単なる憩い・賑わいの空間ではない 都市における公園の役割
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2020年03月12日 07:00

単なる憩い・賑わいの空間ではない 都市における公園の役割

公共インフラの1つ

 そもそも「公園」とは、公衆が憩うため、もしくは遊びを楽しむために公開された場所のことを指す。公衆の利用を前提としている土地であり、用地を確保して施設整備を行う「都市公園(営造物公園)」と、地域を指定して規制によって質的な維持を行う「自然公園(地域制公園)」の2つに大別される。

 公園の起源は中世ヨーロッパで、王や領主などが所有していた狩猟園地や庭園を、一般の市民が利用できるように開放したことが始まりとされている。日本においては、江戸期に大名が庶民に開放した庭園や、江戸や京都などの都市近郊の景勝地が公園の役割を果たしていたとされるが、公的には明治期の1873年に「太政官布告」で旧社寺地などを接収して公園としたのが始まりである。ちなみに、福岡県内で最初に指定されたのは、県庁や県警本部に隣接する福岡市博多区の「東公園」(76年10月開園)だ。その後、1956年4月に「都市公園法」が公布されたことで体系化され、整備基準などが定められた。

 「都市公園」とは、都市公園法によって設置や管理に関する基準が定められ、国や地方公共団体が設置・管理を行う都市施設であり、公共インフラの1つでもある。「国営公園」と「地方公共団体が設置する都市公園」の2つに大別されるが、一般的に都市公園といえば後者を指すことが多いだろう。後者は用途・目的などによって「街区公園」「近隣公園」「地区公園」「総合公園」「運動公園」「広域公園」などさらに細かく分類されており、都市における人々のレクリエーションの空間としてのほか、良好な都市景観の形成、都市環境の改善、都市の防災性の向上、生物多様性の確保、豊かな地域づくりに資する交流の空間の提供―などの役割を担っている。

 こうした都市公園の整備箇所は今も年々増えており、2018年3月末現在で全国10万9,229カ所に上り、総面積は約12万6,332ha。国民1人当たりの都市公園等面積は約10.5m2になる。だが、この1人当たりの都市公園等面積は、諸外国の都市と比較するとまだ低い水準だといい、国土交通省は今後も引き続き、防災や地域の活性化などの社会的要請に応えるためにも、都市公園の整備を推進していく意向だ。

公園に民間の力を

 こうして日本全国で、都市公園の整備は一定程度進みつつある。だが、その一方で、公園施設の老朽化の進行や、剪定不十分による公園内樹木・植栽の繁茂などで、本来もっていたポテンシャルを十分に発揮できていない都市公園も散見されている。たとえば、須崎公園(参照:「天神とWFの結節点 須崎公園&市民会館がリニューアルへ」)などは、その典型例であるといえよう。日本全国で人口減少が進み、地方公共団体の財政制約なども深刻化していくなかで、公園施設を適切に更新しつつ、都市公園の質を向上させることが重要になっている。

 そうしたなか、17年6月に都市公園法が改正され、「Park-PFI(公募設置管理制度)」が創設された。この制度は、飲食店や売店などの公園利用者の利便性向上に資する公園施設の設置と、当該施設から生じる収益を活用して、その周辺の園路や広場等の整備・改修などを一体的に行う事業者を公募によって選定するというもの。以前にも、既存の都市公園法に基づく「設置管理許可制度」があり、たとえば大濠公園内のスターバックスなどはこれを利用して設置されている。Park-PFIでは、設置期間や建ぺい率などの制限をさらに緩和することで民間ノウハウをより活かせる制度設計になっており、これを活用することで、都市公園に民間の優良な投資を誘導し、公園管理者の財政負担を軽減しつつ、都市公園の質の向上、公園利用者の利便性の向上を図ることが期待されている。

 福岡市内でも、大濠公園や須崎公園、海の中道海浜公園のほか、天神中央公園「HARENO GARDEN(ハレノガーデン)」などでPark-PFI方式が採用されており、今後も同制度を活用した都市公園の整備・運営事例はさらに増えていくと思われる。

“空いている”価値

 ただし、どの都市公園でもPark-PFIによって活性化ができるかというと、そうではない。民間事業者が運営する以上、その場所で収益を上げることができるかが最重要視される。前出の各公園のような都心部ならともかく、そもそもの賑わいが乏しいエリアの都市公園では、手を挙げる民間事業者が現れない可能性すらある。また、公園が公共インフラの1つである以上、公園内だけが賑わえばいいというものでもない。たとえばPark-PFIで公園内に飲食店などを誘致した結果、近隣の飲食店の客を奪ってしまうような結果になっては、本末転倒だ。公園単独での賑わい創出ではなく、その賑わいを周辺に波及させて、いかにエリア全体を活性化していけるかがポイントになるだろう。

 また公園には、憩いの場や人々の活動や賑わいの受け皿としての役割だけでなく、そこに緑・自然が確保されていることによる環境負荷の低減効果や、良好な景観形成、周辺の居住環境の向上といったような役割も求められる。そして外せないのは、災害などが発生した際の避難場所となるなど、防災拠点としての役割も担っていることだ。いわば都市部におけるオープンスペースとして“空いていること”自体にも価値があり、常に人の賑わいであふれていればいいというような単純な話ではない。

 一方では、地域活性化のための賑わい創出が求められ、また一方では、緑・自然などの環境的なゆとりの空間の確保という異なる役割が求められる都市公園。都市における貴重なオープンスペースとして、そのポテンシャルが再評価されるべきときが来ている。

【坂田 憲治】

(公社)日本エクステリア建設業協会 会長 別府 壽信 氏
((株)別府梢風園 代表取締役社長)

別府 壽信 氏

 近年、全国各地で大規模な自然災害が相次ぎ、政府としても防災・減災のための対策などを進めていますが、それは容易なことではありません。単に防ぐだけでなく、災害の根本となる要因を取り除いていく必要があるのではないでしょうか。我々建設業界でも、これまでのコンクリート主体の「グレーインフラ」だけでなく、環境負荷を軽減する「グリーンインフラ」を積極的に取り入れていくことが重要だと思います。

 たとえば環境先進国である米・シアトルやポートランドでは、降雨時に雨水を一時的に貯留して地下へ浸透させる透水型の植栽スペースである“レインガーデン”などのグリーンインフラによるまちづくりが、公共事業に限らず、民間の住宅やレストラン、公園、緑道などの各所で活かされています。また、米・ニューヨークのセントラルパークのように、美しい緑にあふれた公園は、その都市の“顔”にもなり得ます。

 持続可能な社会を構築していくためにも、地球環境に優しいグリーンインフラの考え方を推進しつつ、公園・緑の重要性を今一度見直して、その活用法を考えていきたいものです。

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