わらび座ミュージカル「ジパング青春記」特設ページ
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2019年12月08日 07:00

【事業継承の教訓】ザ・クイーンズヒルゴルフクラブ裁判から何を学ぶのか(後)

4:天才的な不動産企画の能力を持つ故・田原學氏~しかし、ここ一番運がない(気配りにかけては天下一品)

 故人の気配りは持って生まれたものである。取引を始めて「こいつは気にいった」とほれ込むと徹底的に取引額を増やしてくれる。ある広告代理店の社長が感謝の弁を述べる。「ソロンさんの絶頂期には大手の同業者が新規取引懇願に押し寄せてきた。それでも浮気をせず、弊社との取引を継続してくれた。弊社の売上の60%を頼っていた」ここまで仕入れ先を大切にする経営者も珍しい。

 気配りの天才も時には不運に見舞われる。ソロンの前商号は「地産建設」だった。信じられないことだが、同社は一度、宅建法違反で処分を受けたことがある。それからさらに気配り、配慮を行うようになっていった。その結果ではないのかもしれないが、昭和58年(1983年)に大分でゴルフ場買収のチャンスをつかみ「多角化の見本」と称賛された。

 このゴルフ場買収による成功が、後のザ・クイーンズヒルゴルフ場のオープンへとつながる。一説では120~140億の投資をしたと言われており、親会社であるソロンからの莫大な資金提供があったとされる(ピーク時には80億円とも言われている)。ゴルフ場との資金関係を分離していたならば、親会社倒産という不幸から脱却できていただろう。

 ゴルフ場新設の投資資金をゴルフ会員権の売却で100億円でも調達できていれば別の展開があったかもしれないと惜しまれるが、そこまで販売能力が無かったのだと言われれば仕方がない。ここで強調したかったのは故人の経営能力は天才的だが、ここ一番での運がなかったということである。

故人によって再起をはたした柴山社長

 平成2年の秋、バブルが弾ける直前のことである。西日本互助会という会社があった(現在のラック)。この会社は八仙閣の斜め前(博多区博多駅南)に小型結婚式場「まいづる苑」を運営していた。この300坪足らずの土地を故人は坪2,600万円を下らない値をつけて手にした。

 平成2年9月を境にして不動産価格はつるべ落としのごとく下落した。その後のソロンは不動産含み赤字に頭を痛めた。

 一方のラックはというと、ちょうどその時期、内紛が勃発したこともあり、柴山社長は四面楚歌状態だったが、この「まいづる苑」を売却したことで抱えていた借金を一掃できた。そこで博多区住吉に建て貸しの結婚式場(RITZ5)をオープンさせた。柴山社長はまたまたツキに恵まれた。持ち主が倒産したのである。

 即座に1200坪の土地・建物を購入した。現在、手堅く見積もっても70億円の値が付くようである。この不動産を1つ売ってもラックは無借金になるのだ。会社財務に貢献できるすごい資産である。「不動産にツキにつく経営者」とはラック・柴山社長のことである。

大量のマンション売り切りで急場をしのぐ

 平成初頭の事業拡大(不動産購入・抱え込みによる含み損)による補てんはマンションを売りまくることしかない。大型マンションで街を大変貌させて得た利益で借金返済に充ててきた。その成功の一例が福岡空港東部に位置する丘陵部に大型マンションの供給を行ってまちづくりを成功させたことである。地元の人たちは「狸がでていたこの青木(地名)の山(丘)にこんなモダンな街が出現するなんて信じられない」と感嘆の声をあげる。

 この手法で新たなマンションタウンを創出していた。長崎市稲佐山西部に福田という集落がある。この集落は直線距離にすれば、長崎駅からさほど離れていない。要は道路整備が遅れていたのである。「稲佐山の下をトンネルが貫通する」ことを耳にした故・田原社長は勝負できると判断したのだろう。間髪入れずに故人は現地へ飛んだ。そして岬の突端を破格の安値で買い占め、7棟660戸のマンション集落を生み出した(ユニカとの共同事業)。長崎駅から車で15分。夕方、東シナ海に太陽が沈む光景はまさしくドラマチックだった。

 このように各地に大型マンションによるまちづくりを創出してきた。不動産開発に天才的な能力を発揮し続けてきたが、やはり時には在庫も発生する。1年で1000戸供給することもあったが、含み損を抱えて借入一掃までには程遠い状態。財務改善の打開には至らなかった。加えること前述のザ・クイーンズヒルゴルフ場の会員権返還延期の交渉問題が生じた。

 さすがの田原氏も打つ手に失敗が目立ってきた。2008年のリーマンショック前後には売上も鈍化してきた。ピーク時には860億円あった借入が簡単に減るわけがない。金融機関はついに内整理への移行を決断したのである。最終的にはALSを発病し、完全に身動きがとれない状態になってしまった。やはり田原學氏は長期的にみると運がなかったと言わざるを得ない。

5:事業継承の結論

(1)実子である司氏と學氏のように憎しみあう状態になった場合、親が元気なうちに生前贈与を行って縁を切ることである。非情かもしれないが、親が寝込んでしまっては今回のようにわがまま放題、好き放題にやられてしまう。母親も弟も兄貴の横暴さには終始、無抵抗だった。

(2)早い段階で身内に継承させるか、またはさせないか決定することである。田原社長の場合、「莫大な借り入れを抱えて休息をとる間もなくマンションを売り続けることは息子には無理。また困難な経営状態でバトンタッチさせるのは親の沽券にかかわる」と事業継承を躊躇したのだろう。そのうち、司氏の常識外れの行動が目に余るようになってきた。

 身内に事業継承をしないと決めていたならば、早目に企業売却するという選択肢もあったと思うが、この見解は評論に過ぎない。

(3)事業継承がスムーズにいくには、そのスキームを確立させる必要がある。起業家型からストックビジネス型、ないしは業界のある程度の事業規模を押さえるなどの実績が核心となる。

 前述した「後継者が十分に事業継承しているという実例は2代目、3代目が能力を発揮できるインフラが整備している」ことが成功条件のようである。

 また人の上に立つための常識を植えつけることも大切な条件だろう。

(4)結論に至らず。司氏がどうもザ・クイーンズヒルゴルフ場の経営権を握った模様。なかなかの策士である。この件はいずれ詳報することを約束してこのシリーズを終える。

(了)

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