2024年12月10日( 火 )

「抗疲労」市場 2020年に12兆円規模に(後)

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日本疲労学会が臨床評価法を推奨

 最近は疲れをとる健康食品として、イミダゾールジペプチド、コエンザイムQ10、アスタキサンチンなどのサプリメントも販売されている。日本疲労学会は、特定保健用食品(トクホ)の臨床評価における疲労感の評価方法として、VAS(Visual Analogue Scale=視覚アナログ尺度)と呼ばれる検査方法を推奨している。

 VASの検査方法は、100mm(10cm)の横線に目盛りを打たず、左端に「疲れをまったく感じない最良の感覚」、右端に「何もできないほど疲れきった最悪の感覚」と記し、被験者に主観的にどの程度の疲れかを指し示してもらい、示した点が最小点から何mmの位置かを測定することで疲労度が推定できるというもの。

 同学会では、被験者に記載方法について十分説明した後に実施すれば、疲労感評価のデータとして用いることが可能としている。海外の研究機関では疲労の尺度として用いられており、正確な疲労測定が可能であると認められている。

 日本の大学で唯一、疲労専門外来をもつ大阪市立大学病院でもこのVAS検査を採用している。

 外来立ち上げ時に臨床に当たっていた梶本修身医師(東京疲労・睡眠クリニック院長)は、「VASは自覚的所見ですが、これに作業効率を調べるパフォーマンスマーカーやヒトヘルペスウイルスを利用した生化学的マーカーを組み合わせれば、かなり精度の高い測定が可能になります」と話す。そして、抗疲労食品の必要条件について、梶本医師は、「同じ作業負荷を与えた際に起こるはずの疲労が、摂取しない場合(プラセボ摂取時)と比べて軽減していることが必須となります」と指摘する。

 そして、摂取を中止したときにリバウンドがないことや、長期摂取や過剰摂取しても副作用がないことが絶対条件となる。これらの条件が、メカニズムを含めて科学的に実証され、学会などでコンセンサスを得られれば、抗疲労食品は市民権を得ることができるだろう。

トータルなサポートが不可欠

ポリフェノールの一種であるフェルラ酸は、お米の胚芽や植物の細胞壁に含まれる

 疲労感を訴える高齢患者に、自分で開発したサプリメントを推奨するのは、ストレスケア日比谷クリニック(東京都千代田区)の酒井和夫院長。ストレスが溜まって脳疲労が蓄積されていくと高齢者の認知機能にも悪影響をおよぼすとの考えから、同クリニックでは、70歳を過ぎた患者には、脳の処理能力が高まるフェルラ酸サプリを薦めている。

 フェルラ酸は、お米の胚芽や植物の細胞壁に含まれるポリフェノールの一種だ。化粧品原料や、酸化防止剤として食品添加物にも使われている。フェルラ酸の効果としてとくに注目されているのが認知症の予防効果だ。

 「先行研究では、認知症の原因物質とみられるアミロイドβを投与して学習能力が低下したアルツハイマー型の認知症モデルマウスにフェルラ酸を投与したところ、通常レベルまで回復したことが明らかになりました。その後の研究では、βアミロイドが炎症して起こる酸化ストレスから、フェルラ酸が神経細胞を保護することも明らかになったのです」(酒井院長)。ストレス、疲労、認知機能障がいの3つは複雑に絡み合って不調につながっていくケースが見られるため、トータルなサポートが不可欠だという。

(了)
【取材・文・構成:吉村 敏】

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