2024年03月29日( 金 )

「原発の闇」の背後に原子力ムラ内閣~「同和」を目くらましに使った関電経営陣の醜態(前)

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高浜原子力発電所(福井県大飯郡高浜町)
高浜原子力発電所(福井県大飯郡高浜町)

 関西電力(本部:大阪市)の経営陣や原発事業責任者らが、原発立地地域(高浜発電所)である福井県高浜町の元助役である森山栄治氏(今年3月に死去)から3億円を超える金品を受領していた問題。渡した金品が現金に加えて金貨や外貨(米ドル)だったこと、さらに渡した方法も「菓子袋の底に入れて渡す」など時代劇じみていたことが問題視され、収束する気配を見せない。

 さらに問題を複雑にしているのは、森山氏が単なる助役の枠を超えて高浜町に君臨していた「闇の王」だったという数々の証言だ。

 週刊誌などは「森山氏が部落解放同盟関係者だったために関電側も断れなかった」などの記事を掲載しており、にわかに関電に対する同情の声などもあがり始めた。

 しかしデータ・マックスの調べでは、解放同盟として高浜町の原発事業にかかわった事実は確認できていない。むしろ森山氏が関電側に匂わせていたのは原発誘致などをめぐる関電側の「知られたくない事実」であり、電力会社の隠蔽体質と合わせ、もちつもたれつの関係だったことは動かしようのない事実だ。それにもかかわらず「死人に口なし」をいいことに責任をすべて森山氏にかぶせて被害者面で記者会見。この国のエリートたちのなんとも醜悪な一面を、またしても見せつけられたかたちだ。

■野党の申入書を受け取り拒否した関電

関電に「申し入れ書受け取り拒否」された後の囲み会見
関電に「申し入れ書受け取り拒否」された後の囲み会見

 関電本社(大阪市)に野党議員が申入れ、5日午前9時すぎに野党関電疑惑追及チームの国会議員7名が関電本社を訪れ、担当者が国会や野党合同ヒアリングに出席することを求める申入書を渡そうとした。しかし、出てきたのは警備員。「こんな対応は初めて」とチーム座長の今井雅人衆院議員(無所属)が呆れ返り、川内博史衆院議員(立憲民主党)が面会拒否は関電の意向か経産省の指示なのかと問い質すと、警備員が総務に問い合わせて「今日は対応できるものがいない」と回答した。

 担当者不在を受けて今井氏は、警備員に「電力事業における不適切な事案に対する真相解明の要請」と題する文書を渡した後、囲み取材で「説明責任を果たそうとしない関電の対応に愕然としている。電力業界の信頼が大きく損なわれている。一つひとつの事実をしっかり説明してほしい」と釘を刺した。

 「面会拒否は経産省の意向が働いている可能性がある」と指摘したのは川内氏。「去年9月に関電の報告書が出来ていて『一年間知りませんでした』と経産省は言っているが、電力業界と経産省は一体だから、知っていたのではないか。公共的な事業をする会社(関電)と規制当局(経産省)との間で全く意思の疎通がなくて、重大なコンプライアンス違反事案を知らなかったとしたら、これも大問題。知っていて隠しても問題、知らなくても問題だ」(同)。

 前代未聞の対応を経験した議員らは、経産省の"疑惑沈静化シナリオ"を見通していた。「これから設置される第三者委員会が年内を目途に報告書を取りまとめるまで、関電を表に出させないつもりだろう」。

10月3日に開かれた「関電疑惑 野党合同ヒアリング」
10月3日に開かれた「関電疑惑 野党合同ヒアリング」

■「改憲より関電だ」

 森山栄治・高浜町元助役(3月に90歳で死去)から3億2千万円もの金品を受け取っていたことが発覚した関電原発マネー問題が、臨時国会最大のテーマになりつつある。立憲民主党の枝野幸男代表が「自分も懐にお金を入れているという話では、原発政策に対する説明が説得力を失う。原資は電力料金か税金かという話」と問題視すると、国民民主党の玉木代表も「他に同じような案件がないのか徹底的に調べる必要がある」と各地の電力会社にも横展開すべきと語り、安住淳国対委員長も「改憲より関電だ」と同調している。

 経産省出身の今井尚哉首相秘書官が官邸を仕切っていることから「経産内閣」「原子力ムラ内閣」とも呼ばれる安倍政権を直撃する一大疑惑でもある。関電などの電力会社と経産省は二人三脚を組んで原発推進をしてきた同じ穴のムジナ(原子力ムラの住人)であり、原発マネー還流に何らかの形で関知していても不思議ではないからだ。

 初回の会見で批判が集中したため、翌週(10月2日)に開かれた第2回目の会見で、私(横田)が次のように聞いたのはこのためだ。

10月2日に関電が開いた会見で頭を下げる経営陣
10月2日に関電が開いた会見で頭を下げる経営陣
関西電力の八木誠会長は、福岡県立修猷館高校のOBでもある
関西電力の八木誠会長は、福岡県立修猷館高校のOBでもある
関西電力の岩根茂樹社長
関西電力の岩根 茂樹 社長

 

 横田 ――関西電力の原発運営・稼働で二人三脚を組まれてきた経産省も同じ考え、つまり「森山氏みたいな地元の有力者のご機嫌を損ねないで原発をとにかく稼働させる」ということだったのか。2012年の大飯原発再稼動の時には、今井(尚哉)首相秘書官、当時(経産省)資源エネルギー庁次長は慎重な姿勢だった橋下徹・大阪市長(当時)や嘉田由紀子・滋賀県知事(当時)に「再稼動しなかったら停電して病院で死者が出るぞ」という恫喝的説明をして大飯原発再稼動に汗をかかれた。(再稼動で関電と)二人三脚を組んで、一心同体のような経産省がまったくこの事態を知らなかったとは思えないが、経産省は森山氏についてどういう考えだったのか。

 岩根社長 経産省のことなので私から「ああだ」「こうだ」というコメントを申し上げにくいが、少なくとも我々から「こういう人がいる」ということを申し上げたことはないし、経産省とは原子力に関する話をいろいろしていますが、そういった話題が出たことはありませんので、経産省は森山氏のことは知らないと思います。

 横田 ――今井さんとは具体的に相談、報告をしたり、助言を受けたりしていないのか。

 岩根社長 今井秘書官は元エネ庁次長でしたので、その時には大飯原発再稼動でもお世話になりまして、お話をしていますが、官邸に行かれてから大変お忙しくなっていますので、情報交換は出来ていません。

(つづく)
【横田 一/ジャーナリスト】

(後)

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