2024年03月29日( 金 )

【講演レポート】福岡都市圏の未来を左右する30年先の交通インフラとは

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基調講演を行う(一社)九州経済連合会の麻生泰会長
基調講演を行う(一社)九州経済連合会の麻生泰会長

交通インフラの整備は未来への投資

 人口増加が著しく、博多港のクルーズ船寄港回数や福岡空港発着回数の増加など、近年は人流や物流の活性化が進んでいる福岡都市圏。だがその一方で、慢性的な渋滞の発生などによって市内の平均旅行速度(※)が東京23区よりも遅いといったような、交通インフラ面での課題を抱えている。今後、福岡都市圏がさらに発展していくための、30年後を意識した交通インフラのあり方を考えるべく、九州地方整備局主催で「福岡都市圏の未来の交通インフラを考えるシンポジウム」が9月18日に開催された。

「福岡都市圏の未来の交通インフラを考えるシンポジウム」
「福岡都市圏の未来の交通インフラを考えるシンポジウム」

 同シンポジウムの基調講演では、(一社)九州経済連合会の麻生泰会長が登壇した。麻生氏は、「バラ撒く金が国にはないから、尖がっているところをさらに尖がらせて、周りが恩恵を受けるという構図ができていくことが大事だ」と持論を展開。そのうえで、「観光面においても、輸出面においても、福岡都市圏のインフラ整備がもっと進んでいかなければならない」「まちの発展にともなって生まれる交通渋滞などの悩みを、どのようにしてインフラが解決していくか。交通体系の整備、とくに道路やほかの交通とのコネクトの整備が重要」「福岡都市圏にはインフラ面の課題を解決することで、1つの成功事例をつくっていくという大きな役割がある」など、“福岡都市圏がはたすべき役割”について熱弁を振るった。

 続くパネルディスカッションでは、パネリストとして5名が登壇し、活発な意見交換が行われた。各人からの興味深い意見の数々に聴講者らは熱心に耳を傾け、同シンポジウムは盛況のうちに幕を閉じた。

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各パネリストからの意見
※クリックで拡大

※平均旅行速度:区間の総延長を走行に要した時間で割った平均速度のこと

開発・成長の陰に隠れたインフラ面の問題

 かつての福岡都市圏の交通ネットワークは、国道3号や国道202号などの主要な幹線道路がすべて福岡市内を通過するかたちの“Y字型”の道路網となっており、自然と都心部に交通が集中。市内においては、著しい交通渋滞が慢性化していた。その後、福岡都市高速や福岡外環状道路、博多バイパスなどの整備完了によって交通の分散化が図られ、以前に比べると都心部への流入交通は減少したとされる。

 だが一方で、交通渋滞の発生回数や、延べ渋滞時間は増大傾向にある。混雑時の平均旅行速度を比較してみても、名古屋市(20.2km/h)や大阪市(19.9km/h)、さらには東京都23区(18.3km/h)と比べても、福岡市は17.9km/hと下回っており、依然として交通事情は芳しくない状況だ。

 その要因として考えられるのは、福岡都市圏が今、日本一ともいえるほど“元気なまち”であるということ。都市の成長にともなう人口増に加え、インバウンドを含めた観光客数の増加などにより、現在はそもそもの交通量の母数自体が増加傾向にある。いくら道路インフラや交通ネットワークが整備されたところで、交通量の増加ですぐに飽和状態に陥ってしまうようでは、“イタチごっこ”に過ぎない。

 渋滞の発生は、物流や経済の生産性を低下させるほか、通勤・通学や観光などの人的な移動も阻害し、さまざまな分野に多大な影響をおよぼす。いくら都心部で活発な開発が行われていたとしても、移動にひと苦労するような場所に、人はわざわざ足を運ぼうとするだろうか。

 今回のシンポジウムは、現状抱えている課題に対する具体的な解決策を示すまでには至っていないものの、都市の開発・成長の陰に隠れがちな交通インフラ面の問題に踏む込み、改めてクローズアップした点で、非常に意義深いものだったといえよう。華やかな都市開発動向にばかり目を向けるのではなく、“縁の下の力持ち”的な交通インフラの整備にも着目し、官民が協同してハードとソフトの両面から、未来における都市交通インフラのあり方を考えていくこと。福岡都市圏は今、これから先の未来に向けて、非常に重大な局面を迎えているといえよう。

【坂田 憲治】

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