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2020年02月28日 09:30

縮むニッポン、健康寿命延伸で「生涯現役社会」は実現するか(後)

 第201通常国会が令和2年1月20日に召集され、安倍晋三首相は衆参両院の本会議で行った施政方針演説のなかで、内閣の最大のチャレンジと位置づける全世代型社会保障制度に関し「本年、改革を実行する」と表明した。2025年、日本では団塊の世代が75歳以上の後期高齢者に突入し、社会保障費の急増する見通しだ。年金改革とともにいよいよ待ったなしとなった国民皆保険の抜本的な見直しが本格的に始まることとなる。

健康寿命の延伸目標、2040年までに3年以上

健康経営アワード2019
健康経営アワード2019

 実は、保険者には個人のレセプトや健診データは集まっているが、運動や食生活等の生活習慣の改善、糖尿病等の重症化予防に向けた具体的な取り組みなどとは十分つながっていない。保険者が個人へ働きかけを促すインセンティブや健康経営など、経営者が主体となり従業員の健康維持・増進を図る取り組みもまだ一部の動きである。

 そこで、厚生労働省と日本健康会議、企業の健康経営が連携して、各保険加入者の健康状態や健康への投資状況などをスコアリングし経営者に通知する取り組みを始めた。さらに、対面診療と遠隔診療を組み合わせる混合医療も今後診療報酬改定での検討も予定はされている。

 一方で、未来投資戦略2017では画像診断支援、医薬品開発、手術支援、ゲノム医療、診断・治療支援、介護・認知症が重点6領域と定められた。今後はこれらの分野でのAI開発用のクラウド環境の整備・認証の仕組みの構築や、AIを活用した医療機器の質や安全性を確保するための評価等のルールづくりが進んでくる。しかし、これらが保険内診療を目指すのか、それとも保険外診療を目指していくのかは現時点では判断ができない。

 厚生労働省は2019年3月28日、「健康寿命のあり方に関する有識者研究会」の報告書を公表し、健康寿命の定義や政策指標を整理するとともに、健康寿命延伸の目標として、「2040年までに男女ともに3年以上延伸する」ことを打ち出した。この目標が達成されると、健康寿命は男女ともに75歳以上となる。

健康寿命延伸政策に存在感を示す経産省

 2013年、日本再興戦略に「健康寿命延伸」が明記されたことを境に、一気に存在感が増したのが経済産業省だ。

 2013年4月の日本再興戦略に基づき、官民一体となって具体的な対応策の検討を行う場として「健康・医療戦略推進本部」のもとに設置されたのが「次世代ヘルスケア産業協議会」。ここで経済産業省は事務局を務めるとともに、関連施策を経済の面から推進し始めた。

 これまで医療や介護などの社会保障分野は厚生労働省が政策を立案し、財務省が支出をコントロールしてきた。つまり、経済産業省は予防・健康づくりが財政再建の「切り札」になるとして、新たな道を示すかたちとなった。

 とくに「生涯現役社会」と銘打って高齢者の元気をアピールした方向性は、その後、国が打ち出す「人生100歳時代」「働き方改革」と完全にリンクしたこともあり、その動きは活発だ。

 2019年4月に公表した『生涯現役社会の構築に向けた「アクションプラン2019」』では、「身体の壁」「価値観の壁」「選択肢の壁」「情報の壁」といった健康寿命延伸に向けた新たな概念を提唱し、現役時代からの健康管理や行動変容、新たなヘルスケアサービス創出や公的保険外サービスの見える化と品質評価の推進など、経済産業省ならではの視点で健康寿命延伸へのアプローチを強めている。

 経済産業省のヒットは、何と言っても2014年に東京証券取引所と共同で始めた「健康経営銘柄」だろう。優れた健康経営を実践している企業を、東京証券取引所の上場企業33業種から、経済産業省と東京証券取引所が共同で各業種につき原則1社ずつ選定するもので、従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践する「健康経営」の概念を株式市場に持ち込んだこの大胆な作戦は、その後、急速に認知も高まり、2016年からは、日本健康会議とともに新たに「健康経営優良法人認定制度」も創設した。

 優良な健康経営に取り組む法人を「見える化」することで、企業価値が上がるという実例を示しただけでなく、その後はリクルートにおいても大きなメリットになったというおまけまでつくことになった。

 2019年2月21日の「健康経営銘柄2019」の発表では28業種から37社が選定され、また、同日、日本健康会議から「健康経営優良法人2019」として、大規模法人部門に821法人、中小規模法人部門に2503法人が認定されている。

 さらに今年に入って、1月17日には厚生労働省の「人生100年時代に向けた高年齢労働者の安全と健康に関する有識者会議」が、「高齢者が安全で健康に働ける職場の実現に向けて取り組むべき事項に関する報告書」をとりまとめ公表した。

 この報告書では、フレイルやロコモティブシンドロームといった高齢期に現れてくる特徴への考慮や、病気治療と仕事の両立支援の視点を取り入れることも明記、働く高齢者に体力や健康状態が低下するという課題があるとしても、労働者が体力や健康の維持改善に努め、事業者が取り組みを進めることで、安心して安全に働くことが可能としている。

 いよいよ、国は高齢者の労働市場への呼び戻しを本格化してくるものと思われる。

(了)
【継田 治生】

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