2024年04月19日( 金 )

シリーズ・コロナ革命(3)~中国人系経営者に聞く:業務減のため社員を休職に

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

中国で共産党関連組織での勤務経験のあるインバウンド企業の経営者A氏に話を聞いた。

訪日インバウンド事業への影響

 

 訪日観光などインバウンド業務が大幅に減るため、当社は関連業務の社員には3月から休職させることにしました。3月は全額支給、4月以降も休職という場合には60%を支給します。当社は多くの日本企業と異なり、中国国内の企業と同様に無借金経営でやっているため、日本企業よりもダメージが少ないかもしれません。

 インバウンドに関しては6月くらいまで影響が続くと見ています。気温が上がり、また梅雨で湿度も上がるころには新型コロナウイルスが活動しにくくなるのではと思いますが、熱帯地域のフィリピンなどでも感染者は出ているので、確かなことはいえません。先日、WHOの調査団が中国に入り、武漢などの現場に行っているので、原因の解明と対策が進むと期待しています。

中国の状況

 今般の習近平政権の対応は、西側諸国であれば辞任に相当するレベルかもしれません。しかし、これをもって習近平体制が終焉するという予測は当たらないでしょう。なぜなら中国は新型肺炎の流行まで6%近い経済成長率を保っており、経済状況は悪くありません。また、習近平は反腐敗闘争などで敵を多くつくっており、権力を維持しないと自身の生命の安全が保てないと考えているでしょう。

 現在の状況下では、中国の独裁のやり方は有効です。武漢の封鎖時には、夜に翌日朝の封鎖を通知し、軍隊にそれまでに武漢に配置するよう命じていました。共産党の組織系統も末端まで整っており、戒厳令のようなことができます。仮に日本で首相が同様のことを行おうとしても、それを実行できる人的リソースは足りないでしょう。

 他地域から武漢に応援に行っている医療チームも、同様に次の日に武漢に行くように命じられています。医療チームは公立病院の医師、看護師から成っており、古い重工業地域で多くの公立病院がある遼寧省のような地域から主にきています。民間の医院が多い深圳などからは少ないです。武漢で先日突貫工事により設立された2つの病院(火神山医院、雷神山医院)では、遼寧省からきた医師らが多く、東北方言が話されているというほどです。

 不幸中の幸いにして、現在の中国はネットショッピングが発展しており、人々は食料品などをすべてそれで注文し、小区※(団地)の入口までもってきてもらっています。新型肺炎の感染は中国経済に大きな影響を与えるでしょうが、通販、ネットショッピング、宅配業者の売上は数倍~10数倍に増えています。
 

※中国で一般的に見られる高層マンションの集合エリア。周囲を壁で囲まれ、敷地内に公園、青果店、飲食店などがあり、外出しなくても日常生活上の支障はないほどである。

日中関係について

 新型コロナウイルスに関して好材料はなかなかありませんが、日中関係は現在も最高に良いですが、さらに良くなっていくでしょう。日本で最も早い段階で中国にマスクを寄付したのは華僑団体でしたが、中国人は日本人が送り主だと思い感謝しました。また、一部の華僑団体が支援物資を梱包した段ボールの箱に漢詩を記していたことにも、多くの中国人は両国が一衣帯水の国であると感動しました。先日、中国は日本で新型肺炎の感染者が増えていることを心配し、検査キットを日本に提供したころはそのような気持ちの表れであると思います。

 ただ、現在、中国社会でも日中友好が叫ばれていますが、これは中国政府が日本と仲良くしたいと思い、宣伝当局が政治的に操作して生み出した雰囲気です。靖国神社、「島」の問題などはそのまま残っていますが、両国は友好関係にあります。中国のある抗日ドラマは、後半部分で日本を悪く言っているがこれは良くないということで、全50話のうち25話で放送をカットされたほどです。このように中国の宣伝当局がメディアに対する方針を変えれば、両国関係は大きく変わるということです。

 日本政府に対しては、早く行動、決定してほしいという思いがあります。中国の伝染、韓国の伝染の状況を見ていればわかるはずです。福岡市で感染した夫婦が無職の高齢者であり、中国に渡航もしていないとなると、タクシーかどこかで感染したとしか考えられないわけで、そのような場を減らしていかないといけません。中国政府が武漢を閉鎖するまで多くの人が外に観光に行っており、また現在、団体旅行は禁止されていても個人で旅行はできますので、感染のリスクはまだ残っています。

(2)
(4)

関連キーワード

関連記事