2024年04月20日( 土 )

自動化と働きやすさを志向、新しい製造業のスタイル目指す

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金属加工業
リョーユウ工業(株)

頼れる金属加工業者

天神地下街のトイレの入口
天神地下街のトイレの入口

 1972年6月に山中量雄氏が博多区東那珂で創業したリョーユウ工業(株)。2度の移転を経た現在は、宇美町の障子岳南方、緑に囲まれたなかに本社兼工場を構える。自動車用の金属部品を供給するところから始まった同社は、今年で創立48年目を迎える。現代表取締役社長・諸石裕氏は「我々は鉄やアルミ、ステンレスなどの金属を切ったり曲げたりする”加工業“です。

 金属加工といっても時代の流れとともにお客さまのニーズは多様化し、小ロット、低価格、短納期が求められる時代です。お客さまのニーズに応えるべく、図面バラシから切断、曲げ、溶接までをワンストップでできる体制を整えています」と語る。現在では創業以来の商品のほかに、天神地下街のトイレの入口部分のように、デザイン図からモニュメント作成にも携わっている。

 金属加工業のなかでも、0.5mmから6mmまでの厚さの金属板を手の平サイズから最大8mまでのカットや曲げ加工を得意とし、その精度の高さと短納期対応は同社の大きな強みの1つといえる。「金属加工なら、リョーユウ工業」という信頼を顧客から得るため、日々業務に邁進した結果、九州一円からの加工依頼は着実に増加している。

本社に隣接する工場内
本社に隣接する工場内

先輩後輩の壁がない

代表取締役社長 諸石 裕 氏
代表取締役社長 諸石 裕 氏

 金属加工業を含む製造業は今なお、3K(きつい・汚い・危険)というイメージが先行しているが、実際の職場を覗いてみるとすべてがそうだとは限らない。「たしかに業務は楽ではありません。しかしどんな仕事でも嫌な部分はあります。いわゆるホワイトカラーと呼ばれる職業にも、今や新3K(帰れない・厳しい・給与が安い)が登場しています。そういったことを鑑みると、自分自身に合った職業を見つけることが大切だと考えています」(諸石社長)。

 同社では、従来の部品供給だけではなくデザインから設計、溶接までをワンストップで行える仕組みを構築しようとしている。

 「少しずつですが、社内の職種も増えてきています。業務を細分化し、さまざまな視点から自由な発想をもつことで、1人ひとりが成長でき、自分の得意な部分も確認できます。ただ、1つの工程でミスや遅れが出てしまった場合、その後の人がどんな苦労をするのかを理解してもらうことと、部分最適ではなく、全体最適を考えて行動できる人材を増やすため、社内で持ち場をローテーションし、経験を通して勉強させています。良くも悪くも先輩後輩の壁がないので、気軽に指摘し合えるのも弊社の魅力の1つです」と諸石社長は語る。

気軽に相談し合える環境
気軽に相談し合える環境

人こそ要、成果は還元

 顧客からの難しい依頼も、「できない」ではなく、「どうすればできるのか」を社員1人ひとりが考え、真剣に向き合ってきたからこそ、今のリョーユウ工業がある。その背景には、業務に集中できるよう職場改善が常に行われているのだ。たとえば、仕事と仕事の間に取り組めることを考え、無駄を省くことを全員が意識し、普段の仕事を見直すなど、細かい改善を積み重ねている。社員たちの声から効率化と残業時間の削減を進め、その分ベースアップと休日の増加を実現させた。

 「儲かったら必ず社員に還元する」という同社。夏と冬の賞与以外にも決算賞与というかたちで利益を社員に還元してきた。決算賞与は今年で、17年連続で支給している。これは「少しでも社員の生活を良くしたい」という、社長の想いの表れである。

 そんな諸石社長に求める人材像を聞くと「やはりチームワークを大切にできる人間ですね。どの職種においてもコミュニケーションがきちんと取れる人でないと続かないと思います」とコメント。学校や企業説明会などに積極的に参加しており、昨年からは会社見学会も開催。「弊社の良さを少しでも広めるために地道に活動していきたいですね。職場での居心地の良さは今の若者も重要視していますのでそれが伝われば」と諸石社長は笑顔で語る。

製造業の新たなかたちを模索

 多くの製造業がここ数年、AIやIoT(モノのインターネット)など先進技術を活用した「新たな全自動化」に着手してきたが、それでも工場のなかには人手の領域が数多く残されている。そこで登場したのがスマートファクトリーだが、その取り組みを見ていると完全自動化は現状では難しいように思える。だからこそ、今後必要になってくる人材はさまざまなツールの特性を理解し、柔軟に活用できる存在だ。

 「ロボットやAIなどを駆使した新たな製造業のかたちが生まれてくると思いますが、現状ではそういった機械を導入しても活かせないと考えています。ですので、新たな製造業のかたちに向けてまずは手狭になってきた工場の引っ越しも検討しています。より自由度の高い職場環境を構築し、想像(イメージ)を創造(クリエイト)できるような企業にしていきたい」(諸石社長)と今後の抱負を語った。24時間稼働可能なレーザー・タレパン複合機によって加工を行い、マンパワーと自動化の融合により短納期を実現するなどして常に進化してきた同社。今後はさらなる領域拡大を進め、すべての部門において、リーディングカンパニー的存在を目指す。

<COMPANY INFORMATION>
代 表:諸石 裕
所在地:福岡県糟屋郡宇美町障子岳南5-3-5
設 立:1972年6月
資本金:1,000万円
TEL:092-933-6811
URL:https://ryo-u-saiyou.com

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