影響は軽微であり(コレットはお中元・お歳暮など展開していなかった)、前期の同時期比ではプラスとなっております。コレット閉店により、売り場面積が8万m2から5万m2に縮小されたため、営業効率が高まることが期待されます。また、黒崎店を1〜3階に縮小・リモデルしての再出発を図ります(8月1日から)。売上高は減少しながらも営業面の生産性・効率性は高まりますので、内容は改善されます。

 ――御社も含め、国内流通業界全体の市況が停滞していますね。

 影山社長 そうです。当社において一例をお話ししますと、17年前、黒崎にそごうさんの後継店舗として、近くにあった当社黒崎店が移転しました。その後、当社黒崎店の商圏における商業施設の出店が活発となり、17年前に比べて商業床が24万m2増となりました。さらに広大なスペースワールドの跡地にイオンさんが出店される計画を発表されております。率直に申しますと、オーバーストア状態であることは否めません。

サテライトの充実

 ――影山社長のお話からわかるように、百貨店を始めとする地方の商業店舗は、さらに厳しさが増してきます。

 影山社長 40年前に宇部市に出店いたしました。1階に当時最先端の食品トレンドの展開を実施するなどのマーチャンダイジング(MD)が功を奏して、おかげさまで好評を博しました。その宇部で好評であったMDによって、山口での市場に支持を得られるとの経営判断で、11年前に、老舗であった“ちまきや”さん(※)の事業を引き継いで、山口市に出店いたしました。山口でも井筒屋のブランドは認知され、お客さまから支持を得られていることを実感しました。しかし、昨今は周辺の商業施設出店により、市況は厳しさを増しております。

※2007年11月まで山口市で百貨店事業を展開していた、153年の歴史を有した(株)ちまきや。現在は、井筒屋山口店店舗の土地・建物を管理する、ちまきやホールディングス(株)となっている。

 ――他方、福岡・山口県周辺のサテライト店舗については好調とうかがっております。

 影山社長 ありがとうございます。おかげさまで、好調です。ゆめタウンさん((株)イズミ)、イオンさん、サンリブさんの店舗などで、サテライトを展開しております。先方からも当社のブランド力により集客に貢献しているとの評価をいただいております。スーパーマーケットのMDとは異なるお客さまを想定した展開を実施しており、双方のMDが存在することで、お客さまの多岐に渡る用途にお応えできるなど、相乗効果を発揮しております。

 ――スーパーマーケットの店舗にサテライトとして出店されるのは、固定観念に縛られない新たな事業モデルですね。

 影山社長 実店舗において、1人でも多くのお客さまに当社のサービスを知っていただける機会を創出できることに感謝しております。

インフラとしての百貨店

 ――国内人口減、量販店やコンビニエンスストアの台頭、さらにインターネット販売での購入など、流通チャネルの多様化により、競合が激化しております。その現況についてのご見解をお聞かせください。

 影山社長 それらに加えまして、ターミナル駅のビル開発が活発化しており、こちらも脅威です。当社の拠点である小倉を含め、博多、そして熊本や宮崎など九州各地で駅ビルの開発が進んでおります。それに関連してテナントリーシングも激化しております。そして人口減についてですが、北九州市は5年連続で人口が減少しております。これは、大きなマイナス要因です。それでも我々は、84年間、百貨店事業一筋を貫いて今があります。確かに流通チャネルの多様化はこれからも続くでしょう。

 各チャネルがそれぞれの役割をはたしてお客さまに貢献し、市場を活性化していくことは望ましいことです。そのようななかでも、百貨店本道としていかに「お客さまに喜んでいただき、豊かな生活の一助となるよう真摯に取り組んでいくか」ということが大切です。

 「政令指定都市に百貨店はなくてはならない。井筒屋頼むぞ!」と多数の激励を受けます。関連する不動産業で収益を上げるなど、本業以外での事業展開を行っている同業他社もありますが、当社は百貨店業でお客さまにお役に立つことが一番である姿勢は不変です。水道、電気、ガスというインフラと同様のインフラであるのが百貨店であると考えております。「百貨店は街の誇り」とおっしゃるお客さまに支えていただいているのです。身に余る光栄で、全社をあげて最善を尽くしていくことが、当社の使命です。

(つづく)
【文・構成:河原 清明】

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