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2019年11月29日 09:27

続々・鹿児島の歴史(11)~明治維新と薩摩藩~

 日本史上において、鹿児島が最も中心となっていた時期は明治維新ですが、今回はなぜ薩摩藩が明治維新の中心たりえたのか、まとめておきます。大きく3点です。

(1)西洋列強の進出に対して、情報の収集が早く、領土への危機意識が強かったこと

(2)(1)を受けて、28代斉彬や優秀な人物を多く登用して、挙藩体制が確立できたこと

(3)財政難に苦しむ藩が多いなかで、天保の改革と呼ばれる財政改革が成功していたこと

(1)について。薩摩藩は、琉球貿易を通じて経済的な利益を上げるだけでなく、海外の情報をいち早く得ることが可能であり、西洋列強の状況など膨大な情報を収集・分析していました。これには島津氏が14世紀から海外貿易に関与し、利益を上げていた歴史的背景も関係します。また、琉球・奄美を実質的な支配下においていた薩摩藩にとっては、西洋列強の進出は領土への危機意識を煽るものであり、直接的な対応が必要でした。公武合体として全体がまとまり、西洋に対応すべきという考えに至っていました。

 また、公武合体に関しては、島津氏は、朝廷では近衛家と歴史的に深いつながりがあり、幕府とも外様大名でありながら竹姫や御台所2人(茂姫も篤姫も近衛家の養女へ)の存在もありました。斉彬の正室の英(ふさ)姫も一橋家の出身でした。

 (2)について。(1)の状況をふまえて、世界への広い視野と洞察力をもち、幕末第一の英主といわれた28代斉彬は、近代化の必要性から、富国強兵や殖産興業ともいえる事業(集成館事業 当時東アジア最大の工業地帯)を積極的に行いました。教育改革や学問振興(儒学だけでなく、国学・蘭学・洋学等)にも取り組んでいます。

 また、斉彬の後継となった久光もその遺志を継ぎ、公武合体策をすすめるとともに、藩内の意思統一に努力しました。水戸・土佐・長州等では藩内抗争や上級武士と下級武士の対立等があり、1つにまとまるのは難しかったのですが、薩摩藩では、寺田屋事件(急進派の有馬新七等を暗殺)以降は小松帯刀や岩下方平(みちひら)などの上級武士と、下級武士で誠忠組の西郷隆盛や大久保利通などを登用して挙藩体制を確立しました。登用では、調所は茶坊主から家老へ、西郷も郡方書役助から一身家老へ、といった具合です。

 挙藩体制のなかで、幕末の流れでは、当初公武合体策を進め、後に尊攘派が勢力を増すと会津藩とともに長州藩を追い込み、薩英戦争等を経て、幕府と疎遠になると薩長同盟を結び、倒幕へと動きます。世の中の状況を的確に判断し臨機応変に対応できた(少し悪くいうと損な役回りはしなかった)のも、優秀な人物を登用し、物事を多角的に見ることができたためと考えられます。

 (3)について。調所広郷による天保の改革は、有名な負債500万両を元本のみ250年賦で支払う(これには大坂商人の平野屋彦兵衛や出雲屋孫兵衛の協力があり、明治4年の廃藩置県まで続けられます)ことや、奄美黒糖の専売制(腹心海老原清煕の活躍)、琉球を通じての密貿易の他に、佐藤信淵の『薩摩経緯記』を参考にして殖産興業や商業資本の活用も積極的に行いました。

 また、薩摩藩では1/4が武士階級でしたが、軍制改革(石高に応じて兵役や武器の準備を行う改革)で軍役動員がしやすくなりました。他藩と違って武士も射撃の訓練をしており、財政的に最新の銃をそろえることも可能で、質量ともに圧倒的な武力をもっていました。調所は洋式調練等も行いますが、財政安定も念頭にあったため、斉彬からすると「不十分」「生ぬるい」と見えたものと思われます。

(つづく)

<プロフィール>
麓 純雄(ふもと・すみお)

 1957年生。鹿児島大学教育学部卒、兵庫教育大学大学院修士課程社会系コース修了。元公立小学校長。著書に『奄美の歴史入門』(2011)『谷山の歴史入門』(2014)『鹿児島市の歴史入門』(2016 以上、南方新社)。監修・共著に『都道府県別日本の地理データマップ〈第3版〉九州・沖縄地方7』(2017 小峰書店)。ほか「たけしの新世界七不思議大百科 古代文明ミステリー」(テレビ東京 2017.1.13放送)で、谷山の秀頼伝説の解説などに携わる。

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