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2020年01月07日 16:49

創業100年企業の遠忠食品 「三方よし」の精神が長寿企業の秘訣(1)

遠忠食品(株)代表取締役 宮島 一晃 氏

 1913年に東京・深川住吉町に初代の宮島忠吉氏が創業した遠忠食品(株)(当時の遠忠商店)は、創業100年企業だ。現在は、3代目の宮島一晃氏が代表取締役社長を務めている。同社は、時代の波にのまれず、独自の製造方法を残しながら、売り手も買い手も満足し、世の中のためになる社会貢献や地域繁栄の視点を忘れない。

大正2年に惣菜屋として創業

直営店舗の「遠忠商店」
直営店舗の「遠忠商店」

 1913年(大正2年)に初代の宮島忠吉氏が、遠州(現・静岡県)から上京し、東京・深川住吉町に、佃煮や惣菜を製造販売する遠忠商店(現・遠忠食品(株))を創業した。深川の町にある惣菜屋として、朝早くから豆や野菜を使った惣菜をつくり、湯気が立っているものを測り売りしていた。

 当時は、千葉の浦安から東京にきたアサリ売りや野菜売りが、遠忠商店に惣菜を買いにきて、浦安に持ち帰って販売していたという。佃煮は、生鮮食品を長持ちさせる保存食のため、たくさん獲れた魚を日持ちさせるためにも活用されてきた。

 1945年に現在の日本橋蛎殻町に本社を移し、1948年に称号を遠忠食品(株)に変更した。現在は、3代目の宮島一晃氏が代表取締役社長、一晃氏の弟が工場長を務めている。戦後は食料が少なかったため、つくれば売れる時代だった。築地市場で業務用として佃煮や惣菜を販売し、問屋を経由して商店街の小売店や飲食店など広く販売していた。今ではコンビニやスーパーが普及したため、街の食品関連の専門店が壊滅的になってきている。2010年から直営店として遠忠商店を開き、消費者に佃煮や惣菜の直接販売を始めた。専門的に差別化した商品ラインナップで、商品が確立することを目指している。

 今は米の消費が減っており、つくるだけでは売れない時代のため、さまざまな工夫をしている。ご飯に載せて食べる佃煮の販路拡大では、十数年前から危機感を感じてきた。そのため、自社で製造・販売するブランディングを強化している。土日には、生産地で消費する地産地消のマルシェに出店し、消費者に試食してもらい納得して買ってもらう方法で販路を広げている。

漁業が抱える課題は海苔やアサリの不漁

 遠忠食品のメイン商品は、海苔の佃煮だ。海苔は日本の広い範囲で生産されているが、主に江戸時代からの名産地である木更津で海苔を養殖している漁師から、仲介を通さずに直接海苔を仕入れている。

 昨年は海苔が半世紀ぶりに不作だった(2019年5月17日付日経新聞朝刊)。漁師の高齢化や漁業後継者が育ちにくい現状、異常気象など、海苔の生産にはさまざまな課題があるといわれている。また、海苔は海の栄養で育つ。近年は下水の処理能力が高くなり、海に流れ込む栄養分が少なくなったことも原因だといわれている。瀬戸内海では、下水処理能力の向上による海の栄養分の低下を補うため、下水で栄養分を取りすぎずに流しているところもあるという。

 代表取締役・宮島氏は地元の漁師の集まりに足を運び、漁師の話を聞いている。「昔から漁師がよく話している、環境が良く魚がたくさん獲れる豊かな海を目指したい。近年花粉症が増えているのも、林業の現状とつながっている。手入れの行き届いていない森林が増えているからではないか」と宮島氏はいう。

 また、遠忠食品の江戸前の佃煮で使うアサリは、以前は東京湾で採れたものを使っていたが、「ここ最近は全国的にアサリがいない。東京湾では何年も採れていない」と宮島氏は話す。漁師にとってアサリは春先の稼ぎ口で、アサリ漁が終わると海苔の養殖に移る。だが、アサリが採れないため、年間収入に大きく響いている漁師も多いという。赤潮など海の養分の問題の他に、東京湾岸沿いには火力発電所が10カ所以上あり、温水を流しているため、海の水温が上がり、アサリが住みにくくなることも不漁の原因だという話も聞く。

 ハマグリも全国的に不漁だ。行徳の漁師から宮島氏は相談を受け、ハマグリに似た「ホンビノス貝」を佃煮にし、販売先に提案した。ホンビノス貝は、米国東海岸が原産でクラムチャウダーなどの料理に使われる。今ではホンビノス貝の需要が増え、供給が間に合わないほどになり、アサリが不漁でも漁業を継続することができたという。

(つづく)
【石井 ゆかり】

<COMPANY INFORMATION>
代 表:宮島 一晃
所在地:東京都中央区日本橋蛎殻町1-30-10
設 立:1948年3月
資本金:1,000万円
売 上:(19年/12月期)2億2,000万円

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