2024年04月20日( 土 )

【凡学一生のやさしい法律学】さくら疑獄事件(2)

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3:推薦と決定の法的関係とその責任者

 推薦者名簿の廃棄の正当理由として、招待者を決定したのはあくまで内閣府の公務員であるとの弁解が大手を振って歩いている。公務員にはもともと決定権など存在しない。あくまで決定権は主催者である総理大臣にある。公務員はその決定権の行使を総理大臣から委任されて行使しているに過ぎない。当然、その決定権行使の指針・基準は総理大臣により具体的に受任者である公務員に伝達されていなければならない。

 それらが公にされない限り、招待者の決定が適法にされたことにはならない。そのためには被推薦者と具体的な招待者の比較検討が不可欠であるから、その意味でも推薦者名簿の破棄には正当な理由など存在しない。

4:「1年未満」という定義の欺瞞性

 2年未満であれ3年未満、何年未満であれ、未満という術語が付加された期間の概念は保存義務期間概念としては無意味である。そのような用語の使用自体が違法である。

 公務員が業務上作成する文書や取得する文書がすべて「行政文書」であり、一定の保管義務があるとすることには無理・理不尽な場合があることは事実である。後になって業務の公正性や適法性を証明担保する機能が明らかに存在しない文書まで保管義務があるとすることはできない。無意味だからである。しかし、それは条理や経験則によって判断できる事項であるから、これを具体的に列挙する必要はない。むしろ、官僚が、脱法的に保管義務文書の例外を作出して文書管理法の精神を踏みにじる違法行為の横行にこそ国民は注目しなければならない。

5:今後の課題

 公務員が違法行為を行えば当然、その責任が問われなければならない。安倍政権における公務員の公然たる違法行為の横行は目に余るものがある。野党議員の追及力の貧弱さには今さらながらあきれかえるが、嘆いているだけでは何の問題解決にもならない。

 国民1人ひとりが主権者として国に損害賠償責任を追及することを本気で実行する時期がきているといえる。

 国民の、国の行政が適法適正に執行されているかを知る権利が公務員の違法行為によって阻害されたのであるから、当該公務員とその責任者・安倍晋三に対して損害賠償責任を追及できるのが法治国の基本である。国民による集団訴訟・多数当事者訴訟の提起を野党議員は率先指導する力量もないのであろうか。野党の党首のなかには弁護士資格を有する者もいるが、資格の持ち腐れであり、国民の期待を裏切るものといえる。

 当該党首が訴訟代理人となり、数万人の国民の代理人となり少額の損害賠償慰謝料請求訴訟を起こしてくれれば、政治資金寄付金の減額現象にも歯止めがかかるというものである。

結語

 最後に、内閣府の今回の招待者名簿と推薦者名簿の破棄が明確な犯罪行為・公文書管理法違反行為であることを論理的に説明しておきたい。

 招待者名簿は内閣府が各関係省庁から具体的な推薦名簿の提出を受けて最終的にとりまとめて完成させる。これは公文書管理法および同施行令から見れば、それ自体が行政文書であるから、提出した各関係各省は法令の規定通り保管をしている。その証拠が、野党議員の開示請求に対してほぼ黒塗りではあるがその存在自体、保管自体は適法に実行している。

 これは大局的には本件招待者名簿が各省庁の共同連絡業務によって完成した行政文書であることを意味し、その保存期間は同施行令別表によれば、行政文書の内容が、
「複数の行政機関による打ち合わせ又は・・(中略)・・示す基準の設定及びその経緯」であれば、第八項のイ、ロ、ハに具体的に定義された文書に相当し(保存期間10年)、さらに招待され飲食等の無料の接待を受ける利益を「個人または法人の権利義務の得喪及びその経緯」と解釈できることから、第十、十一項にかかる行政文書に該当する(同5年)。

 以上の法令の具体的規定内容からも明らかなように、内閣府一人が勝手な保管基準を策定し、公文書管理法および同施行令の規定を無視し違反する行政文書の破棄を行ったものである。なお、公文書管理法等に違反する行政文書の違法な破棄は当然ながら、刑法上の公文書毀棄罪を構成する。

(つづく)

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