2024年04月29日( 月 )

日本版「#MeToo」裁判~女性蔑視・男尊女卑の日本社会(9)

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 しかし、条文ではこの間の事情がまったく隠蔽され、あたかも、検察審査会が主体的に補助審査員を委嘱するかの如き文言となっている。法律的には何の知識もない集団として形成された裁判体であるから、そもそも弁護士委嘱の必要性を判断すること自体が不可能である。

 さらに、弁護士補助審査員の業務の内容に至っては、純然たる事実認定とはまったく次元のことなる業務規定となっている。

 同条第三項第一号 事件に関する法令と解釈の説明

 同上第三項第二号 (事件の)問題点の整理と証拠の整理

 本件事件は準強姦罪事件であるが、法令とその解釈は不要である。告訴状には告訴事実として被害者が泥酔状態で合意のない性行為を強いられた旨が記載されており、また関係条文も表示されている。関係資料とともにそれが審査員に提示されれば必要十分である。当然、加害者の弁解である、合意の存在を主張する検察官面前調書が添付されていなければならない(司法警察員の面前調書は異例の逮捕状不執行という事態から見て員面調書は作成されていない)が、これも読みさえすればとくに解説・整理の必要はないはずである。

 同上第三項第三号 審査に必要な法的観点からの助言

 これがもともと審査員の基本的業務が、犯罪構成要件の事実認定であることが事前に説明されておれば、まったく不要であることは明白である。

 結局、検察審査会はその目的と機能が、条文上も正確に担保されておらず、選任された一般市民がまったく何も知らされないで、操り人形のごとく取り扱われる仕組みとなっていることが条文上からも推察できる。

 だからこそ、基本体に不要な弁護士の補助審査員が「奇妙な」委嘱行為のもと、選任されている。弁護士があらゆる多様な事件について必要な助言ができるはずもないが、なぜか弁護士であり、かつ1人という規定になっている。もちろん、弁護士として誰に委嘱すればよいかなど、まったくの素人の審査員に判断できるはずもなく、条文自体が実行不可能な文言で記述されている。これが、審査員が操り人形である実態を図らずも露呈している。

 弁護士の補助審査員が実際にどのような説明や助言を行ったかこそが、審査員の多数が「犯罪事実はなかった」ことを意味する「不起訴相当」の議決をした理由であり、議決書に記載されなければならない理由である。それらが完全に秘密となっている現状の検察審査会の業務執行は、近代国家の民主主義的刑事司法手続きからはとうてい容認できない違法かつ犯罪的刑事手続き・不正手続という他ない。憲法の保障する適正手続違反であることは明白である。

 なお、本件議決書には議決書を作成した補助審査員たる弁護士名も黒塗りで隠蔽されている。何から何まで隠蔽された議決書に真実や正義が存在すると考えることが文明基準に反するもので、検察、そしてそれを是認する管轄裁判所が一体となって、社会不正義を行っていることは明白である。

 国民の目となり耳となることを自負する報道関係者には真実を見る目をもってほしい。自分が審査員になっても「合意はあった」と認定するかどうかの問題として考えれば国家権力の不正は自ずと見えてくるはずである。

 権威主義的論理体系は実は受け手側の権威に対する全面的な盲目的依存が不可欠である。

 現在の日本で国家権力が権威主義的刑事手続きを執行できていることは受け手である国民、その実際の担当者である報道関係者の権威への盲従がある。実際の被害者はあくまで非力な一般市民であることを報道関係者には強く自覚してもらいたい。

(つづく)
【凡学 一生】

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