2024年04月20日( 土 )

ビジネスで社会問題を解決~目指すは年間100社の起業!(中)

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(株)ボーダレス・ジャパン社長 田口 一成 氏

 ユニークなビジネスモデルでソーシャルビジネスを手がける(株)ボーダレス・ジャパン。同社を率いるのが代表取締役社長・田口一成氏である。ボランティアやNPO(非営利団体)などと異なり、ビジネスを通じて貧困や環境などの社会問題の解決に取り組むのがソーシャルビジネス。田口氏はこれまで、社会起業家を育て、国内外でいくつもの事業会社を立ち上げてきた。その数は30社超。今後は年間100社を立ち上げるべく、その仕組みづくりに精力を傾けている。

スタートアップ支援と経営サポートに機能を絞る

福岡多の津オフィス風景
福岡多の津オフィス風景

 その後、田口氏は次々と事業を立ち上げていく。事業ごとにカンパニー長をあて、事業を任せていった。8つほどの事業を立ち上げたころ、「世の中には社会問題がたくさんあるのに、このスピードでは年間1つか2つの事業を立ち上げるのが限界。これでは、社会は変わらない」と感じるようになった。

 そこで、社会起業家への志はあるが、資金やノウハウ、経験のない人が事業を立ち上げられるプラットフォームづくりへと転換していった。

 社会起業家を志す人材を募り、経験を積んでもらい、事業をプランニングして、会社を立ち上げていこうと考えた。直接的に事業を手がけるのは事業会社で、ボーダレス・ジャパンはスタートアップ支援と、その後の経営サポートという2つの機能に絞った。

 この2つの機能は、それぞれ「スタートアップスタジオ」機能、「バックアップスタジオ」機能と呼んでいる。スタートアップスタジオではプランニング、マーケティング、ブランディング、PR、採用などの業務を行う。バックアップスタジオでは経理、法務などのサービスを提供する。事業会社はサービスの対価として、ボーダレス・ジャパンに売上の2%を支払う。

 新卒で入社後、経験を積み、社会起業家を目指すケースもあれば、社会起業家を育成する「ボーダレスアカデミー」を経て事業を立ち上げるケースもある。

 立ち上げた事業会社には資金面もサポートする。銀行借り入れの必要もなく、創業資金、成長資金はすべてボーダレス・ジャパンが提供している。

 田口氏は事業会社の社長に、銀行口座に1,000万円を入れて通帳を渡す。残高がなくなったら、ボーダレス・ジャパンがまた1,000万円を提供する。「事業に対する学びがあって、こうすればうまくいくという仮説があれば、再トライできるチャンスがある」(田口氏)。一般的な起業の場合は、資金が枯渇すると金策に走り回ったり、アルバイトしたりすることになるが、そうした心配はせずに事業に専念できるのだ。

 当初はもちろん赤字だが、多くは1~2年経過すると黒字化に向かっていく。田口氏によると、黒字化させるポイントは、うまくいくまでどんどん修正していくことだ。プランニングは仮説にすぎないから、結果を見て修正する。それを繰り返すのだ。

 田口氏自身の経験によるところも大きい。その事業会社が今、経営のどのステージにあるかがわかるから、そのステージにあった助言ができるという。「今はこういう組織をつくったほうが良い、広告費をかけよう、オペレーションを固めて、こういう人材を採用しよう」といったように的確なアドバイスが可能となる。

 事業会社はすべてボーダレス・ジャパンの100%子会社だが、役員を送り込んだりはしていない。あくまで各社の自主性を重んじている。

 事業を立ち上げ、社会起業家として育てる。そのプラットフォームとなるのがボーダレス・ジャパンなのである。

(つづく)
【本城 優作】

<COMPANY INFORMATION>
代表:田口 一成
所在地:(東京オフィス)東京都新宿区市谷田町2-17 
(福岡オフィス)福岡市東区多の津4-14-1
資本金:1,000万円
グループ年商:49億2,000万円(2018年度)

<プロフィール>
田口一成 (たぐち・かずなり)

 1980年生まれ。福岡県出身。大学2年時に栄養失調に苦しむ子どもの映像を見て「これぞ自分が人生をかける価値がある」と決意。早稲田大学在学中にワシントン大学へビジネス留学。(株)ミスミにて入社後25歳で独立し、ボーダレス・ジャパンを創業。世界12カ国で32社のソーシャルビジネスを展開し、2018年度の売上は49.2億円。2018年10月には「社会起業家の数だけ社会課題が解決される」という考えのもと、社会起業家養成所ボーダレスアカデミーを開校し、1年半で250名以上が受講。次々とソーシャルビジネスを生み出すボーダレスグループの仕組みは、2019年グッドデザイン賞を受賞。2019年日経ビジネス「世界を動かす日本人50」、Forbes JAPAN「日本のインパクト・アントレプレナー35」に選出。

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