2024年04月23日( 火 )

LNG時代の到来と韓国の造船産業(前)

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日韓ビジネスコンサルタント 劉 明鎬 氏

 二酸化炭素の排出による地球温暖化の問題が深刻になってきたため、近年、石炭や石油の代わりに天然ガスを使うことが多くなってきた。天然ガスの主要生産国はカタール、豪州、ロシア、米国などである。

 生産された天然ガスを貯蔵する方法には、天然ガスを圧縮して保管する圧縮天然ガス(CNG)と天然ガスを液化して保管する天然液化ガス(LNG)の2種類がある。

 天然ガスを移動させる際は、パイプを使うか、船を使うことになる。船で天然ガスを運ぶ時には気体のガスを液化して運ぶ。天然ガスをマイナス162度で液化すると、ガスは気体の状態から液体化され、体積も600分の1になる。そのため大量の天然ガスを運搬する際は、ガスを液化して運ぶことになる。この液化された天然ガスを天然液化ガス(LNG)という。天然液化ガスには、気体を液体にする液化設備と液化ガスを気化する気化設備が必要になる。

 今回は天然液化ガス(LNG)を運搬する「LNG船」について取り上げてみよう。

 LNG船には大きく2つのタイプがある。1つは球のようなかたちをしている「モスタイプ」、もう1つはフラットな「メンブレンタイプ」である。モスタイプは安定性に優れている反面、余分な空間が多い。一方、メンブレンタイプは、無駄なスペースがほとんどなく、船を大型化しやすいという特徴がある。

 1990年代までLNG船といえばモスタイプが主流だった。韓国の現代重工業も1980年代にノルウェーのモス社から技術を導入するかたちで、LNG船の建造をスタートさせている。しかし、その後、フランスのGTT社の技術開発により、メンブレン方式が誕生すると、大宇、サムスン、韓進など、韓国の他の造船会社は、このタイプを採用した。

 2000年代になると、メンブレンタイプの安定性と経済性が世界で認められるようになり、モスタイプに代わってメンブレンタイプが主流となる。日本の造船業界は、1970年代から1990年代まで造船産業の王座についていた。ところが、世界のトレンドがメンブレンタイプに変わったにも関わらず、日本はモスタイプにこだわった結果、価格競争力を失ってしまい、2015年以降、LNG船の受注が皆無に近い状態が続いている。

 それでは政府の全面的な支援と低価格を武器に世界造船産業の王座についた中国の造船会社はどのような状況だろうか。バルク船やコンテナ船などの分野において、中国は猛威を振るっている。しかし、中国のLNG船の建造能力は、まだ韓国におくれをとっていると評価されている。実際、中国が建造したLNG船がエンジントラブルにより豪州の沖の前でストップしたままとなり、2年前にそれを廃船処理したことがあった。

 また、フランスに納品することになっているLNG船の納期が遅れるなど、中国の造船会社に対する不信感が募っている。

 現在は韓国造船会社にかなり有利な状況が続いているが、将来はどうなるか予断を許さない。

(つづく)

(後)

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