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2020年02月18日 07:00

【インタビュー/加谷 珪一】オリンピック後、2020年代日本の未来図~祭りの後の日本経済発展のために(2)

経済評論家 加谷 珪一 氏

 2020年、56年ぶりに東京オリンピックが開かれる。前回の東京五輪同様、その後に景気が低迷すると予測されている。また、2020年から全都道府県で人口減が始まるとの予測(国立社会保障・人口問題研究所)もあり、つい暗い材料にばかり目が行きがちである。オリンピックという「祭りの後」、私たちは日本を発展させるために何に注目し、どう取り組むべきなのか。経済評論家・加谷珪一氏に日本社会の今後の展望についてうかがった。

 ――1人あたり消費額の高い欧米人観光客を取り込んでいくようシフトするのはいかがでしょうか?

 加谷 欧米の観光客は1人あたり消費額が大きく、シフトするのは1つの手です。ただ、彼らは非常に成熟しており、ちょっとやそっとのホスピタリティでは満足してくれません。日本の観光におけるサービスはまだ箱モノ、ハードウェアがメインで、ソフトウェアが得意ではありません。

 先日、菅義偉官房長官が高級ホテル50棟を建設すると言いました。日本には5つ星ホテルが少なく、それが富裕層を取りこぼす原因の1つとなっています。ただ、作るのは良いのですが、問題はサービスを提供する人材の育成であり、そのような人材は一朝一夕には育成できません。欧米の観光客を取り込もうというのであれば、時間をかけてしっかりと取り組むことが求められます。このように難易度が高いのです。

 そう考えると、ストレートに買い物してくれるアジアの観光客をターゲットとしていく方がやりやすいと考えます。

 ――参考となる事例はありますか?

 加谷 中国・大連市での京都の街並みを再現するプロジェクト(京都風情街プロジェクト)が参考になるかもしれません。物件は1億円以上するのですが、飛ぶように売れているそうです。京都の街並みはそれだけ魅力的ということであり、日本国内でそのようなサービスを提供すれば買ってもらえるでしょう。

 たとえば築地のマグロは日本人にとってありふれたものですが、外国人はそれを見て歓声を挙げています。良い意味でも悪い意味でも、お客の声を聞き、ニーズがわかれば日本でもできることはいくらでもあるはずです。中国について視点を変えていえば、中国の本土でどのようなものが流行っているかを考えるのは1つの方法でしょう。

今後10年の日本経済の未来図

 ――次に2020年代の10年というスパンで見た場合、日本の経済、社会はどう変化していくとお考えですか?

 加谷 この間に今までに経験したことのない大きな変化が生じると思います。一番大きいのはIT化、AI化、シェアリング化の3つです。多くの方がキーワードはご存じですが、そのインパクトの具体的なイメージをもててはいないのではないでしょうか。

 一番わかりやすいのは自動車産業です。EV(電気自動車)になると価格は3分の1くらいになります。自動運転化、シェアリング化が進むと、10人が1台の車をシェアし、AIが調整を行い、アプリで公共交通機関と連携して乗り分けるようになると思います。コンサルティング会社は試算に基づき、今後自動車の保有が激減すると予測しています。

 自動運転の実現により、車のなかでネットを見るといった自由な時間が生まれることになります。これは大きなビジネスチャンスであり、ここを自動車会社が取るのか、それともIT事業者が入ってくるのか、それによって企業の序列が変わってくいでしょう。

 ライドシェアが解禁されると自家用車がタクシーになります。民泊のAirbnbにより自分の部屋がホテルになり、今後は自家用車がお金を稼げる手段に変わるわけであり価値観が激変します。自動運転車は人を乗せていない空き時間に荷物を運ぶことができます。旅客送業者と荷物の運送業者は別の業態ですが、今後、自動運転化により、タクシーがある時間は運送業者の輸送車に変わり、ある瞬間はまたタクシーに変わることになり、運送業者の序列も激変するでしょう。店の前に自動運転車があれば、そこに置くだけで届けてくれるので、デリバリーも大きく発展します。

 ウーバーイーツの労働問題などはなくなりますし、外食産業にも影響がおよびます。このように社会の在り方が大きく変わります。

(つづく)
【聞き手・文:茅野 雅弘】

※インタビューは昨年12月に行いました

<プロフィール>
加谷 珪一 加谷 珪一(かや・けいいち)

 経済評論家。仙台市生まれ。1993年東北大学工学部原子核工学科卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。独立後は、中央省庁や政府系金融機関など対するコンサルティング業務に従事。現在は、ニューズウィークや現代ビジネスなど数多くの媒体で連載をもつほか、テレビやラジオなどでコメンテーターを務める。

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