2024年04月20日( 土 )

忍び寄る中国の経済危機(前)

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日韓ビジネスコンサルタント 劉 明鎬 氏

 巷では数年前から中国の経済危機が噂されていたが、中国政府はそれを何とか乗り越えてきた。しかし、米中の対立が激化することによって、中国経済は脆弱さを露呈しはじめ、中国経済の危機はますます深刻度を増している。

 中国経済の崩壊は世界経済に甚大な影響を与えるので、対岸の火事では済まされない。今回は中国の経済危機の正体と、その深刻さがどの程度であるかを取り上げたい。

 中国の経済危機の最も大きな要因は3つになるだろう。負債と、不動産バブルの崩壊、ゾンビ企業である。

 中国は世界金融危機の1年前にあたる2007年には、中国政府は負債をそれほど多く抱えてはいなかった。問題は2008年の金融危機だ。2008年に世界経済は金融危機に見舞われ、深刻な不況に陥るようになった。中国政府は経済成長を維持するため、金利と支払準備率を大幅に下げ、市中に資金が豊富に出回るようにした。
 このような状況下、中国政府の負債が急激に膨らむようになった背景に地方自治体同士の過当競争が挙げられる。

 中国の中央政府は地方自治体の評価を経済実績だけで行っていたので、地方自治体は好評価を得るためには手段と方法を選ばず、経済活性化に乗り出した。また、地方自治体の経済開発によって自治体幹部の懐も潤うことになるので、経済開発にはインセンティブが働いていた。

 地方自治体は良い企業を誘致するため、企業の融資に対して地方自治体が直接負債の保証をしたり、地方政府が所有している銀行経由で、企業が莫大な金額の融資を受けられるようにした。その結果、2008年に6兆ドルだった中国政府の負債は2017年には28兆ドルへと膨れ上がった。GDP対比の負債率は2008年の162%から、2017年には266%に急増した。中国の経済規模を考慮すると、負債の増加スピードは例のない速さである。

 中国政府の負債のもう1つの問題は、中央政府が地方自治体の負債を抑制するため、規制に乗り出すと、地方自治体は規制を避けるべく、シャドーバンキングなどを利用した点だ。シャドーバンキングというのは、銀行の融資ではなく、社債、信託商品、保険商品、P2P貸し出しなどである。シャドーバンキングの代表な商品にWMP(Wealth Management Product、資産管理商品)というものがある。

 中国ではどこの銀行に行っても、加入することができる。普通の預金金利が3%ならば、WMPの金利は年5%~10%である。銀行の預金より利子は高いが、規制対象になっていないので、リスクは高い。2018年のWMPの残高は22兆3千憶人民元で、韓国の国家予算の7倍に匹敵する大きさである。

 銀行はWMPを販売しているだけで、銀行の財務諸表にはその数字は表れてこない。信託会社に渡ったWMPは、その多くは不動産開発などに投資される。それで、もし不動産価格が下落したりすると、シャドーバンキングは連鎖的に崩壊する可能性が高く、それは金融システムの崩壊につながる可能性がある。

(つづく)

(後)

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