2024年04月19日( 金 )

現役社労士3名による、経営者と従業員のパワハラ対策(中)

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 パワハラは今や従業員、会社側双方の問題にとどまらず、社会問題として大きく提起されている。今回、「経営者と従業員のパワハラ対策」と題し、実際にパワハラに遭遇した場合、経営者と従業員はどのような対策を講じればよいのかを、現役の社労士3名に話をうかがった。

ちとせ労務管理事務所
社会保険労務士 淵上 洋平 氏

録音行為について留意すべきこと

ちとせ労務管理事務所 社会保険労務士 淵上 洋平氏
淵上 洋平 氏

 現状、パワハラを取り締まるための法律はありません。法制化に向けた取り組みは進められていますが、パワハラを定義する範囲が広いことから、まだまだ課題はあります。よって現状はパワハラに該当するような行為を受けたとしても、すぐにパワハラだと認定を受けることありません。認定を受けるには裁判で事実を立証していく必要があります。

 その際、有効な証拠となり得るのが録音データの存在です。先日の吉本興業に関する一連の会見でも話題にあがりましたが、録音行為そのものについては、あくまでも事実関係を確認するための手段として使用するのであれば問題はないでしょう。

 ただし、過去の判例などを見ると、録音していることを相手に黙ったうえで、意図的に相手を煽ったり、激高させるような言動や行動をとったとされるケースがあり、この場合、録音行為そのものはおろか、録音した内容の信憑性にも疑問が出てきます。望ましいのは、「今からやり取りを録音します」と相手側に断りを入れることですが、労使双方が冷静な話し合いを行い、お互いが引き続き在籍を望むのであれば、それぞれに自重を促すという意味で使用するのは有効といえるのではないでしょうか。

会社側は従業員側に、録音されていることを念頭に置いておいた方が良い

 以上を踏まえ、会社側が従業員と何らかの話し合いを行う場合、「従業員側は録音している可能性が高い」ことを念頭に置いて話し合いに臨んだ方がいいでしょう。もし会社側が言ったことを覚えていないと主張しても、その時録音した内容が残っていると、場合によっては会社側に不利に働く可能性が高くなります。また、前述の通り、従業員側が意図的に煽ったり、激高させて自らに有利な証言を引き出そうとするケースも考えられますので、話し合いの際には言葉を慎重に選ぶ必要があるかと思います。

 労働者側は会社側と話し合いに臨むうえで、嫌なことにはハッキリと意思を示すことが大切です。内容や程度の差はあれ、傍目から見て明らかに度を越しているケースなどにおいては、彼(彼女)らの多くは真面目なため、我慢していることが多いと見受けられます。会社や上司からの報復を恐れて、いうにいえない場合もあるのでしょう。あるいは相談できる相手や相談機関をもっていないことも原因の1つとして挙げられます。そもそも相談機関があること自体を知らない人も多いようですので、もっと専門の相談機関や弁護士、労働組合などを活用してもいいと思います。

 最善の手を尽くしたうえで、それでも状況が改善されないのであれば、早めに逃げる(辞める)という選択肢もありでしょう。そのためには、いつでもこの会社を辞めても問題ないよう、日頃から準備をしておくことも必要です。

【長谷川 大輔】

(前)
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