2024年03月29日( 金 )

【福岡市政インサイダー】防衛省への個人情報提供、だいじょうぶかぁ?

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福岡市が自衛官募集のために住民情報を防衛省に提供する方針を発表

 明けましておめでとうございます。福岡市役所の「不協和音」職員でございます。今年も、この世界(市役所)の片隅で、ひそやかに、歯に衣着せずに異論を唱えていきたいと思います。

 といったところで本題。

 福岡市は、今年4月から自衛官募集のために18歳前後と22歳前後の住民情報を紙や電子データで防衛省に提供する方針みたいなんだけど、大丈夫かね、これ。

 このネタを最初に報じたのは産経新聞。昨年12月29日付(デジタル版)に「自衛官の新規募集をめぐり、福岡市が防衛省に対象者名簿の一括提供を行う方針を固めたことが29日、わかった。」って書いてあったんだけど……おお、さすが政権べったりの産経新聞。御用新聞の面目躍如って感じだね。

 まぁ、市にも「〈頭出し〉の時には、好意的なトーンで書いてほしい」とか、いろいろ思惑があったんだろうけど、特定の社にだけリークするのはどうかと思うぞ。うん。(註:頭出し=概要説明、第一報的な意味合い)

 で、年明けて1月6日の定例記者会見なんだけど、そりゃ、他社から質問もでるわな。


〈福岡市HP 1月6日市長会見より〉

(前略)

 記者= あと、いろいろな自治体で少しずつですけれど、名簿提供の動きもあるんですけれども、一方で、法的、その情報を提供することへの法的根拠が非常に曖昧だという声もあってですね、そのあたりは、一応、審議会にかけられるわけですけれども、どのようにお考えですか。

 市長= 一応ってやめてもらえます。一応ではなくて、こうしたものにしっかり諮ってですね、当然、法律的には、より個人情報の保護というものが、(対象者を抽出することにより)必要ない人の情報を見せる必要がなくなりましたので、よりそうしたものに関しては、必要な情報のみを提供できる体制によりなったと思っていますし。またそのうえでも、さらにそれをお渡しすることについて、これはそうした審議会に諮って、手続きをしっかり経てですね、これは大丈夫というようなかたちになれば提供するということになります。

(中略)

 記者= 審議会にかけるということですけれど、今の現在、福岡市の個人情報保護条例では、ものの提供、電子媒体とか、紙媒体の提供までは求めていないと見ることもできるという解釈が市の当局として、それまではあったのではないかなという理解だったんですけど、それはそうではなくて、今後は、ものの提供までできるような流れになっていくということなのでしょうか。

 市長= まあ、そうですね。要するに、結局、同じことで、それを紙で書き写すという、この時代にですね、それだけの公務員の人件費をかけて、これ当然、市民全員分を書き写す、市民全員というか、対象の何千、何万という人を全部手作業で書き写すというのを今の時代にですね、それをやるというようなことは。結局でも、今度のシステムでは、その必要な人の分だけ、そのまんま出てきますので、それを要するに、その場で書き写すことは、すでに今でもできるわけですね。それを同じものを間違いないかたちでの提供をすれば、それだけ時間も短く済むし、それ以上の個人情報が何かそれをすることによって漏れるという話ではありませんので、それは実質変わりないと思います。が、ただ当然、審議会にお諮りをしてですね、念には念をということで、しっかりそこは確認をしたうえで、そういう方針が出ればですね、その方向で進めていきたいということです。

 記者= 諮問はいつ頃行うスケジュールになるんでしょうか。

 市長= この4月までには、行うスケジュールだと聞いています。

 記者= すいません、今のに関連してなんですけど、4月までに諮問が正式に認められればなんですが、4月以降から。

 市長= 新年度スタートとかね、多分そういう切りの良いときにスタートするんじゃないですかね。

 記者= (それ)を目指しているということで、よろしいですか。

 市長= そうですね。

(後略)


信のおけない政府機関に市民の個人情報を渡すのは反対!

 いやぁ、これだけ前のめりなのに「これはそうした審議会に諮って、手続きをしっかり経てですね、これは大丈夫というようなかたちになれば提供する」なんて言われてもねぇ。

 断言するけど、4月から提供しますよ。福岡市は。ええ。仮に、審議会がNOと言ったとしても、審議会は、あくまで諮問機関であって、最終的には市長が総合的に判断しますから。
(「総合的に判断」= 結局は、市(市長)のやりたいようにやるということ。~福岡市役所版『悪魔の辞典』より)

 ところで、会見のなかで市長は、「防衛省は、今までずっと手書きでせっせと市民の個人情報を書き写してきたんだけど、どうせ情報は渡しちゃうんだし、手間かけないほうがお互いのためでしょ」みたいなこと言ってて、「それもそうかなぁ」なんて思っちゃいそうだけど、でもちょっと待って。これ、おかしくない?

 福岡市の18歳の人口が約14,000人で22歳の人口が17,000人。合わせて30,000人は超えるんだけど。これを市民全員の台帳から抜き出して転記するって、本当に手作業でやってるの? 1人について検索して転記するのに1分で済んだとしても30,000分=500時間。1日7時間作業したとして約70日。7人で作業しても10日仕事だよ?

 今使ってる住基システムって、表示件数に制限はあるけど、住所・名前・生年月日で検索できるんだから、たとえば「平成13年4月2日生まれの人」みたいに検索して、結果を画面コピーして印刷すればいいだけの話なんじゃないかなぁ。書き写すって言っても、場所も確保しないといけないし、職員も立ち会わなきゃならない。あらかじめ印刷しておいて、ほいって渡す方が、絶対簡単。基本的に福岡市は政府に協力的な自治体なんだから、オフィシャルにどうかは知らないけど、紙のデータは渡していると思うよ。もちろん、データがあったほうが、郵送にはすごく便利なんだけどね。

 それから、そもそもの問題なんだけど、俺は防衛省の文書管理には一抹の、ってゆうか一方ならぬ不安を感じてるんだよね。

 だって、公文書管理の総本山・内閣府でさえ、「桜を見る会」の招待者名簿を行政文書の管理簿に記載しないという重大な法令違反を犯していたし、いわんや南スーダンPKO日報隠蔽でおなじみの防衛省においてをや。

 隠蔽改竄が染みついた政府の文書管理体制を信用しろっていうほうが、無理あるんじゃないかな。

 例の「桜を見る会」の名簿の保存期間は、個人情報がどーたらいう理由で1年未満になっているんだから、市民の個人情報も「桜を見る会」の名簿と同じように、保存期間1年未満で電子データもバックアップも含めて、びっくりするくらい完全に廃棄してほしいもんだね。

 市も「防衛省から言われたから個人情報を出します」っていうんじゃなくて、提供した個人情報がどう扱われるのかをきちんと確認してから出すべきだと思うぞ。で、「自衛隊の募集案内発送後に直ちに廃棄しないなら、情報提供はお断りします」くらい言うべきじゃないかな。

 何にしても俺は、信のおけない政府機関に市民の大切な個人情報を渡すのには反対なんだけど、総理の忠犬ソウイチロウさんは、尻尾振って、市民の個人情報を政府に渡すんだろうな。やれやれだぜ。

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