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2020年03月20日 07:00

暮らしと経済を殺す病~「恐怖と不安」のパンデミック(後)

 大衆を動かすには、知恵ある者の知性に訴えるのではなく、愚か者の感情に訴えろ――アドルフ・ヒトラー(1889~1945)。大衆のほとんどは愚か者であるがゆえに、その行動がいかに非知性的であり非合理的であったとしても「常識」として社会に浸透することがある。かつてヒトラーが見抜いた大衆論がいまだ有効であることを証明するような事態が2020年の現在、世界中で起きている。

■連鎖倒産の危機

 福岡県内の感染者数は4人(3月18日時点)。感染者拡大が続く北海道などに比べれば拡散抑制されているとみられるが、PCR検査が十分に行われていないという指摘もあり、予断を許さない状況にあることに変わりはない。

 福岡商工会議所によると、新型コロナウイルス感染拡大が福岡市内の飲食業やサービス業に与えている影響はかなり大きい。旅行代理店や宿泊業については、政治的事由によって中国や韓国からの観光客(インバウンド)が減少していたため、ダブルパンチを受けたかたちで大幅な売上減に直結している。

 商工会議所の経営相談窓口には、毎日のようにつなぎ融資や運転資金確保の相談が相次いでおり、前年同期の2倍程度の相談を受けている。「売上が半減した」「夏までキャンセルが出たので資金繰りのメドが立たない」などの融資面の相談が多く、「3月以降は売上がまったく立たない」といった悲痛な訴えもある。人が集まるイベントなどの中止が続いているため、仕出し弁当を納入予定だった業者が数百件のキャンセルを受けるなど、とくにイベント関連企業は直接的ダメージを被っているという。影響はサービス業だけにとどまらず、建設業も一部資材・部材が中国から入らなくなっており、工程に遅れが出始めている。

 福岡商工会議所に入る相談のうち、国や県の補償制度についての問い合わせも増えている。相談部門の担当者は、「感染者がこのまま増加すれば、相談件数はどんどん増え続ける。商工会議所は国の制度や融資についての情報提供などを行っている。セーフティーネット保障と、公庫の対応など公的部分の支援が中心で、雇用調整助成金などの案内も必要になってくる」とし、連鎖倒産という最悪の事態も想定せざるを得ない状況だ。

 新型コロナウイルスは実態経済のみならず株価にも大きな影響を与えており、2008年のリーマン・ショック級、あるいはそれ以上の衝撃に見舞われている。3月12日のニューヨーク株式市場、さらに13日の東京株式市場は記録的値下がりで市場はパニックに襲われた。アメリカの証券取引所で「パニック売り」を回避するために設けられたセキュリティーシステム「サーキットブレーカー」は9日と12日のすでに2回発動し、一時的に取引が停止される事態も発生している。13日の東京株式市場で日経平均株価は一時1,600円を超える値下がりとなり、3年4カ月ぶりに1万7,000円を割った。2月に2万3,000円台をつけていた株価が、たった1カ月で実に7,000円近くも下落したことになる。

 安倍政権下での株高を演出してきた2枚看板も、ウイルスの前ではなすすべなし。海外投資家の大量売りを買い支えしてきた日銀は3月9日と10日の2日連続で過去最大規模のETF(上場投資信託)を買い入れたものの効果は薄く、年金資金を株投資にあてている年金積立金管理運用独立法人(GPIF)も打撃を受けた。年金基金が運用失敗で大きく毀損されれば、年金給付額の引き下げにつながる恐れも指摘されている。

 ビジネス面への影響は、感染症そのものの影響というよりも、感染拡大を阻止するために人が集まることを抑制する施策によるものだ。加えて国民自身も感染の恐怖から移動や消費行動を自粛するようになっており、消費税増税もあって消費行動についてはより消極的になる傾向がある。見えない恐怖と、それを増幅、拡散させる科学技術(インターネットなど)の発達。人類は自らつくり出した情報の網で自縄自縛に陥っているようにもみえる。

 冷静に、正確な情報を基に行動すること。それには国や医療機関などが情報を惜しみなく提供し続けるしかない。安倍政権の隠蔽体質、改ざん癖などから国民は何が事実なのか疑心暗鬼に陥っており、それがいっそう混乱を与え不必要な行動自粛、消費抑制につながっている。

(了)
【特別取材班】

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