2024年04月24日( 水 )

日本版「#MeToo」裁判~女性蔑視・男尊女卑の日本社会(8)

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 日本の法律学や法理論が似非科学という意味は、それが、権威主義的論理体系であるということである。そして、その一番解りやすい事象が、難解な専門用語で素人に説明することである。本件事件の不起訴処分・検察審査会をめぐる現象にそれが見事に現れている。

 ヤメ検弁護士はネット上で、追加的に検察の不起訴処分について検察審査会が不起訴相当の決議をした事案については同法32条により再度の審査請求ができないことを解説した。その際、それを法律用語では一事不再理ということは解説したが、一事不再理がどのような場合に認められる法原則かまでは説明しなかった。このような解説がまさに権威主義的説明であることはいうまでもない。

 また、ヤメ検弁護士は、再度の告訴・告発は当然認められるものを、あたかも不起訴処分後の新たな証拠の出現などによる事情変更の可能性を理由に、検察は先の不起訴処分に拘束されないから、新たに公訴提起ができ、専門用語の再起という術語を使って拘束されないことを説明した。もともと検察の不起訴処分に対世効的羈束力がある規定と論理は存在せず、無条件に再度の告訴告発が認められるのであって、これまた権威主義的説明の典型である。

 問題は当然、再度の告発告訴が不起訴処分となる蓋然性は高く、実行されもしない「再起」の規定を説明するところが、権威主義的解説論理の真骨頂である。

 筆者は前稿で、検察審査会の審査員に求められている権能・業務は、純粋に市民感覚に基づく事実認定、犯罪要件事実の認定であると説明した。本件事件では、加害者が性行為自体は否定しておらず、合意の有無が争点となっている。しかし、審査員の多数は、合意の存在を認定した。それが不起訴相当議決の具体的意味である。もしかすると審査員がその本質的意味も知らず、理解もしていないのかもしれない。

 議事録の公開も議決書の理由も公開されていないから、この理不尽な議決の理由を検察審査会法の条文にその原因を求めることとする。

 第三十九条の二 検察審査会は、審査を行うに当たり、法律に関する専門的な知見を補う必要があると認めるときは、弁護士の中から事件ごとに審査補助員を委嘱することができる。

○2 審査補助員の数は、一人とする。

○3 審査補助員は、検察審査会議において、検察審査会長の指揮監督を受けて、法律に関する学識経験に基づき、次に掲げる職務を行う。

一 当該事件に関係する法令及びその解釈を説明すること。
二 当該事件の事実上及び法律上の問題点を整理し、並びに当該問題点に関する証拠を整理すること。
三 当該事件の審査に関して法的見地から必要な助言を行うこと。

○4 検察審査会は、前項の職務を行つた審査補助員に第四十条の規定による議決書の作成を補助させることができる。

○5 審査補助員は、その職務を行うに当たつては、検察審査会が公訴権の実行に関し民意を反映させてその適正を図るため置かれたものであることを踏まえ、その自主的な判断を妨げるような言動をしてはならない。

 以上の条文が全くの虚偽内容であり、現実にはあり得ない内容であることを知る者は実際に審査員を体験した市民と、審査会の事務局員・事務局長を務める裁判所職員である。

 まず、無作為で抽出された一般市民に、審査員の基本的責任業務が、犯罪構成要件事実の認定であることだけを正確に事前に説明しておけば、本件事件において、弁護士である審査補助員を委嘱する必要は全くない。しかし、それでは審査会の議決を誘導して統制することはできないから、現実には必ず補助審査員の弁護士が1人選任されている。

(つづく)
【凡学 一生】

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