2024年04月25日( 木 )

合同庁舎移転&跡地活用がカギ~博多駅・筑紫口再開発(2)

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新幹線開通を契機に、周辺開発が一気に進む

 新たな博多駅の移転・拡張においては、56年4月に「博多駅土地区画整理事務局」が設置されたことが始まりとなる。翌57年8月には、事務局による博多新駅の街路網が決定され、同年10月に博多駅土地区画整理事業の施行に即応した、駅前広場を含めた都市計画街路が決定。さらに同年11月には、事務局によって博多駅周辺の区画整理計画が決定された。

 新たな博多駅は、高架式の純旅客駅とすることが58年12月に決定され、60年7月に現在の博多駅の場所において、駅舎の建築が着工した。また同7月には、福岡市と福岡市議会、福岡商工会議所の3者によって、「博多駅民衆駅設立準備委員会」が結成。新駅は民衆駅としての開発が進められることとなった。民衆駅とは、駅舎の建設を国鉄と地元とが共同で行う代わりに商業施設が設けられた駅のことで、当時の日本では50年4月に開業した豊橋駅(愛知県豊橋市)を皮切りに、全国的にこの方式の駅が広まっていた。新たな博多駅においてもこの方式が採用され、61年3月に、国鉄と福岡市、福岡商工会議所および地元財界が一致協力して、デベロッパーとなる(株)博多ステーションビルを設立。63年12月に高架式純旅客駅が完成して、西日本一の民衆駅として新博多駅が開業した。また同時に、「マイング博多駅名店街」と「食堂街一番街」も開業を迎えている。また、翌64年5月には民衆駅施設となる「博多ステーションビル」が竣工し、66年5月に博多ステーションビル内の地上1~6階部分に博多井筒屋が開業した。さらに、同時期には博多駅前広場地下道と地下街のほか、福岡交通センター(駅前バスターミナル)なども開業を迎えており、現在の博多駅に通じる交通インフラ拠点の原型が、この時期に形成されていったといえよう。なお、移転前の旧駅舎については、貴重な文化財であるとの観点から保存の検討もされていたが、市の都市計画に基づいた「大博通り」が整備される際に取り壊されている。

博多駅および周辺エリアでの開発動向
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 こうして、商業施設機能を有した民衆駅・博多駅の開発が進んでいく一方で、当時の駅周辺には、54年3月に完成した「ナショナルビル」以外に目立った高層建築物がなく、福岡市中心市街地エリアとしてすでに発展を遂げつつあった中央区・天神エリアに比べると、閑散とした状況だった。そこで駅周辺での都市化を進めるべく、67年10月に「ビル誘致条例」が制定された。これは、新たに建てられる地上6階以上もしくは高さ20m以上の、延床面積2,500m2以上のビルに適用され、事業者に対しては建物の固定資産税の50%以内を3年間還元するというもの。事業者へのボーナスが付与されるという点では、今の天神ビッグバンや博多コネクティッドによる建替え促進政策に通じるものがある。

 一方で、69年12月に山陽新幹線の岡山~博多間の工事計画についての運輸大臣認可が下り、博多までの新幹線の開通が決定。これらビル誘致条例と新幹線開通決定を契機に、博多駅周辺エリアでは新たなビルの開発が活発化していった。

 代表的なものを挙げていくと、「はかた近代ビル」(69年11月竣工)、「福岡朝日ビル」(70年2月竣工)、「深見ビル」(70年6月竣工)、「福岡商工会館」(70年11月竣工)、「福岡相互銀行本店(現・西日本シティ銀行本店)」(71年11月竣工)、「福岡センタービル」(72年3月竣工)、「福岡リコー近鉄ビル(旧・博多都ホテル)」(72年9月竣工)、「KDX博多南ビル」(73年6月竣工)、「博多偕成ビル」(74年7月竣工)、「博多新三井ビル」(74年11月竣工)、「大博多ビル」(75年9月竣工)など。また、民間の建物だけでなく、「福岡地方合同庁舎」(68年11月竣工)、「博多地区出先総合庁舎(現・博多区役所)」(71年3月竣工)、「福岡第2地方合同庁舎」(74年12月竣工)といった公共建築物も含めて、“雨後の筍”のように多数の大型ビルが林立。これ以外に中小規模のものも含めると、博多駅周辺では山陽新幹線の開通までの短期間のうちに、急速に都市化が進んでいった。

 そして博多駅周辺に新たに登場したこれらのビルには、交通結節点としての利便性の良さや、筑紫口に開設された合同庁舎に国の機関が集積していることもあって、中央の大手企業が九州支店・福岡支店などをこぞって進出。こうして博多駅周辺エリアは、商業街である天神と対比して、オフィス街としての性格を強めていくことになる。

 その後、福岡市地下鉄・博多駅(83年3月仮駅、85年3月本駅)開業や、山陽新幹線の回送線を活用した博多南線の開業、93年3月の地下鉄・空港駅までの延伸、さらには2011年3月の九州新幹線全線開業などを経て、博多駅は“福岡の陸の玄関口”たる交通結節点としての機能をますます強化。一方で近年では、11年3月に開業した新駅ビル「JR博多シティ」や、16年4月開業の「KITTE博多」「JRJP博多ビル」といった、JR駅直結という強力な優位性を有する新たな商業施設の登場により、主に博多口側では、かつての天神のお株を奪うかのごとく、商業施設機能も充実。こうしてオフィスや商業施設、ホテルなどが集積した今の博多駅エリアの姿がある。

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(つづく)
【坂田 憲治】

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