2024年04月20日( 土 )

架空巨額ファンド 再び表面化した詐欺師・徳川高人(後)

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 企業主導型保育事業の助成金をめぐる大型詐欺事件が発生した。その中心にいたのが、川崎大資だったが、九州随一の詐欺師といえば、過去から現在に至るまで「徳川高人」の右に出る者はいない。県知事選出馬、大手企業相手に巨額訴訟を起こすなど名の知れ渡ったこの人物。近年は表に顔を出さずにいたが、過去にもち掛けた2億円の投資をめぐり現在福岡地裁で係争中だ。取材過程で判明したのは、「ありえない話を信じ込ませる」詐欺の常套手段だった。

(株)中小企業倒産防止開発機構が入るビル
(株)中小企業倒産防止開発機構が入るビル

 当時、投資への勧誘を受けたことがある人物(B)によると、まずは「徳川」という人物を信用させ、次にファンドの存在を信用させるという。ファンドの信用度を高めるため、利用したのが「インドネシアの財閥」というフレーズと「広告塔」である。

 有名人を広告塔に利用した「円天詐欺」を覚えているだろうか。図式は同じだ。円天詐欺は元本保証の上、利子がつくことを謳い、多額の出資金を集めた。会員の募集や会社の信用を高めるため、有名演歌歌手やタレントを広告塔として招き、出資者に対しホテルや国技館などで無料コンサートを行っていた一連の事件だ。

 徳川がファンドの広告塔として使ったのが、かつての有名音楽家だった。その名は朝比奈圭(本名:広沢憲行)。かつて歌謡界で作詞家として活躍していた人物だった。M社は朝比奈をバックにファンドを結成したと説明し、朝比奈を紹介されたという。

 Bは怪しいとは思いつつ、虚構を見抜く決定的な判断材料がなかった。しかし、事態は急変する。朝比奈が2011年、ある女優が理事長を務める児童施設「ねむの木学園」から多額の現金を引き出し、流用した詐欺容疑で逮捕された。全国ニュースにもなったこの「ねむの木学園詐欺」以降、M社と連絡が取れないという。

 結局、A社の投資も徳川の説明の通りにはならなかった。約束していた返還期日になっても、金は返ってこない。この10年、何度も電話や面会を重ねて、返還を求めてきたようだが、ファンドに投じた2億円のうち、いまだ1円も返還されていない。

 「証券会社を紹介したまでで、自分はお金を受け取ったわけではない」というのが徳川の言い分だろう。Bがファンドの存在を確認したところ、金融庁への届け出はしているが、実態はどうしても確認できなかったという。「全国に同じような被害者がたくさんいるはずだ。それが表面化していないだけ。数百万円単位ならごろごろいるのではないか」(B)。

 今回、新たに表面化した徳川の手口だが、10年も経てば世間から忘れられてしまうものなのか。新たな被害者がかたちを変えて判明しているが、この人物の名前は決して忘れてはならない。あまりにも名前が売れてしまったため、「徳川高人」では身動きが取りづらいようで、名前を変えて行動していることもあるようだが、とにかくこの名前を聞いたら、あらゆるビジネスからすぐに手を引くことを強くオススメしたい。

機構から送られたダイレクトメール
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ダイレクトメールの内容
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(了)
【東城 洋平】

(中)

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