2024年03月28日( 木 )

山本太郎氏がツアーを開始、同一賃金やNHK受信料などで市民と対話

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 れいわ新選組の山本太郎代表が「#れいわが始まる2020」と銘打つ全国ツアーを開始した。第1弾は1月23日〜2月9日、中国・四国地方に加え、滋賀・岐阜の両県を回る。

質問に答える山本氏(2020.1.23筆者撮影)
質問に答える山本氏(2020.1.23筆者撮影)

 初日の23日は、日中予定していたポスター張りが雨天のため中止になった。午後6時から、島根県松江市総合文化センター内で「おしゃべり会」を開いた。同一労働同一賃金やNHK受信料、産業廃棄物建設などの問題について、市民約150人と3時間近くにわたり意見交換した。

 最初に報道陣から質問を受けた。地元テレビの記者が「8つの緊急政策」について、「税収が足りなくならないか」と財源を疑問視するとともに、5%での野党共闘呼び掛けを「消費税廃止と書いていたのに、何でちょこちょこ変わるのか」「最終目標は」とただした。

 山本氏は最終目標を「死にたくなるような世の中をやめたい」と明言した。消費税廃止の公約は変わらないとしながら、「じゃあ、私たちが政権を取るまで廃止と言い続けるだけでいいのか」と中小零細企業が負う過剰な負担を挙げ、「消費が喚起され、税収が増えるようなかたちにもって行かなければ。永田町では財務省の洗脳が行き届いているから、5%のパワーワードを使って第一歩を勝ち取りたい」と説明した。

 財源として税制改革のほかに新規国債発行を提案。「国民に大きな借金がのしかかると思っているのか? 国債を買うのは銀行だが、皆さんから集めたお金ではなく、(日銀にある)準備預金を使っている」と疑念を払拭(ふっしょく)。そのうえで、「れいわは夏の選挙でテレビメディアにはほとんど取り上げられてない。だからどういう存在なのかわからなかった方がいらっしゃると思う。メディアの方々にそういう気持ちが生まれたなら、取材してください」と注文した。

 筆者が、なぜ票にならない人と対話したり、助けたりするのかと尋ねた。

 山本氏は東京五輪開催決定にともなって東京都が明治公園の野宿者を追い出した問題を国会で追及したり、入国管理センターに収容されている外国人から惨状を訴える手紙をもらい、面会したことを告白。「票はない。しかし、最も弱い立場に置かれている方々に対しても手を差し伸ばしてくれる世の中であってほしいから。自分もいつどうなるかわからない」と答えた。

 一般の男性から、4月から大企業に適用される同一労働同一賃金のルールについて見解を問われた。パートタイム・有期雇用労働法と改正労働者派遣法の2法は、正社員と非正規社員との不合理な待遇格差を禁じる。中小零細は2022年度に義務化される。

 山本氏は「低い方へ合わされていく可能性が高い。派遣で中を抜く人がいる。規制が必要」と述べるとともに、派遣企業の経営者が政府の諮問会議に入っていることを問題視した。

 男性は郵便局で派遣労働していることを明かし、「正社員の処遇を派遣に合わせて変えた。今、半分が派遣だが、怖いのは将来。時給もコンビニと変わらず、配達中に転倒事故を起こし、足を痛めている」と報告した。

 山本氏は「民営化して、ろくなことはない。やっていることは超ブラックって話」と一蹴するとともに、企業が経費削減すれば、国がそれで生まれた失業者や心身を患った人を支援なければならず、コスト高になる矛盾を糾弾した。

 別の男性が、参院選期間中、テレビメディアがれいわを取り上げなかったことに触れ、「NHKの受信料に対して、どういう意見をお持ちか」と尋ねた。

 山本氏は俳優時代の体験を振り返り、「質の高い作品を生み出すから、お金を出す意味があると思っていた。今、そうでない。大本営発表のための放送みたい」とやゆ。良質な番組も少数あるとしながらも、参院選後初めて9党を対象にした18日放送の『日曜討論』もビデオ出演(舩後靖彦氏)だったことを挙げ、「おかしい。国政政党なのに」と批判した。

 社民やN国と一緒に出演交渉すべきとしたうえで、「本来、一切忖度(そんたく)しないメディアとしてNHKが存在しなければいけない。でも、そうなっていない。見たい人だけお金を払うか、国家予算から担保するか。担保するなら、普段の委員会もテレビ入りすることは必要」との見解を示した。

 化学物質過敏症に悩むという女性が、有害物質のまん延について「なぜそうするのか」と訴えた。山本氏は「規制が必要。人的被害が起こりそうなら、まず調査を」と答えた。女性は淀江町(よどえちょう)で進む産業廃棄物処理場の建設計画を紹介し、「今でもしんどいのに、そうなるとほかにも増えるかもしれない」と問題提起した。

 山本氏が挙手を求めると、参加者の約7割がこの問題を知っていた。一方、反対運動に取り組む「大山麓(だいせんふもと)の自然環境と米子の水を守る会」を知っている人はその約5分の1にとどまった。山本氏は「行政を動かすことを、みんなが力を合わせてやっていく必要がある」と助言した。

 女性が同会で7、8年勉強会を開いてきたことや、県会議員候補者にアンケートを取ったことを報告し、「市民も知らされていない」と嘆いた。計画が決定していないことを教えられた山本氏は、「議員とこの20人で集まりをもったら。やるなら今」と鼓舞した。

 参加した高校2年の男子生徒(17)は、「面白かった」と吐露した。れいわを意識したのは「参院選の政見放送を見て」。以来、時間があればネットで街頭会見を見ているという。親族に障害者がいるとして、「特定枠を使って当事者が国会に行ったのはすごい」と評価する。

 「中学のときは同じ党を応援する人もいた。でも今は『消費税を廃止できるわけないだろう』と言われ、話しにくい空気がある。ちゃんと法人税の累進化とか、調べてほしい」とこぼした。この日は1人で足を運んだ。「私たちは記述式や英語民間試験で翻弄(ほんろう)された学年なので、自民・政府への不信感はもっているのでは」と近未来に期待を寄せていた。

足元の悪いなか、集まった市民
足元の悪いなか、集まった市民

<プロフィール>
高橋 清隆(たかはし・きよたか)  

 1964年新潟県生まれ。金沢大学大学院経済学研究科修士課程修了。『週刊金曜日』『ZAITEN』『月刊THEMIS(テーミス)』などに記事を掲載。著書に『偽装報道を見抜け!』(ナビ出版)、『亀井静香が吠える』(K&Kプレス)、『亀井静香—最後の戦いだ。』(同)、『新聞に載らなかったトンデモ投稿』(パブラボ)、『山本太郎がほえる〜野良犬の闘いが始まった』(Amazonオンデマンド)。ブログ『高橋清隆の文書館』

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