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2019年08月23日 07:00

どうする?どうなる?社会保障(4)

医療費削減で地域や介護の負担が大きくなる

 以前は医療保険だった維持期・回復期のリハビリテーションや訪問看護、介護老人保健施設などが介護保険に移ってきている。病院や診療所の病床数(患者のベッド数)を減らし、早期退院により介護施設で療養する仕組みをつくることで、医療よりも安価な介護でサービスを行って医療費を削減するのが目的だ。さらにサービス提供者側の立場が強くないため、介護報酬は削減されてきている。

 また、重篤な患者を治療する高度急性期医療の病床を減らし、2025年をメドに自宅や介護施設などで主な医療や介護などのサービスを受ける地域包括ケアシステムに役割を分担することが進められている。

 2018年の診療報酬改定でも、高度急性期医療を担う7対1病床の算定要件を厳しくして、診療報酬により病床を減らす政策誘導をしている。だが、地域医療構想で、高度急性期医療などの医療費のかかる病床を機械的に減らすと、地域によっては医療システムが機能しなくなり、必要な人が治療を受けられなくなる可能性がある。たとえば、病床数が余っている病院があるといわれているが、医師や看護師数の地域格差は大きく、医療者が足りない地域では病床があっても入院を受け入れられないこともあるからだ。

 医療施設を削減するにしても、制度をそのまま当てはめるのではなく、行政が現場を把握して地域事情を汲むことが必要だ。また、地域医療構想で使われている、広域市町村単位の2次医療圏は、つくられた当時から時間が経っており、人口流出などで市町村の医療体制が変わっている。地域の医療ニーズに合わない原因になるため、地域の今の医療体制をふまえて2次医療圏を見直して地域医療構想や医療計画をつくることが必要だ。

 また、これまで医療で行ってきたことを地域包括ケアシステムに移そうとしているが、核家族化で家族がみるのは難しい世の中になっているため、介護現場の負担が増大することが見逃されている。家族がいても「老老介護」のように、1人で重い介護負担を背負わされる。

医療保険が直面している課題

 年金生活者などが加入する国民健康保険は国税・地方税の負担が50%以上で、協会けんぽも20%弱の国費補助を受けているが、医療保険への税金投入を減らして健康保険料で多くを担う方針を政府は強化する姿勢だ。2018年改正で国民健康保険は都道府県が管理する仕組みに変わり、医療費が高い都道府県は保険料も引き上げられている。医療保険は病気になったときに支える制度だが、年金で暮らしている高齢世帯にとって、本当に困った時には窓口負担が重い。生活保障が必要な世帯には、窓口負担をなくすことも必要ではないか。

 後期高齢者医療制度も高齢者の支払う保険料と高齢者医療費を直結させる仕組みをつくったが、保険料負担者が年金生活者であり病気のリスクも高いため、所得が少ない高齢者ほど保険料の負担が大きい制度になっていることが問題だ。さらに、後期高齢者医療制度は医療費が多くなるとともに、制度を支える健康保険からの支援金は年々増えている。総報酬割が導入されて支援金の負担額が少し見直されたが、健康保険組合などの財政を圧迫している。

 社会保障は、誰もが安心して暮らせる社会をつくるための制度だ。社会保障費を減らすことが必要だといわれているが、日本の高齢化率から考えると決して多いとはいえない。社会として必要な費用は削るべきではないだろう。

(了)

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