マンション短期転売の抑制 国、デベともに対策打ち出す

東京・臨海部に建ち並ぶマンション群
東京・臨海部に建ち並ぶマンション群

 大都市圏でのマンションが高騰している。その主な要因は建設コストの上昇にあるが、立地の良いマンションでは投機的な短期売買が横行し、それがさらなるマンション高騰を招いているのでないかという批判が広がっている。円安もあいまって“安い日本”が顕在化し、外国人による投機的な動きへの懸念も出ている。2025年、大手デベロッパーによる投機的短期売買の抑制策が公表された。効果については限定的とされるが、投機に対する厳しい目が注がれている折、無視できないものとなっている。

不動産登記に国籍記録へ

 金子恭之・国土交通大臣は11月25日、閣議後の会見でマンションの取引実態結果を公表した。3大都市圏などの新築マンション約55万戸が対象。購入後1年以内の短期売買や海外からの取得について、国交省が初めて調査・分析を行った。

 調査結果の概要は、東京都(2024年1~6月、8.5%)を中心に神奈川県(同、5.1%)、大阪府(同、6.2%)、兵庫県(同、7.1%)の一部で短期売買の割合が高く、千代田区・中央区・港区・新宿区・渋谷区・文京区の都心6区は12.2%と、中心部に行くほど短期売買の割合が高くなっている。東京23区では、海外に住所がある人(外国人)による短期売買が増加傾向にあるとしている。ただ、都心6区で外国人による2億円以上の高額物件の短期売買の傾向は見られなかった、と分析している。

 外国人による新築マンションの取得は、東京都(25年1~6月、3.0%)を中心に大阪府(同、2.6%)、京都府(同、2.3%)の一部で増加傾向にある。また、都心6区は7.5%と東京都より高いなど、都心部に行くほど増加する傾向が見られるとしている。

 金子国交相は、「区によっては(短期売買が)10%前後のところもあり、とくに直近で顕著な増加傾向も見られることから、今後も動向を注視していく必要があると考えています」と、今後も短期売買への警戒を続けていく方針を示した。法務省は、不動産登記での国籍を把握する仕組みの整備を検討。「今回の調査の元となっている不動産登記情報に国籍が含まれておらず、国内に住所がある外国人による取得の実態は把握できていないことから、本調査の結果をもって、取得全体に占める外国人の割合が小さいか否かを申し上げることは困難と考えています」(金子国交相)と、国交省でも国籍を含めた詳細な取引実態の調査・分析を実施する方針だ。

 マンションの投機的な短期売買に対しては、「日本人か外国人かを問わず、実需に基づかない投機的取引は好ましくないと考えており、これまで、大規模マンション等の供給事業者が会員となっている不動産協会と、投機的取引の抑制に向けた対応について相談を重ねてきたところです」(金子国交相)と、民間デベロッパーとも協議していたことを明らかにした。

東京23区における短期売買の動向。
短期売買の割合は6~9%で推移。
国外に住所がある外国人の短期売買は近年増加傾向があるが、
短期売買に占める件数の割合は2024年1~6月で1.3%にとどまる
(出所=国土交通省「不動産登記情報を活用した新築マンションの取引の調査」)
東京23区、三大都市圏、地方4市の新築マンション短期売買の状況
(出所=国土交通省「不動産登記情報を活用した新築マンションの取引の調査」)

不動産協会が抑制策

 有力不動産会社が多数加盟している(一社)不動産協会は11月25日、「分譲マンションの投機的短期転売問題にかかる取組みについて」を公開した。これは投機的取引に対して同協会としての基本姿勢を示すもので、今後、会員企業が順次実施していくとしている。投機目的の短期転売については「決して好ましいことではない」というスタンスであり、同協会として対策の必要性を認識していたという。引き渡し後の対応には限界があることから、引き渡し前に投機的短期転売を抑制するとした。

 具体的には、①登録・購入戸数の上限制限、②契約・登記など名義の厳格化、③引渡しまでの売却活動禁止の3つ。①については、1物件あたりの購入戸数制限や販売期間中の登録戸数を制限する。②については、申込時の登録名義で契約、引き渡し、所有権登記を徹底し、売買契約書や重要事項説明書などに明記する。③では、引き渡し前の売却活動の禁止を売買契約書や重要事項説明書などの条項を追加するとした。対象エリアや物件、導入時期、制限戸数の設定などの詳細は、同協会の会員企業各社の判断に委ねるという。

 今回の対応について、正副理事会社の8社が先行的に実施するとしている。8社はいずれも大手デベロッパーで、住友不動産(株)、東急不動産ホールディングス(株)、東京建物(株)、野村不動産(株)、阪急阪神不動産(株)、三井不動産(株)、三菱地所(株)、森ビル(株)。それぞれの判断で具体的な導入時期などを決めるとしている。

 東京都千代田区は25年7月に、区内で供給する新築マンションの投機目的短期売買を抑制するよう、同協会に要請していた。今回の取り組みを発表した文書の最後に、千代田区からの要請との関係について触れた。今回の取り組み内容が一定期間の転売禁止や販売戸数の制限という点で、「大きくは同区の要請趣旨とも合致したもの」とした。

地所レジ、26年1月から

 不動産協会が投機的短期転売に関する取り組みを公表したことを受けて、大手デベロッパーも具体的な動きを見せている。三菱地所グループの三菱地所レジデンス(株)は、東京23区と大阪市内で25年1月から販売する物件において、引き渡し前の転売禁止や購入戸数制限を導入。販売登録戸数を1物件に付き2戸までに制限する。カギの引き渡し前に転売が発覚した場合、何度か警告をして手付金の没収などの違約金を徴収する可能性があるとした。販売時期を分けて販売する場合も、時期を通じて適用する。これまでも物件によっては、独自に転売抑制策を行ってきた。

 三菱地所レジデンスの宮島正治社長は、今後のマンション販売について「影響がないとはいえないが、ある一定の範囲にとどまる」と見ている。販売が長期化する物件が出てくる懸念はあるものの、現場からも契約の厳格化の影響は受け入れられる範囲内との感触を得ているという。また、外国人の購入に関しては、日本人と同様に「住民として評価していきたい」(宮島社長)と話し、日本での生活ルールの順守や納税していることなど国籍ではなく入居者適性を判断するとしている。

 転売以外のマンション価格高騰の要因として、三菱地所レジデンスは建築コストや土地価格の上昇のほか、需要の集中と供給不足、低金利の影響、株価上昇による購買力の上昇などを挙げている。

短期転売抑制策について説明する三菱地所レジデンスの宮島正治社長
短期転売抑制策について説明する三菱地所レジデンスの宮島正治社長

転売抑制策に広がり

 先行実施を表明した8社以外にも、短期転売抑制に動く不動産企業もある。日鉄興和不動産(株)は11月25日、投機的短期転売を目的とする顧客へ新築分譲マンションの販売を行わない方針を公表した。登録・販売戸数の上限制限、契約・登記など名義の義務化、引き渡し前の権利移転等の禁止の3点で、不動産協会の措置を踏襲した内容となっている。

 具体的には、同社の物件において原則として個人・法人を問わず、1物件につき2戸に制限。販売時期を分けて販売する場合、1回の販売期で登録可能な戸数を1世帯あたり2戸とする。契約条件として、「登録(申込)名義にて契約、引渡し、所有権に関する登記を行うこと」を重要事項説明書や売買契約書などに明示する。さらに引き渡し前の権利移転を禁止。引き渡し前の売却活動をできないものとし、違反が発覚した場合には契約を解除することができることを、重要事項説明書や売買契約書などに明示するとした。

 「26年1月から書類関連等の準備が整った物件より順次実施予定」(日鉄興和不動産)とし、物件のエリアによる違いはないという。対象物件は同社が単独で供給している物件と同社がJV主幹事物件。マンション高騰は3大都市圏のみならず全国的な動きであり、政令指定都市の中心部など需要が供給を上回るエリアにおいて、短期売買抑制の動きが広がる可能性がある。

新ビジネス拡大も視野

 大手デベロッパーがマンションの短期転売抑止に動いた理由の1つに、売却後のマンション管理組合が機能しなくなることへの危惧がある。近年は建築コスト高騰や適地獲得競争が激化しており、とくに大手は高額物件を積極的に扱うことで採算性を確保している。高額物件ほど、実需の購入者は中長期的な物件の資産性に着目する傾向が強まっており、管理がしっかりしているマンションへのニーズが高まりつつある。

 また、投機的な短期転売が横行することで、法人による複数戸数の応募など抽選倍率が高くなり、実需層が購入できなくなる。引き渡し前の転売は、複数期に分けて販売されるマンションにとって、販売期間中にそれよりも高い転売価格の住戸が売られることで価格がつり上がる可能性がある。短期転売の抑制で、「大きな価格変化は起こりにくいのではないか」(宮島社長)と効果を期待する。さらに、入居者がいないことでゴーストタウン化し、住環境が悪化する懸念もある。実需層が期待する資産性を担保するためにも、管理の重要性が増している。

 新築分譲マンションは「売って終わり」のイメージが強いが、供給が増やせないこともあり、マンション管理はデベロッパーによる新たなビジネスとして着目されている。投機的短期転売の抑制は、デベロッパーの中長期的なビジネス拡大を視野に入れた動きでもある。


<プロフィール>
桑島良紀
(くわじま・よしのり)
1967年生まれ。早稲田大学卒業後、大和証券入社。退職後、コンビニエンスストア専門紙記者、転職情報誌「type」編集部を経て、約25年間、住宅・不動産の専門紙に勤務。戸建住宅専門紙「住宅産業新聞」編集長、「住宅新報」執行役員編集長を歴任し2024年に退職。明海大学不動産学研究科博士課程に在籍中、工学修士(東京大学)。

月刊まちづくりに記事を書きませんか?

福岡のまちに関すること、建設・不動産業界に関すること、再開発に関することなどをテーマにオリジナル記事を執筆いただける方を募集しております。

記事の内容は、インタビュー、エリア紹介、業界の課題、統計情報の分析などです。詳しくは掲載実績をご参照ください。

記事の企画から取材、写真撮影、執筆までできる方を募集しております。また、こちらから内容をオーダーすることもございます。報酬は別途ご相談。
現在、業界に身を置いている方や趣味で建築、土木、設計、再開発に興味がある方なども大歓迎です。
また、業界経験のある方や研究者の方であれば、例えば下記のような記事企画も募集しております。
・よりよい建物をつくるために不要な法令
・まちの景観を美しくするために必要な規制
・芸術と都市開発の歴史
・日本の土木工事の歴史(連載企画)

ご応募いただける場合は、こちらまで。不明点ございましたらお気軽にお問い合わせください。
(返信にお時間いただく可能性がございます)

関連記事