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2019年11月03日 07:00

加熱する米中貿易戦争 データ覇権で遅れる日本(4) 未来トレンド分析シリーズ 

国際政治経済学者 浜田 和幸 氏

 最近のデータによれば、アメリカの大学や大学院で電子工学や石油化学関連を学ぶ学生の81%は外国人である。また、コンピュータ・サイエンスを専攻する学生の79%は外国人となっている。その大半はアジアからの留学生であり、その大部分は中国人にほかならない。

 トランプ大統領はことあるごとに、「中国による不公正貿易」を声高に非難する。しかし、アメリカ国内の産業の空洞化や教育現場の荒廃ぶりを放置してきた責任はアメリカ自身にあるはずだ。そのことを棚に上げ、中国や日本を非難し、「いうことを聞かなければ、高関税で締め上げる」というのでは、自ら墓穴を掘ることになるだろう。

 かつて日本も中国からレアアースの輸出を止められ、産業界がパニックに陥ったことがある。トランプ大統領が貿易の不均衡を是正しようとしていることは理解できる。とはいえ、「自由貿易は誤りだ。中国も日本もアメリカ市場で潤ってきたのだから、これからはアメリカでアメリカ人を雇ってモノを売れ。でなければ、アメリカ製のミサイルや戦闘機をもっと買え」というのでは、多国間貿易や相互依存の信頼関係は崩壊する。

 その行き着く先は「新冷戦」どころか「第3次世界大戦」かもしれない。トランプ大統領は「どんどん戦争をしようぜ。アメリカは勝ち続ける」と強気の姿勢を見せているが、この点に関しては、国防総省も議会も懐疑的である。日本は中国とアメリカの果てしない関税戦争や軍拡競争に振り回されず、新たな発想で途上国を味方につけ、「日米中共同プロジェクト」を推進する方向を目指すべきではなかろうか。

 たとえば、5G1つをとっても、基地局のシェアでいけば、中国はすでに4割強を押さえている。話題のファーウェイとZTEの2社で42%のシェアだ。もちろん、これは2G、3G、4Gの基地局である。これを5Gに切り替えるわけだが、ファーウェイの基地局をゼロにし、ノキアやエリクソンに変えるという作業は経費的に採算が合わない。さらに驚くべきことは、こうした基地局の設置にアメリカ企業は1社も関わっていないということだ。

 すでに5Gに必須特許に関してはファーウェイが世界ナンバーワンである。アメリカの企業はまったく存在感がないに等しい。4Gの特許に関してはアメリカ企業が若干存在していたが、5Gについてはほぼ皆無である。これではデータ通信の世界で中国が圧倒的な影響力を発揮することになるだろう。

 しかも、ファーウェイの後に付けていたノキアを猛追していた韓国のサムスンとLG電子は、昨今の日韓経済摩擦の煽りを受け、日本からの輸出規制の対象となったため、今後は5G関連のシェアはファーウェイとZTEに奪われることになる。要は、日本の対韓国制裁の結果、中国の5G覇権がほぼ決定的となったわけだ。残念ながら、安倍政権がこうしたデータ覇権の流れをどこまで理解しているのかは大いに疑問である。中国の国家的データ戦略を把握したうえで、日本として、アメリカや韓国とどのような連携プレーを展開すべきか早急に対策を講じる必要があるだろう。

(了)

<プロフィール>
浜田 和幸 (はまだ・かずゆき)

 国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鐵、米戦略国際問題研究所、米議会調査局などを経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選をはたした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任し、震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。16年7月にネット出版した原田翔太氏との共著『未来予見~「未来が見える人」は何をやっているのか?21世紀版知的未来学入門~』(ユナイテッドリンクスジャパン)がアマゾンでベストセラーに。

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