2024年04月20日( 土 )

神奈川県知事肝いりで推進!「人生100歳時代の設計図」(中)

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 100歳まで生きることを前提にどういう人生を送るか――。高齢化が進む日本では、会社員がリタイア後、40年近く、老後、余生を送るという時代は過去のものとなりつつある。そんな時代を見越して、「人生100歳時代の設計図」という政策に取り組んでいるのが神奈川県である。充実した人生を送るためには、人生の設計図を描くことが大切だということを県民に気づいてもらおうと、機会づくり、場づくりに取り組んでいる。

プロジェクト推進組織に83の企業、団体が参加

 2016年に「人生100歳時代の設計図」の取り組みをスタートすると、2017年には人生100歳社会を構想し、実現するためのプロジェクトを担うものとして「かながわ人生100歳時代ネットワーク」を立ち上げた。このネットワークには、有識者、大学、企業、NPO、団体、行政など83団体が参加している(2019年10月時点)。

 かながわ人生100歳時代ネットワークの目的は、「『人生100歳時代』において、県民1人ひとりが自分自身の人生の設計図を描き、生涯にわたり輝き続けることができる社会を実現するため、行政、大学、企業、NPOなどが連携し協働して、『学びの場』から『活動の場』に『つなげる』しくみを創出する」ことだ。

 かながわ人生100歳時代ネットワークでは、 高齢者と多世代交流(子ども・若者を主役としたまちづくり)、高齢者の働き方(人生100歳時代の働き方・生き方)、高齢者と地域社会(シニア世代の社会参加と緩やかなつながりづくり)という3つのワーキング部会を設け、新しい社会のあり方を検討してきた。

 各部会での検討を通じて絞り込まれていったのが、以下の3つのプロジェクトである。

●第一部会:子どもを主役にして、おとなが支え、子ども自身がかかわって、ともにつくりだすコミュニティを実現する「カッコイイおとなプロジェクト」

ご近所ラボプロジェクト
ご近所ラボプロジェクト
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●第二部会:若者が人生100歳を生きぬくことのできる社会の形成と、高齢期を迎えるにあたっての現役世代の社会参加促進などの仕組みを整備する「現役世代マルチライフ推進プロジェクト」

カッコイイおとなプロジェクト
カッコイイおとなプロジェクト
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●第三部会:高齢者と地域社会が緩やかにつながる場をつくり、高齢者、とくに男性シニアと地域とをコーディネートし、多彩なアクターがまちをつくり、経営する仕組みづくりの「ご近所ラボプロジェクト」

生涯現役マルチライフ推進プロジェクト
生涯現役マルチライフ推進プロジェクト
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 神奈川県政策局未来創生課長・杉山力也氏は、「これまで県が主導してきたが、いつまでも行政が主導するのではなく、ネットワークの参加者が当事者意識をもって自発的に企画提案して動いていく仕組みができればと思っている」と話す。

多世代交流を促進若葉台団地での試み

 第一部会の「カッコイイおとなプロジェクト」の実地場所として選定されたのが若葉台団地である。かながわ人生100歳時代ネットワークの参加団体の1つである神奈川県住宅供給公社から、高齢化が進む団地でありながら、住民が活発に活動しているとして提案された場所だ。若葉台団地でアクションプランをつくり、それを実験的に行い、住民がさまざまな活動に取り組むようになることを目指している。

 たとえば、アンケート調査、イベント、セミナーなどを実施し、その過程でサークル、グループ、コミュニティができる。さらに、グループやコミュニティ同士が交流して新しい活動が生まれたり、グループやコミュニティができたりする。そして、若葉台団地全体に新しい価値が生まれ、サークル、グループ、コミュニティが常に生まれ変わっていく。そんな発展プロセスを描いている。また、地元の公立小中学校、私立中等教育学校とも連携し、子どもたちの学びと結び付ける取り組みなども検討している。

 2018年度には、多世代交流型イベントの実施に向けた検討会議を若葉台団地で4回実施した。

 「カッコイイおとなプロジェクト」が若葉台団地で目指しているのは、「カッコイイおとな」「子どもが主役」をキーワードに住民参加型のイベントを住民とともに企画・開催し、多世代交流を促進させるとともに、子ども参加型イベントの定着やイベントなどの担い手の確保・育成することだ。

 杉山氏は「どんな大人を子どもたちに見てもらいたいか、地域で活躍している大人をどう引っ張り出してくるか、どうすれば子どもが参加してくれるかが今後の課題」と話す。

(つづく)
【本城 優作】

■かながわ人生100歳時代ネットワーク

構成員(83団体・有識者3名)2019年10月10日現在

●有識者
牧野 篤(東京大学大学院教育学研究科教授、東京大学高齢社会総合研究機構副機構長)
前田 展弘(東京大学高齢社会総合研究機構客員研究員、ニッセイ基礎研究所主任研究員)
澤岡 詩野(ダイヤ高齢社会研究財団主任研究員)

●大学
東海大学、横浜国立大学、神奈川大学、関東学院大学、横浜市立大学、松蔭大学、県立保健福祉大学、昭和音楽大学、星槎大学、横浜商科大学、昭和大学、横浜薬科大学、東京都市大学、相模女子大学、相模女子大学短期大学部

●企業
第一生命保険、横浜銀行、大塚製薬、タウンニュース社、NTTドコモ、東急不動産R&Dセンター、日本生命保険、オイレス工業、アズビル、ソフトバンク、Peatix Japan

●NPO
ソーシャルコーディネートかながわ、NPOサポートちがさき、YUVEC、藤沢市民活動推進機構、さがみはら市民会議、YMCAコミュニティサポート、I Love つづき、シニアネットワークおだわら&あしがら、鎌倉市市民活動センター運営会議、横浜移動サービス協議会、湘南スタイル、若葉台、若葉台スポーツ・文化クラブ、湘南ふじさわシニアネット、ホームスクーリングで輝くみらいタウンプロジェクト、学習サークルBE-GLOBAL、スーリールファム

●団体
神奈川県社会福祉協議会、神奈川県住宅供給公社、神奈川県経営者協会、神奈川県商工会議所連合会、神奈川県中小企業団体中央会、神奈川県商工会連合会、神奈川県シルバー人材センター連合会、プラチナ構想ネットワーク、UR都市機構、神奈川県中小企業家同友会、茅ケ崎市まちぢから協議会連絡会・12地区協議会・1地区連合会、生活協同組合パルシステム神奈川ゆめコープ、一般社団法人アイオーシニアズジャパン

●行政
県、横浜市、相模原市、横須賀市、藤沢市、小田原市、茅ケ崎市、大和市、綾瀬市、三浦市、逗子市、湯河原町、寒川町、神奈川労働局

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