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2020年02月20日 11:00

コンビニ業界大激変時代~月刊コンビニ 編集委員 梅澤 聡 氏(3)

 コンビニ深夜休業の是非。各方面からさまざまな“論客”が参戦してメディアを賑わせた。誰もが毎日のように利用するコンビニ。1日1店舗の利用客数を800~1,000人、全店舗数を5万8,000とすると、毎日5,000万人がコンビニを訪れている計算になる。国民の生活の一部に組み込まれたコンビニが今、内部で深刻な問題を抱えている。一連のメディア報道が人々に不安を与えたことはたしかだろう。コンビニ業界は今後どこへ向かうのか。

スーパーの代替機能で新たな顧客を創出する

セブンイレブン

 再び成長の階段を上がるには既存店の売上を上げないと、新規の加盟者を募ることも既存店オーナーの多店舗化も難しい。

 1つは売上を上げることだが、その「売上」を分解すると「客数×客単価」となり「客単価」は「一品単価×買上点数」となる。もう1つはコストを下げること。加盟店にかかるコストのうち「人件費」が最も高く、次いで「食品廃棄ロス」の順になる(家賃はチェーン本部の支払いがほとんど)。

 売上については、既存店前年比で客数は減少、それを客単価の増加で補って何とかプラスに持ち込む傾向がチェーン大手で続いていた。客数については、日本国内の総人口が減少するなかで、競合するコンビニの店舗数が増加、さらにはドラッグストアチェーンが市場規模を拡大、近年は食品の扱い比率を高めて、コンビニ商圏に食い込んできている。

 その厳しい環境下でコンビニの取った戦略は「スーパーマーケットの代替機能強化」である。女性の就業率が高まり共働きの家庭が増加している。スーパーマーケット的な買物客を取り込んで、買上点数を高めて売上を上げる戦略である。

 これまでコンビニは単身者が「即食べる・即使う」ニーズに対応してきた。これからは働く女性が自分の分だけではなく、家で待つ家族(主に夫)分も含めてコンビニを利用する。買上点数が上がり売上は上がるはずだ。その端的な事例が、ファミリーマートが17年9月に投入した「お母さん食堂」である。

 ファミマに限らず、2010年代半ばから各チェーンで「袋物惣菜」が伸長している。従来のトレイをラップした惣菜に比較して販売期限が長い「長鮮度化」商品として、各チェーンが、ハンバーグなど洋惣菜や海老チリなど中華惣菜、肉じゃがなど和惣菜を展開して新たなカテゴリーを切り拓いてきた。ファミマは袋物惣菜を「お母さん食堂」にブランド統一、19年度はタレントの香取慎吾を起用して「お母さん食堂」のテレビCMを打った。

 「お母さん食堂」の拡充を始めた18年度、ファミマの調査によると袋物惣菜を購入するお客の客単価が突出して高いことがわかった。ファミマの平均客単価は(当時)573円、「お母さん食堂」購入客の客単価は(当時)1,349円と2倍以上、ちなみにスーパーマーケットの平均客単価が1,902円(推計)なので、お客の買い方がスーパーマーケットに近づいていると認識できた。

 セブン-イレブンも惣菜強化により新たなマーケットを開拓している。17年度から「新レイアウト」の導入を本格的にスタートし、「冷凍食品売り場の拡大」「オープンケースの拡大」「カウンターの拡張」を実現、19年度末までに累計1万400店舗の売り場変更を実施していくとしている。

 この変更は、少子高齢化や共働き世帯の増加に対応して、中食(弁当・惣菜など)の充実を冷凍食品、チルド温度帯の惣菜、温かいカウンターフーズといった各温度帯で図っていくものだ。

 セブン-イレブン・ジャパン執行役員商品本部長・高橋広隆氏は次のように市場を見る。

 「スーパーに行って、食材を買って、切り分けて、調味料をそろえて、調理をする行為が、社会環境の変化において本当に続くのであろうか。セブン-イレブンの生きる道は、利便性、そして品質を提供すること。人口減といっても、こうしたマーケット変化は、我々にとって必ずプラスに転じてくる」。

 冷凍食品は18年度秋に開発した「おかづまみ」シリーズにおいて「手羽中唐揚げ」「甘辛だれの牛ホルモン焼」「チーズダッカルビ」など当初は肉類を中心に展開し、続いて「なすの揚げびたし」「海老の野菜のアヒージョ風」といった野菜や魚介を取り入れた。19年度は11月中旬以降からベーシックな「おかず」需要に向けた「きょうのおかず」シリーズとして「炭火で焼いた牛カルビ」「豚の生姜焼き」「海老チリソース」などを投入している。

 どの商品も1~2人用と少量であり子どものいるファミリーユースではない。ただし単身者に加えて、共働き夫婦、高齢者の夫婦といった、家庭の調理に時間が取れなかったり、面倒だったりする中食需要に向けた商品群の充実にセブンは注力している。冷凍食品なので長期間ストックでき、買物の回数削減にも貢献できる。

 カウンターフーズも11月中旬に首都圏から「アジフライ」を展開していく。従来のような、ホットドッグやフライドチキンなどの「おやつ」系だけではなく、「アジフライ」を中心とした家庭用惣菜の、いっそうの強化を図っていく。

 毎日コンビニに通っているとわずかな変化にしか感じないが、70年代から90年代を思い返すと、かつてのコンビニは20~30代の男性客が主流であり、週刊誌とビールと弁当とたばこを買って家路に着く中継地点のような場所であった。当時と比較しても客層も、そして買われ方も大きく変化してきている。

(つづく)

<プロフィール>
梅澤 聡(うめざわ・さとし)

札幌市生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、西武百貨店入社、ロフト業態立上げに参画、在職中に『東京学生映画祭』を企画・開催(映画祭は継続中)。1989年商業界入社、販売革新編集部、月刊『コンビニ』編集長、月刊『飲食店経営』編集長を経てフリーランスとなり、現在は両誌の編集委員を務める。アジアのマラソン大会と飲食店巡りをまとめた『時速8キロのアジア』を商業界オンラインに連載中。

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