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2020年03月06日 15:14

ビジネスで社会問題を解決~目指すは年間100社の起業!(前)

(株)ボーダレス・ジャパン社長 田口 一成 氏

 ユニークなビジネスモデルでソーシャルビジネスを手がける(株)ボーダレス・ジャパン。同社を率いるのが代表取締役社長・田口一成氏である。ボランティアやNPO(非営利団体)などと異なり、ビジネスを通じて貧困や環境などの社会問題の解決に取り組むのがソーシャルビジネス。田口氏はこれまで、社会起業家を育て、国内外でいくつもの事業会社を立ち上げてきた。その数は30社超。今後は年間100社を立ち上げるべく、その仕組みづくりに精力を傾けている。

 

田口社長
田口 一成 社長

海外を含め30社、年商50億円

 ボーダレス・ジャパンの設立は2007年。これまで社会問題の解決に取り組む数々の子会社を立ち上げてきた。

 生ごみを堆肥に変え環境負荷を軽減するコンポストを販売するローカルフードサイクリング(株)、離職を繰り返す若者の問題解決を目指す人材紹介業のボーダレスキャリア(株)、日本に暮らす外国人の差別・偏見の問題解決を目指すシェアハウスを運営するボーダレスハウス(株)など、傘下の事業会社は海外を含め約30社に上る。ボーダレスグループ売上高は年々拡大しており、2018年度は49億2,000万円に達している。

 ボーダレス・ジャパンはひと言でいうと、ソーシャルビジネスを手がける社会起業家集団ということになる。ではソーシャルビジネスとは何か。まずその概念について整理をしておこう。

 社会構造の変化にともない、さまざまな社会問題が顕在化している。環境、貧困、差別、就労……。こうした社会問題の解決に取り組んでいる組織には、行政のほかボランティアやNPOなどがある。

 経済産業省によると、ソーシャルビジネスとは社会問題を解決するために、ビジネスの手法を用いて取り組むものだ。言い換えると、ビジネスとして事業性を重視し、事業収益を上げることで継続的に社会問題の解決を目指すということ。従来のように寄付金などの外部資金に頼らないことが最大の特徴だ。主体となる事業体は「社会的企業」、ソーシャルビジネスに挑戦する起業家のことは「社会起業家」などと呼ばれている。

ボーダレス仕組み図
ボーダレス仕組み図
※クリックで拡大

 経産省はソーシャルビジネスの要件として社会性、事業性、革新性の3つを挙げている。

(1)社会性
 現在解決が求められる社会的課題に取り組むことを事業活動のミッションとすること。

(2)事業性
 (1)のミッションをビジネスのかたちに表し、継続的に事業活動を進めていくこと。

(3)革新性
 新しい社会的商品・サービスや、それを提供するための仕組みを開発したり、活用したりすること。また、その活動が社会に広がることを通して、新しい社会的価値を創出すること。

 社会問題への取り組みをビジネスという手段で行い、それを通して新たな社会的価値を創出すること、それがソーシャルビジネスということになる。

 この定義に照らすと、ボーダレス・ジャパンはまさしくソーシャルビジネスを手がける企業に間違いない。だが、ボーダレス・ジャパンの真骨頂は、社会起業家を育て、事業を次々と立ち上げる、ユニークなビジネスモデルにある。

外観

外国人入居差別をなくすためシェアハウスの運営を始める

 田口氏が社会問題の解決に関心を抱いたのは早稲田大学時代のこと。2年生のときに、ドキュメンタリー映像を目にしたのがきっかけだ。そこには、栄養失調でお腹が膨らんだアフリカの貧しい少年が映し出されていた。「将来やりたいことを決めているわけではなかった。何をしようか考えていたとき、その映像を見てこれだと思った」。田口氏はこう振り返る。

 長年にわたって解決されていない貧困問題に人生をかけるのなら悪くない。そう思った田口氏はNGO(非政府組織)の門をたたいた。ところが、「本気で社会問題を解決したいと思っているなら、お金をコントロールできないとインパクトのある活動はできない」。そんなアドバイスを受けた。

 そこで考えたのがNGOに資金を提供するビジネスだった。NGOに対する寄付である。事業の中身よりも、とにかく事業を大きくして多くの寄付をしようと考えた。大学在学中に起業しようとしたが、「このままやっていても小さく終わる。2年間だけ修業しよう」と思い、卒業後、機械加工製品販売の(株)ミスミに入社。2年後の25歳のときに退職して独立した。

 当初のアイデアどおり、できるだけ多くの寄付をすることを目指した。だが、思っていたほどの納得感は得られなかった。

 そんなとき、たまたま外国人が部屋を借りられないという、外国人入居の差別問題に出会った。そこで、外国人が部屋を借りられるようにするために、シェアハウスの形態で、物件を借りて転貸する事業に乗り出した。外国人入居差別という社会問題に対して、具体的な事業を通じて解決を目指すのは、直接的でインパクトが大きいと実感した。

 このときから、寄付のためのビジネスから、社会問題を直接的に解決するという手段としてのビジネスへと転換を図っていった。

(つづく)
【本城 優作】

<COMPANY INFORMATION>
代表:田口 一成
所在地:(東京オフィス)東京都新宿区市谷田町2-17 
(福岡オフィス)福岡市東区多の津4-14-1
資本金:1,000万円
グループ年商:49億2,000万円(2018年度)

<プロフィール>
田口一成 (たぐち・かずなり)

 1980年生まれ。福岡県出身。大学2年時に栄養失調に苦しむ子どもの映像を見て「これぞ自分が人生をかける価値がある」と決意。早稲田大学在学中にワシントン大学へビジネス留学。(株)ミスミにて入社後25歳で独立し、ボーダレス・ジャパンを創業。世界12カ国で32社のソーシャルビジネスを展開し、2018年度の売上は49.2億円。2018年10月には「社会起業家の数だけ社会課題が解決される」という考えのもと、社会起業家養成所ボーダレスアカデミーを開校し、1年半で250名以上が受講。次々とソーシャルビジネスを生み出すボーダレスグループの仕組みは、2019年グッドデザイン賞を受賞。2019年日経ビジネス「世界を動かす日本人50」、Forbes JAPAN「日本のインパクト・アントレプレナー35」に選出。

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