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2020年01月15日 14:56

ようやくはじまった「津久井やまゆり園殺傷事件」裁判の意味するもの(前)

大さんのシニアリポート第85回

 1月8日、障害者施設「津久井やまゆり園殺傷事件」の裁判員裁判が横浜地裁でようやく始まった。植松被告は殺傷理由を、「障害者は生きていても無駄だから」と発言。この不可解な動機、残忍な殺傷の方法に全国民が震撼した。裁判当日、罪状認否で植松被告は45人の殺傷の起訴内容を認めた。その後、法廷で不規則な行動をしていったん休廷となった。差別(ヘイト)意識はほんとうになくなるのだろうか。この裁判の意味するものは大きい。

 公判の冒頭陳述で、検察側は「計画的で、違法との認識もあったことなどから、病的な妄想などに支配されておらず、完全な刑事責任能力がある」とし、弁護側は、「被告は大麻精神病やその他の精神障害によって本来の被告から別の人になり、結果として事件を起こした。犯行時、被告には刑事責任能力がなかった」と真っ向から対立した。

 事件の推移を略述してみる。2016年7月26日午前2時頃、同園元職員植松聖(当時26歳)が神奈川県相模原市緑区千木良にある「津久井やまゆり園」の窓ガラスをハンマーで割って侵入。東棟の1階から西棟の1、2階へと移動し、職員を結束バンドで手を縛り、最重度の知的傷害者(話すことができない)を重点的に襲った。

 「亡くなったのはいずれも入所者で、41~67歳の男性9人と、19~70歳の女性10人。(中略)重傷者が13人」「2時45分頃職員の1人が(中略)110番通報した。その5分後、植松容疑者のものとみられるツイッターに、『世界が平和になりますように。Beautiful japan!!!!!!』との書き込みがあった。自撮り写真ではこわばった笑顔を浮かべていた。約7km東の津久井署。午前3時ごろ、植松容疑者が血のついた3本の刃物を持って『自分がやりました』と出頭し、殺人未遂と建造物侵入の疑いで緊急逮捕された」(「朝日新聞」2016年7月27日)。

 植松被告とはどのような男だったのだろう。『週刊朝日 2016年8月12日号』などを参考に検証する。

・子ども、学生時代:1990年1月生まれ。1歳のころに東京都内の団地から、相模原市に移住。父親は都内の小学校の図工教師。母親は漫画家。中学時代は熱心なバスケットボール部員で、勉強もできるほうだった。中堅の私立大で教育学部に進学、初等教育を専攻し、小学校教諭を目指す。八王子市内の学童保育で指導員補助のアルバイト(3年生の終わりまで)を始める。子ども好き。

・異変:この頃、両親だけ、都内のマンションに引っ越す。理由は「入れ墨を入れたことに両親が怒ったから」。友人に「(入れ墨の)彫り師としてやっていく」といい、入れ墨を彫る機器まで買いそろえる。大学4年5月末から母校(小学校)で教育実習。友人の懸念どおり、水泳の授業で入れ墨を隠すのに腐心し、スイムスーツを着て全身を隠す。教員免許採用試験の申し込みを失念し受験せず。いきあたりばったりの生活。

・麻薬=入れ墨を入れるときに生じる苦痛を緩和させるため大麻を使用。大麻の栽培を始めるも、うまくいかず。危険ドラッグにも手を出す。

・就職:12年3月卒業。清涼飲料水を扱う会社に就職するも、数カ月で退職。その後、「津久井やまゆり園」を運営する社会福祉法人「かながわ共同会」受験し、非常勤職員として採用。翌13年4月に常勤職員に。

・異常言動と行動(1):常勤採用直後からTシャツを着て出勤。入所者や職員にわざと入れ墨を見せる。15年春になると、過激な右翼思想を展開し、「宇宙からテレパシーが来る」と真顔で話す。

・異常言動と行動(2):2016年2月15日、衆院議長公邸に犯罪予告の手紙持参。同時期、園周辺の家に「障害者なんて生きていても無駄」などと書いた文書をポスティング。
 「こらぁ、障害者のくせに」「いらねえんだよ」と暴言を吐く。こうした異常言動・行動に園側が本人と面接。
 「2月19日の面接でも『抹殺』『安楽死』といった言動があったため、終了後に(津久井)署は園内で警察官職務執行法に基づいて植松容疑者を保護。(相模原)市内の北里大学東病院に措置入院した」
 「3月2日、『他人を傷つける恐れがなくなった』という医師1人の判断をもとに市は退院を決めた」(「朝日新聞」2016年8月3日)。
 退院の条件として、「別の自治体で家族と同居することになっていたが、実際には市内の実家に1人で暮らしていた」(同)。4月、「動けない、話せない障害者はごみ。もう自分でやるしかない。動かないから刃物でやれる」とバイク仲間に話す。

(つづく)

<プロフィール>
大山眞人(おおやま まひと)

 1944年山形市生まれ。早大卒。出版社勤務の後、ノンフィクション作家。主な著作に、『S病院老人病棟の仲間たち』『取締役宝くじ部長』(文藝春秋)『老いてこそ2人で生きたい』『夢のある「終の棲家」を作りたい』(大和書房)『退学者ゼロ高校 須郷昌徳の「これが教育たい!」』(河出書房新社)『克って勝つー田村亮子を育てた男』(自由現代社)『取締役総務部長 奈良坂龍平』(讀賣新聞社)『悪徳商法』(文春新書)『団地が死んでいく』(平凡社新書)『騙されたがる人たち』(講談社)『親を棄てる子どもたち 新しい「姥捨山」のかたちを求めて』(平凡社新書)など。

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