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2020年01月15日 09:30

LNG時代の到来と韓国の造船産業(後)

日韓ビジネスコンサルタント 劉 明鎬 氏

 LNG船において一番大事な場所は貨物タンクである。体積を600分の1に圧縮したうえに船の揺れにより、タンクにかなりの力がかかることになるので、この貨物蔵タンクこそ、高い技術力が必要になる。実は、韓国も今まで貯蔵タンクはGTT社の技術を使っていたので、GTT社に莫大な金額のロイヤルティーを支払っている。ロイヤルティーの金額としては1隻あたり100億ウォンくらいである。ロイヤルティーは受注金額全体の5%も占めており、マージンの半分がロイヤルティーなので、大きな争点となっている。

 このような状況下、LNG船の収益性を上げるためには、独自の貨物タンク技術の確保が急務とされていた。そこで、韓国ガス公社と造船会社3社が共同で、独自の貨物蔵タンク「KC-1」を開発した。しかし、開発が完了したからといって造船会社が、それをすぐに採用することはない。安全性が立証されてはじめて、造船会社が安心してその貨物タンクを採用することになるのである。ところが、KC-1はテストの過程で問題が発見され、8カ月間修理をし、運航テストに入っている。

 韓国の造船産業は現在、LNG船の建造をほぼ独占するくらい良い状況が続いている。それに、LNG船(LNGを運ぶ船舶)だけでなく、船舶の燃料を重油からLNGにしようという動きもある。LNG推進船の建造である。このような流れを受け、中国と日本の造船会社が連携をしはじめている。それが市場にどのような変化をもたらすかはわからない。

 現在は韓国の造船会社の「ひとり勝ち」のような状況だが、そんな状況がずっと続く保証はない。なぜかというと、LNG船市場は下記のような課題も抱えているからだ。

 造船業界は2023年に好況が訪れるとされているが、LNG船の場合、建造期間が長く、本格的に需要が発生したときにLNG船でドックが埋まり、収益の足かせになる可能性がある点だ。それに、現在のLNG船は供給過剰状態で、実際の貨物量よりもLNG船の発注量が多いのが問題として指摘されている。

 現在、韓国は、LNG船の受注をほぼ独占しているということで大騒ぎしているが、現在の受注量は好況期の半分にも満たないという不都合な真実もある。バルク船やコンテナ船の分野で日本は30%程度の受注をしているし、中国の低価格攻勢も終わったわけではない。時期的に発注が相次いでいるLNG船は造船市場の10%に過ぎず、現在の状況をもっと冷静に受け止める必要がある。

 天然ガス時代の到来により、LNG船の建造に一日の長がある韓国造船産業に追い風が吹いていることは間違いないが、将来に備えて戦略的に事業を展開しないと、LNG船がバルク船やコンテナ船の二の轍を踏む可能性は十分にある。

 韓国の造船会社は、LNG船を筆頭に、氷破砕船、海洋プラントなど、付加価値の高い分野に力を入れている。世界貿易の9割は、まだ船舶によって行われており、今後も環境に優しい船舶の建造技術などが重宝されることになるだろう。

 天然ガス時代の到来とともに将来、韓国、中国、日本による造船産業をめぐる戦いがし烈になっていくものと思われる。

(了)

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