2024年03月29日( 金 )

現役社労士3名による、経営者と従業員のパワハラ対策(前)

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 パワハラは今や従業員、会社側双方の問題にとどまらず、社会問題として大きく提起されている。今回、「経営者と従業員のパワハラ対策」と題し、実際にパワハラに遭遇した場合、経営者と従業員はどのような対策を講じればよいのかを、現役の社労士3名に話をうかがった。

大久保社会保険労務士事務所
特定社会労務士 大久保裕司氏

会社は安全配慮義務を負っている

会社側は従業員に対する安全配慮義務がある

 会社側(使用者)は雇用契約を交わす際、従業員(労働者)に対する安全配慮義務を負っています。

 安全配慮義務とは簡単に説明すると、会社が従業員を雇う際、賃金を払うだけでなく、職場環境や人間関係について相談を受けた場合も適切な対応を講じなければならない、というものです。

 これに基づくと、会社側は従業員からパワハラに関する相談を受けた場合、「すぐに対応する」「相手側の話をきちんと聞く」ことが求められます。しかし、「会社に相談したが、話を聞いてくれなかった」と従業員から主張された場合、会社側は安全配慮義務を怠ったとみなされる可能性があります。

 使用者側は安全配慮義務があることを認識し、会社の大小規模問わず、社内に何かしらの相談窓口を設けておくことが必要です。そして従業員のどんな相談に対しても、まずはきちんと相手の話を聞くことが求められます。

 注意しないといけないのは、「日頃から素行が悪い」「被害者意識が強い」「メンタルが弱い」など、従業員側に問題がある(とされる)ケースの対応です。仮に従業員側に問題があったとしても、会社側として、「彼(彼女)はそういう人だから」「(そうなってしまったのは)本人の問題だから」あるいは「自己責任だから」では済まされません。誰に対してもどんな内容に対しても公平に相談を受け、きちんと対応することが求められます。

 従業員側は、誰にも相談もできず心身ともに病んでしまい休まざるを得なくなると、かえって仕事に復帰することが難しくなってしまいますので、何かあったら内に溜め込まず、身近に相談できる人をつくっておくことが第一です。

 まずは同僚、そして上司、ひいては人事や総務など、身近に相談しやすいと思う人や窓口の担当者に相談することです。社内で相談相手を確保するのが難しければ、外部の相談機関などに適切な助言やアドバイスを求めるのが良いでしょう。そして、その際話した内容などは、なるべく記録として付けておくことをお勧めします。

 しかし、労使双方が仕組みや対策を講じたとしても、そこに携わる担当者や、管理職・役職者クラスのパワハラに対する認識が低いままでは、社内からパワハラはなくなりません。根本的には、やはり社内風土が変わらなければならないと思います。

 そのための前提として必要なのは、経営者の「パワハラを絶対になくすんだ」という強い意志と、それに基づき適切な啓蒙活動と教育を受けることだと思いますが、経営者および管理職・役職者自身がパワハラに該当する行為を認識しておらず、日常的にパワハラ行為を行っている場合、すぐに改善するのはなかなか難しいのが現状です。

(つづく)
【長谷川 大輔】

(中)

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