2024年04月26日( 金 )

「糸島野菜」を採用する益正 素材への探求と新規事業

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(株)益正グループ

仕入れ先は「糸農」

 1996年4月の設立以降、福岡県内でさまざまなジャンルの飲食店を展開する(株)益正グループ。『すべての「食事」にイノベーションを。』をコンセプトに、常に進化を求めている同社が現在、食材として着目しているのが「糸島野菜」だ。

 同社が運営する野菜カクテルバーやレストラン、カフェなどの個性豊かな店舗では、糸島野菜を使用したメニューが並ぶ。今や“ブランド糸島”として、福岡市近郊はもちろん、首都圏でもその名を知られつつある糸島野菜だが、同社が使用するのは、主に糸島農業高校(以下、糸農)から仕入れたもの。校舎の周りに畑が広がる糸農では、生徒たち自らが野菜を栽培。収穫から販売、さらには加工まで行っている。たとえば、糸農の食品科学科が開発・製造した「糸農ソース」は、同校で栽培された玉ねぎを使用し、知る人ぞ知る“幻のソース”として長きにわたって愛されている逸品だ。

 糸農で栽培される糸島野菜は、色も鮮やかで、野菜の濃厚な旨みが特長。旬を迎えた野菜の収穫の連絡を受けると、シェフも務める同社常務取締役の草野雅彦氏が、仕入のために自ら糸農まで車を走らせるほどの惚れ込みようだ。

糸島農業高校、校舎の周りに広がる畑
糸島農業高校、校舎の周りに広がる畑
糸島農業高校で収穫した野菜
糸島農業高校で収穫した野菜

 

ケータリングでも糸島野菜

ケータリングの様子
ケータリングの様子

 益正グループのなかで、最も勢いがある事業の1つが「ケータリング事業」だ。たとえば、19年に福岡で開催された国際会議における1,000名規模の野外イベントで、同社のケータリングが採用。海外からのゲストも多いなか、日本料理はもちろん、多国籍料理のケータリングでおもてなしを演出し、大いに好評を博した。また、LINE Fukuokaの5周年記念パーティーでは、フルーツタワーでキャラクターに合わせた演出を実施。フォトブースも設けるなど工夫を凝らし、会場を大いに盛り上げた。

 同社のケータリングサービスは、シェフがその場で調理するライブパフォーマンスなど、シーンやコンセプトに合わせた“魅せ方”に定評がある。また、好評なのは演出だけではなく、食材に糸島野菜を使用するなど、場所を選ばずに一流の味を提供できるのも強みだ。

ミールキットと新業態

 「食事の創造」を追求する益正グループは18年12月、佐賀県みやき町に独自の真空調理ミールキット(個食レトルトパック)を製造する工場を新設した。レトルトパックは常温保存可能で賞味期限も長く、ほかの保存食に比べて流通にも向いている。災害時の非常食としても役立ち、さまざまなニーズに対応可能だ。現在、ハンバーグや野菜など約35種類を製造。それぞれを組み合わせてアレンジすることで、レパートリーも豊富になる。

 このミールキットを生かして、新業態となる「間借りランチ」も開始した。これは、営業時間外の飲食店を間貸ししたい人と、間借りして飲食業を始めたい人をマッチングし、間借りする飲食店向けにはミールキットを販売するものだ。19年11月27日には、間借りランチ第1号店として、カレーとハンバーグの店「toypoランチ天神店」がオープンした。

 すべての「食事」にイノベーションをもたらすべく、食材にこだわり、さまざまな事業を展開する同社の挑戦に期待したい。

【松本 悠子】


【草野シェフに聞いた!】

草野シェフ
草野シェフ

糸島野菜について―

 約15年前に、私の知人が糸島で無農薬野菜をつくっていることを聞いて足を運んだのがきっかけです。そのときに見た、大きく育った色鮮やかな野菜に、たちまち魅了されました。そこでは、無農薬野菜の収穫に関する研究に取り組まれていて、約8年間、仕事の合間に訪れては、勉強させてもらいました。また、(有)緑の農園(糸島市)からは卵を生産する養鶏を教わるなど、食材へのこだわりが強くなるにつれ、糸島との関わりは深くなっていきました。北は玄界灘に面し、南には脊振山地があり、対馬海流の影響で温暖な気候に恵まれた平野で獲れる糸島野菜は、野菜本来の味が濃く、旨みがあります。いずれは、京野菜に負けないくらいの強固なブランドを築くと思っています。

ケータリングについて―

 ケータリングというサービスを知ったのは、見習いとしてホテルに勤めていた約30年前のことです。その後、自身のシェフ経験のなかで、独自のケータリングスタイルを確立していきました。2004年の入社後も、ケータリングサービスは行っていましたが、16年に福岡市場でもケータリング需要が高まってきた情報をキャッチしたことで、本格的に事業としてスタートさせました。今では大手企業から個人宅、学校や病院関連など幅広い層の顧客を獲得し、リピート率も93%と高く、福岡県内のケータリング市場でトップシェアを誇っています。

ミールキットについて―

 現在、2種類の完全無添加のミールキットを阪急百貨店で販売しています。一般的にレトルトは「便利だけど体に悪い」「栄養素が損なわれる」「添加物が多い」などのイメージをもたれがちですが、その概念を払拭したいという思いで、完全無添加で自然由来の味の商品化に向けた研究開発を続けています。今後、糸島野菜をブイヨンで煮たものに、魚介や肉のダシを入れるなどして基礎調味料をつくり、そこから新しいジャンルの加工品を生み出す構想もあります。工場ができて約1年、ここからどんどんと進化を図ります。

<プロフィール>
草野  雅彦(くさの・まさひこ)

(株)益正グループ常務取締役 商品開発研究室長
 福岡市出身。1986年3月に福岡大学法律学部経営法学科を卒業後、同年4月より(株)博多全日空ホテルで洋食調理に従事。92年10月に渡仏し、本場のフレンチを学んだ。帰国後の93年12月から2004年5月まで、父親の会社である(株)ばん 海幸グループで勤務。04年6月、(株)益正グループに商品戦略室室長として入社し、現在は常務取締役商品開発研究室長を務める傍ら、現役のシェフでもある。11年、日経レストランメニューグランプリ金賞(デザート)に輝くなど、多くのコンテストで高い評価を得ている。

<COMPANY INFORMATION>
代 表:草野 益次
所在地:福岡市中央区赤坂1-4-27
創 業:1993年11月
資本金:5,000万円
URL:http://www.masumasa.jp

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