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2019年10月18日 16:19

健康長寿の産業化で医療コスト削減を目指す

健康長寿産業連合会

 国の財政問題がさまざまに語られるなか、中心となるのは高齢化の進行と、それにともなう医療費の高騰や経済活動の減退だ。これらの対策として医療費を削減するとともに、経済活動に効率的につなげることを目標に、日本を代表する企業群が「健康長寿」をキーワードとして手を結んだ。

世界一の高齢国家「日本」

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 世界各国で高齢化が進むなかで、日本の高齢化率は先進諸国と比較しても、とくに急速に高まり、それとともに医療費が高騰することが見込まれている。内閣府の推移推計によると、2015年時点ですでに65歳以上の割合が26.6%と6カ国中のトップであった日本は、トップの座を保ったまま高齢化率が高まり、2060年には38.1%と、3人のうち1人以上の割合を高齢者が占めると見られている。そのなかで医療・介護にかかわるコストを抑制することは社会的な課題となる。

 定年延長なども議論されているが、高齢化の進行はすなわち生産年齢人口割合の低下で、経済活動にとってもマイナスの影響をもたらすことになる。

 高齢化の進行は避けられないものとすると、「健康長寿の延伸」、すなわち健康的に長生きすることを、社会的に支援していけば、実質生産年齢が拡大するとともに、医療・介護コストの減少につながる。また、その活動を産業として成立させ、大きなマーケットとなれば日本経済全体にとってもプラスに働くというわけだ。

 今後、一大産業となることが希求される「健康長寿産業」に道すじをつけるべく8月28日に、日本を代表する企業4社によって「健康長寿産業連合会」を発足させることが発表された。

健康長寿の延伸へ向け活動を開始

 「日本における健康長寿産業の振興」を目的として、同会は企業・業界団体が主体となった産業間交流の場として提供されるという。

 10月1日予定にて「健康長寿産業連合会」の設立を発表したのは、下記の4社だ。

・日本電信電話(株)(本社:東京都千代田区、澤田純社長、以下NTT)
・三菱地所(株)(本社:東京都千代田区、吉田淳一社長)
・(株)ルネサンス(本社:東京都墨田区、吉田正昭社長)
・凸版印刷(株)(本社:東京都千代田区、麿秀晴社長)

 連合会の前身となる「次世代ヘルスケア産業協議会」は、2013年に経済産業省を事務局として発足し、ヘルスケア産業の育成などに関する課題と解決策を検討してきた。2016年には、丸の内の大手企業21社による「丸の内健康経営倶楽部」が発足し、「丸の内WELL-BEING宣言」を公表するなど活動が広がった。その後、各企業・業界団体から健康長寿の延伸に向けた「交流の場」を求める要望が上がるようになったという。

 これを受けて設立に至った「健康長寿産業連合会」では、NTT(株)・澤田社長が会長を、残り3社が副会長を務めるほか、関連企業や関連団体の会員参加を想定し、会員企業のなかから、理事や事務局、ワーキンググループなど組織する。10月中に体制の決定を予定している。

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産業成立へ向けた4つの活動テーマ

 具体的な活動テーマとしてあげられている案は4つだ。

 まず「1.健康都市モデルの検討」では、特定の地域を対象に、健康づくりにモデル的に取り組み、その課題や効果の検証を行うとしている。すでに大手町・丸の内・有楽町地区では、三菱地所が中心となり健康推進アプリ「丸の内ヘルスカンパニー」をリリースするなどの活動が行われている。

 つぎに「2.健康関連データの活用促進」では、パーソナルデータの保有者、活用方法の方針などの検討・提言を行うという。学校や企業健診、医療機関のデータを共有し相互活用することができれば、個人に対して、質の高い予防や治療を行えるとともに、企業側にとっても効率的なサービス提供ができるのではないか、というわけだ。

 さらに「3.健康経営の推進」では、企業単位でのユーザーの需要創出における課題やニーズを共有することで、マーケットを拡大したいとしている。

 スポーツクラブなど運動施設の需要は年々高まる一方だが、今後は企業や地域など団体での健康維持への取り組みも増えるとともに、新たな需要が出てくることが見込まれる。この過程で情報交換や情報共有を行い、ニーズに合ったマーケットを拡大していく考えだ。

 これらの活動に加え、「4.その他」のなかで業界ガイドラインや啓発活動などを挙げることからも、この連合会が官民一体の活動として、今後国内の健康長寿産業の中心となってくることは間違いないだろう。

 黎明期でありながら、今後急速に重要性を増すとみられる「健康長寿産業」を、業界団体を越えた官民一体で振興することで、高騰を続ける医療・介護コストの削減の一手となるか、今後の活動に注目が集まる。

【吉田 誠】

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