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2020年03月06日 13:34

超高齢社会における医療課題は「フレイル対策」 介入手段は薬物療法から栄養療法へ(1)

 令和元年度の高齢社会白書によれば、総人口に占める65歳以上人口の割合(高齢化率)は28.0%、75歳以上人口は65〜74歳人口を上回る1,798万人となり、総人口に占める割合は14.2%となった。2065年には約2.6人に1人が65歳以上、約3.9人に1人が75歳以上になると推計されている。超高齢社会における医療課題はそのまま高齢者医療であり、とくに地域医療では認知症、サルコペニア(筋肉減少症)などにつながるフレイル対策が大きな課題となっている。

 

富士山静養園
富士山静養園

栄養療法で認知機能が改善

 中高年は「摂取過剰によるメタボ」、高齢者は「摂取不足による低栄養」――。現代人の栄養状態を端的に表すとこのようになる。とりわけ深刻なのは単身高齢者の食生活だ。食が細くなることで栄養状態が悪化すると、やっかいなサルコペニアになり、やがてはロコモ状態に移行するリスクが高まる。握力や咀嚼力が落ちて食べられない状況になると全身状態が低下し、低栄養状態が進行するという悪循環に陥る。

 「やせ、低栄養が、要介護および総死亡に対するリスク要因の1つとなるため、低栄養の予防に留意する必要がある」――。厚労省の検討会が2014年10月に取りまとめた「健康な食事」に関する報告書では、低栄養が脳血管疾患や認知症を引き起こし、やがては要介護の状態につながっていく危険性を指摘している。要介護人口の増加は高齢社会が抱える深刻な問題だ。認知症患者は、12年は462万人と65歳以上の高齢者の7人に1人だったが、25年には約700万人、5人に1人になると見込まれている。

 現在、フリーで講演や執筆活動を行う管理栄養士の小町みち子氏は、「以前勤務していたクリニックで認知症を訴える患者は年々増えていた。60代での発症も珍しくなく、認知症患者の多くは、他院でアリセプトを処方されていた」と当時を振り返る。

 アリセプトは発売当初、「夢の認知症・アルツハイマー病治療薬」と謳われていた。認知症の進行度が中程度までなら20~30%ぐらいの有効率があり、認知症の症状を数カ月から1年ほど前の状態まで回復できるとされている。認知症は、脳内のアセチルコリン量が低下するのにともなって神経伝達機能が低下し、認知力が著しく損なわれる病態。ただし、アリセプトはアセチルコリンを分解する酵素の働きを阻害する作用はあるが、改善させる効果は期待できないうえ、副作用リスクもあるという。製薬会社の説明文書にも「病態そのものを治す薬ではありません」と記載されている。

 そこで小町氏らの栄養ケアチームは、脳内のアセチルコリン量を増やす目的で、大豆食品、ワカメやメカブなどのネバネバ食品を積極的に摂るように提案した。これらの食材を選んだ理由について小町氏は、「食材に含まれるミネラル類、タンパク質は脳神経細胞を活性化させ、脳内ホルモンの合成を促進する。大豆食品に含まれるレシチンは体内でアセチルコリンに変換され、糖鎖栄養素は神経細胞の表面に存在して電気信号を外部に漏らさない絶縁体の働きをするため、細胞間の情報伝達を容易にする作用が期待できる」と説明する。

 医薬品はアセチルコリンの分解を抑える作用があるが、栄養療法はアセチルコリンの絶対量を増やすことができ、認知症の改善効果も期待できるという。実際に小町氏が担当した患者78名の7割は、認知機能が改善し、認知症患者特有のうつ症状も解消したという。

(つづく)
【吉村 敏】

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