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2020年01月08日 10:00

「社長が注目する経営者」はワークマンの小濱氏とアイリスオーヤマの大山氏(後)

ホームセンター向けプラスチック用品で次々とヒット

 大山健太郎氏は立志伝中の人物だ。日本経済新聞に16年3月に連載した『私の履歴書』を要約する。大阪府布施市(現・大東市)で在日韓国人2世である大山祐氏の男5人、女3人の8人兄弟の長男に生まれた。1964年父が急逝したため、19歳で家業のプラスチック成形工場の大山ブロー工業(東大阪市)を引き継いだ。学友たちが学生生活を謳歌している姿に悔し涙を流した。その時の悔しさがハングリー精神となった。必死に家族を養い、下の弟たちを大学まで進学させた。

 このまま下請の町工場で終わりたくない。プラスチック製の養殖用ブイや農業向け育成箱をつくった。これが軌道に乗り、東大阪の工場が手狭になり、仙台に新工場を建設した。27歳のときだ。

 73年の石油ショックで、石油がなくなるという恐怖感からプラスチック製品が飛ぶように売れた。仙台の新工場はフル稼働。しかし、石油価格が反落すると、プラスチック製品が売れなくなり、在庫の山。手形が落とせず、倒産寸前に追い込まれた。東大阪の工場も売却して借金の返済に充て、150人いた従業員のうち半分は辞めてもらった。一番辛いときだ。

 何の製品で再建するか。大山氏が目をつけたのが園芸用のプランター。ホームセンターに持ち込んだ。するとDIY(日曜大工)以外の新しい商材を求めていたホームセンターが飛びついた。81年からプランターや、簡単に巻き取れる水まきのホースなどの園芸用品を発売した。

 87年に発売したプラスチック製犬小屋は当たった。88年に発売した家庭用のプラスチック収納用品も大ヒットした。アイリスはホームセンター向けのプラスチック製品のメーカーとして急成長を遂げていくことになる。

いつまで株式非公開を貫けるか

 アイリスは究極の同族経営である。健太郎氏は、若い頃亡くなった次男を除き、ほかの3人の弟を経営陣に招いた。商社マンだった三男・富生氏が専務、博士号を持つ技術者の四男・繁生氏が常務。理系出身の四男・秀雄氏が取締役だ。兄弟の絆を守るために、株式を公開するつもりはない。

 大山氏は、日本経済新聞に連載した『私の履歴書』で、こう書いた。

 〈当社は株式を公開していない。何度もお誘いを受けたが、お断りしてきた。私にとって大事なのは、事業内容よりも「創業の理念」がきちんと引き継がれることだ。そのためには血のつながった人間による「株式非公開の同族経営」が一番いいように思われる。

 (中略)株式公開すれば創業者利益を手にできるのだろう。しかし志を曲げ、自由に指揮できなければ意味がない。トップに大事なのは高い志とそれを実現するリーダーシップだ。株式公開は弊害が大きい。当社の上場は当分ないだろう〉

 父親から事業を引き継いだ大山晃弘氏は家電事業と海外攻勢に経営の舵を切る。19年は総合家電メーカーの礎をつくる年だった。非上場企業のため詳細な財務内容はわからないが、19年12月期のグループ売上高は前期比18%増の5,600億円を見込む。

 目標は2022年の売上高1兆円。ホームセンター向けのすき間ビジネスから脱皮し、家電というグローバル商品で勝負をかける。それに必要なのは資金だ。非上場をいつまで続けることができるか。株式公開決断の時が訪れる。

(森村和男)

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