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2019年12月03日 09:30

一帯一路と米中貿易戦争(2)

名古屋市立大学22世紀研究所特任教授、大連外国語大学客員教授、国際アジア共同体学会学術顧問、日本ビジネスインテリジェンス協会会長、元東京経済大学経営学部大学院教授
中川 十郎 氏

中川 十郎 氏
中川 十郎 氏

(8)古来、7~8世紀の遣隋、遣唐使時代を含め、1400年近くも日中は善隣友好の関係を続けてきた。一衣帯水の中国が、2013年以来、人類運命共同体として打ち出している野心的な「一帯一路」に日本も中国、アジア、ユーラシア、アフリカなど第三国で相協力して世界の平和と繁栄に協力すべきではないか。

(9)米国は中国の「一帯一路」「AIIB(アジアインフラ投資銀行)」「中国製造2025」を米国への挑戦、脅威と受け止め、対抗を強めている。そのために米国、豪州、日本、インド4カ国での「インド太平洋構想」で中国の一帯一路を包囲する戦略を推進しつつある。

 しかし11月5~10日に上海で開催された第2回中国国際輸入博覧会には150カ国から3900社が参加した。昨年からZTEや、ファーウエイなどとの取引停止を含め、関税引き上げなどで米中貿易戦争を先鋭化させている米国からは昨年の180社を10社上回る190社が参加。展示スペースもドイツや日本を抑えて、最大のスペースを占めた。

 米国は中国との貿易戦争を喧伝しているが、ビジネス面では米国企業は中国が最大の貿易市場に成長することを見込み、実質的には中国市場を重視していることがうかがえる。

 中国の野心的な21世紀の広域経済圏構想「一帯一路(BRI)」や、その融資機関でもある「AIIB(アジアインフラ投資銀行)」への参加を安倍政権は米国に同調して見合わせているが、これは時代錯誤的対応ではないか。

(10)ジャパノロジストで有名なケント・カルダー・ジョンズホプキンス大学 SAIS(戦略国際問題研究所所長)は近著 ※注2)で「中国と欧州の定期貨物輸送は2018年に往復便が1万回以上運航された。中国の急速な経済成長と市場拡大が欧州を“大陸漂流“へと向かわせている。中国のプラットフォーマーによりユーラシア全域にデジタルとIoTに駆動されるロジステイックス革命が起こっている。”スーパー大陸”の実現に米国はいかに対応すべきか」「ユーラシアで中国をバランスさせる能力のあるのはインドである。米国のバンスシング戦略の支柱はインド洋に照準を合わせた日本、インド、オーストラリアの三国だ」と強調している。

(11)世界最大の版図を誇るユーラシアは、地球上の面積の34%を占め、18%のアフリカを含めると両地域で世界の52%と過半を占める。2100年には、人口が40億となるアジアと並び、アフリカも40億人に達する。先進国は20億人で世界人口の80%をアジア、ユーラシア、アフリカで占めることになる。※注3)

 22世紀はアフラシアが世界経済発展のセンターに成るだろう。かかる観点からも、中国はアジア、ユーラシアに加え、アフリカ、東欧、中南米、北極圏にも一帯一路構築を進めつつある。中国は合わせてアフリカとの首脳会議、東欧諸国との16+1会議で一帯一路でのアフリカ、東欧との提携に努力している。

(12)域内人口6億人で急速に発展しつつあるASEAN(東南アジア諸国連合)との関係も中国は強化しており、毎年、南寧で、中国~ASEAN貿易見本市を開催し貿易拡大に努力している。11月3日に開催された代22回中国・ASEAN首脳会議では「一帯一路」構想とスマートシティ開発に関する共同声明が発出された。これにより、中国ASEAN共同体構想を本格化させる。具体的には鉄道、高速道路、港湾、空港、電力、情報通信技術(ICT)などの分野で提携を強化する。そのためにアジアインフラ投資銀行、シルクロード基金に加え、世銀、アジア開銀などの国際金融機関とのインフラ協調融資にも注力する。とくにスマートシティ開発、デジタル経済、デジタルサプライチェーンの構築、電子商取引、中小零細企業支援などに注力。2020年を「中国、ASEAN建設の協力年」とすることを決定した。(JETROビジネス短信 2019年11月21日)

 アジアには4,000万人以上の華僑、華人が住んでおり、彼らはビジネス分野で強力な地盤を形成。いわゆる目に見えない国家・中国(Invisible State of China)* 仮想現実国家・中国(Virtual State of China)*を形成しており、とくに東南アジアにおける華人、華僑の力を我々は十分認識する必要がある。(*は筆者の造語)

 一方、中国は途上国向けに光ファイバー通信ケーブルや、衛星測位システム『北斗』をアフリカを中心に建設中である。中国はモノの物流網の構築のみならず、発展途上国を中心にデジタルネットワーク網も鋭意構築中である。

 米国はこのような中国のサイバーネットワークの構築に警戒を強めている。

 中国政府はすでにBRIに3,000億ドルを拠出。今後数年間で事業費は1兆ドルを優に超えるほど膨れ上がるだろうと米国は中国BRIの動向を警戒している。※注4

(つづく)

※注2:“Super Continent:The logic of Eurasian Integration" Stanford University Press
2019『選択』2019年11月号 p11
※注3:『アフラシアの時代 2100年の世界地図』峯陽一、岩波新書
※注4:『地経学時代のインド太平洋戦略』ロバート・ブラックウイル 米国外交問題評議会上席研究員“JFIR World Review” Vol.2, 2018年12月p39

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