2024年04月25日( 木 )

「放射能でおもてなし?」~安全性を疑問視する国内外からの声が急増!(1)

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 7月25日にアメリカの雑誌“The Nation”が掲載した「福島でのオリンピックは安全か?現地を訪れてわかった原発事故の重大な影響は終わっていない」という記事が大きな反響を呼んだ。日本では、なぜかほとんど報道されないが、今ものすごい勢いで世界が危惧する「放射能五輪」の声が増大し始めている。福島原発問題が終わっていない(under controlではない)ことは今や海外では常識となった。一貫して人道的立場から「放射能五輪」に警鐘を鳴らし続けている、村田光平 元駐スイス大使・東海学園大学名誉教授に聞いた。

元駐スイス大使・東海学園大学名誉教授 村田光平 氏 

すでにすべての材料は、この26分のなかに、出揃っている

 東京地方裁判所は19日、福島第一原子力発電所の事故をめぐり、業務上過失致死傷罪で起訴されていた東京電力の旧経営陣3人に無罪判決を言い渡した。この裁判は、福島第一原発事故をめぐって開かれていた唯一の刑事裁判。

 福島第一原発は東日本大震災による巨大津波に見舞われ、原子炉3基がメルトダウン。これを受け、47万人以上が避難した。勝俣恒久元会長(79)と武黒一郎元副社長(73)、武藤栄元副社長(69)の3人は、巨大津波への対策を怠り、44人を死亡させたとして業務上過失致死傷罪に問われていた。

 ――9月19日には、司法の歴史に大きな汚点を残しかねない「福島原発事故の東電旧経営陣に無罪判決」(東京地裁)が出ました。先生はこの判決をどうご覧になられましたか。

 村田光平氏(以下、村田) 河合弘之監督(映画監督/弁護士・脱原発弁護団全国連絡会共同代表・小泉純一郎元総理の脱原発活動を支える原自連の事務局長)の短編映画「東電刑事裁判 動かぬ証拠と原発事故」(YouTube:『短編映画「東電刑事裁判 動かぬ証拠と原発事故」YouTubeで公開!』で公開中)を見ていただければ、先日の裁判結果がどうであれ、最終的には、間違いなく、被告3人は「クロ(有罪)である」ことが判明します。すべての材料は、この26分のなかに、すでに出揃っているからです。闇に葬られかけた津波対策計画の動かぬ証拠の数々が解析され、いかなる経緯で対策が握りつぶされたのかが詳細に描写されています。

 被告人である東電元役員3名が事故の原因である巨大津波を予見し、津波対策工事を計画していながら、「経営悪化を恐れて対策自体を握りつぶした大罪」を、今回司法は許しました。しかし、この無罪判決には多くの国民から「彼らが無罪であるのなら、その責任は誰にあるのか」と非難の声が挙がっています。今全国各地で、東電に対し原発事故の避難者によって民事訴訟が約30件提起され、すでに12件の一審では、いずれも東電に対しては賠償を認める判決が出ています。

関電で原発への信頼を根底から揺るがす事実が発覚した

 この判決は、奇しくも今の日本に「倫理・道徳」が失われてしまっていることを白日のもとに曝け出しました。何が善で、何が悪かという概念の見極めができなくなっています。

 この結果に、落胆し「何を言っても仕方がない」と思われている方も多いと思います。しかし、私は「最大の権力の最大の敵は“倫理・道徳”である」と確信しています。今後間近に起こるさまざまな出来事の展開で、世論も含めて大きく変わってくるでしょう。

 すでにその兆候がどんどん出始めています。最近では「電力業界2位の西の雄で、関西経済界を代表する、関西電力の岩根茂樹社長ら役員20人が、高浜原子力発電所が立地する福井県高浜町の助役森山栄治氏から総額3.2億円相当の金品を受け取っていた」ことが判明し、内外に衝撃を与えております。老子の「天網恢々疎にして漏らさず」が改めて実感されます。

 岩根茂樹社長は、大手電力10社でつくる電気事業連合会(電事連)の会長でした。関西電力は膨大な人材とコストをかけて原発再稼働に邁進し、原発7基が原子力規制委員会の安全神話をクリアーし、うち4基で再稼働をはたしていました。その関電で原発への信頼を根底から揺るがす事実が発覚したのです。鳩山友紀夫元総理はツイッターでほかの電力会社でも「大同小異」のことが行われていると指摘されております。

 国民の反対する不道徳・無責任な再稼働が実施される背景が衝撃的に露見しました。再稼働中の9基の原発の運転停止の実施は緊急課題となりました。

(つづく)
【金木 亮憲】

<プロフィール>
村田光平氏(むらた・みつへい)

 1938年東京生まれ。1961年東京大学法学部を卒業後、2年間外務省研修生としてフランスに留学。その後、分析課長、中近東第一課長、宮内庁御用掛、在アルジェリア公使、在仏公使、国連局審議官、公正取引委員会官房審議官、在セネガル大使、衆議院渉外部長などを歴任。96年より99年まで駐スイス大使。99年より2011年まで東海学園大学教授。

 現在、日本ナショナル・トラスト顧問、日本ビジネスインテリジェンス協会顧問、東海学園大学名誉教授、天津科技大学名誉教授。

 著書として、『新しい文明の提唱‐未来の世代へ捧げる‐』(文芸社)『原子力と日本病』(朝日新聞社)『現代文明を問う』(日本語・中国語冊子)など多数。

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