• このエントリーをはてなブックマークに追加
2019年11月02日 07:00

加熱する米中貿易戦争 データ覇権で遅れる日本(3) 未来トレンド分析シリーズ 

国際政治経済学者 浜田 和幸 氏

威圧的なアメリカの現状

 2018年11月に3度目の来日をはたしたアメリカのペンス副大統領も、トランプ大統領の意向を代弁していた。「インド太平洋戦略」で安倍首相と意気投合を演出したペンス副大統領であるが、中国の進める「一帯一路」計画の向こうを張って、アメリカ主導のアジア太平洋地域向けの700億ドル(約8兆円)のインフラ整備基金の創設を事前のすり合わせをしないまま、突然提案したのである。しかも、新たな基金の原資はすべて日本に負担させようという魂胆だ。

 その論理は明快であった。曰く「アメリカは日本を外からの脅威から守っているのだから、アメリカから防衛装備品を購入し、中国と対抗する途上国援助の基金をアメリカに提供するのは当然」という発想だ。ペンス副大統領は「日本からの資金提供に感謝する」と明言しているが、安倍首相はその点に関しては国民への詳しい説明を行おうとしていない。これでは、あまりにも「トランプ・ファースト」ではないか。

 何しろ、アメリカ側は「アメリカのいう通りにしなければ、日本からの自動車や部品に25%の関税を上乗せするぞ」と恫喝。とても最大の同盟国に対する物言いとは思えない。経済と安全保障をリンクさせるアメリカの手法は、どこまで通用するのだろうか。トランプ大統領は決まり文句のように「アメリカ経済は順調だ。株式市場も活況を呈しており、雇用も拡大中だ。誰のおかげだ?」と自信満々の様子だ。

 しかし、アメリカの現状は一皮むけば厳しい限りである。たとえば、2018年10月、政府機関の横断的調査作業チームが報告書をまとめ、アメリカと中国の製造業とサプライチェーンの実力を比較したのだが、軍事力の基盤を形成する産業分野でアメリカは中国にかつてないほど依存していることが明らかにされた。衝撃的といえる内容であり、アメリカの軍需産業が直面する300を超える弱点が列挙されている。そのなかでも特筆すべきものは3点に集約できる。これらの弱点を克服するのは容易ではないが、不可能ではないはず。しかも、日本が協力できる分野でもある。以下、そのアメリカの弱点を紹介してみたい。

 第一が、アメリカの製造拠点が海外にアウトソーシングされたために、ボーイングやレイセオンなど主要軍需産業がいずれも部品の安定供給に弱点を抱えていること。2000年以降、この傾向は悪化の一途をたどっており、アメリカ国内の製造基盤は70%以上も減少。集積回路に至っては90%がアジアで製造されており、その内半分以上が中国製である。アメリカ国内の製造メーカーはほぼ壊滅状態だ。その裏には中国企業によるアメリカ企業の買収攻勢があった。ハイテク関連企業の買収に中国はこの10年だけで400億ドルを投入してきた。

 第二に、部品の製造に欠かせない材料の大半を海外に依存しており、とくにレアアースなどは100%を中国からの輸入に頼っていること。これでは、中国から供給をストップされれば、アメリカの軍需産業は即死状態になりかねない。軍需産業に限らず、民間の通信機器メーカーもお手上げ状態になるだろう。

 1981年の時点では、アメリカは国内でアルミニウムを製造しており、世界最大の生産量を誇っていた。世界市場の30%以上を占めていたのだが、2016年になると、わずか3.5%にまで急落。アメリカのアルミ生産量はサウジアラビアより少ないのが現状である。

 第三が、製造や研究開発の分野に欠かせない熟練工やエンジニアが極端に不足しており、外国人に依存する度合いが高まっていること。電子部品から原子力・核関連、そして宇宙分野に至るまで、研究、製造、管理に携われる専門家や技術者が圧倒的に足らないのが今のアメリカの実情である。

(つづく)

<プロフィール>
浜田 和幸 (はまだ・かずゆき)

 国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鐵、米戦略国際問題研究所、米議会調査局などを経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選をはたした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任し、震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。16年7月にネット出版した原田翔太氏との共著『未来予見~「未来が見える人」は何をやっているのか?21世紀版知的未来学入門~』(ユナイテッドリンクスジャパン)がアマゾンでベストセラーに。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

     

トップニュース

2021年01月17日 07:00

『脊振の自然に魅せられて』感謝状授与と活動紹介記事(後)

 昨年9月末から、ワンゲルOBが主体となり設置を開始した。最終設置に西日本新聞のS記者が同行。S記者はスニーカーでの登山であった...

2021年01月17日 07:00

「人間の経済」を基軸に、環境問題を考察する!(6)

 「気候正義とは、気候変動は人為的に引き起こされた国際的な人権問題であり、この不公正な事態を正して地球温暖化を防止しなければならないとする考え方です。「気候の公平性」...

2021年01月16日 15:15

中洲の灯は絶えない、必ず復活する(1)意外としぶとい

 中洲を専門とする不動産業者は14日にも顧客から17件の休業申し出の連絡を受けたようだ。しかし、暗い感じはまったくない。関係者は「経験こそが財産、数億円の価値をもつ力...

2021年01月16日 07:00

コロナ禍でも今後に向けた協力を促進、九州-ベトナム関係の全面的な発展を(後)

  コロナという逆風が吹き荒れるなか、ベトナムは九州との人的・経済交流を質的に発展させるために、IC・ICT商談会やベトナム人労働者の技能向上などに注力している。ヴー...

2021年01月16日 07:00

「人間の経済」を基軸に、環境問題を考察する!(5)

 「新聞、雑誌などで地球市民(グローバルシチズン)という言葉がよく躍っているのを、読者の皆さまもお気づきのことかと思います。私たちには、特定の国・地域に限られる権利と...

2021年01月15日 18:37

【福岡県に緊急事態宣言】(8)福岡県下の主な商業施設の営業時間変更(15日時点)

 福岡県への緊急事態宣言発令を受け、対象区域内の商業施設の営業時間の変更が続々と発表されている。現時点では休業ではなく、利用者への注意を促したうえでの営業時間短縮で対...

2021年01月15日 18:16

大和エネルギー、風力発電事業から糸島市を除外

  大和ハウスグループで再生可能エネルギー関連事業を手がける大和エネルギー(株)(大阪市)は14日、福岡県糸島市二丈と佐賀県唐津市七山の脊振山系西側で計画する大規模風...

2021年01月15日 18:13

次世代のデジタルバンク「みんなの銀行」、24時間スマホで口座開設が可能に~ふくおかフィナンシャルグループ

 (株)ふくおかフィナンシャルグループ(福岡市、柴戸隆成会長兼社長、以下、FFG)の子会社の(株)みんなの銀行(横田浩二頭取)は14日、インターネット専業銀行「みんな...

2021年01月15日 16:58

関係者困惑~西日本新聞の新天町再開発記事は飛ばし!?

 2021年の元旦、福岡の地方紙である西日本新聞の一面に、センセーショナルな文字列が躍った...

2021年01月15日 16:51

前熊本市長・幸山政史氏が自伝「下手と呼ばれた男の流儀」を出版

 熊本県議、熊本市長を務めた後、熊本知事選に2度出馬した幸山政史氏がこのほど、政治家生活25年を機に、自伝をまとめた。到底書評と呼べるものではなく、読書感想文の域を出...

pagetop