2024年03月29日( 金 )

NIDを通じたドラモリの活動 ドラッグストアとVCの将来(1)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

 日本ドラッグチェーン会(NID)は、1970年に産声をあげ、昨年6月には創設50周年を迎えた。同会の加盟社数は77社、約5,300店舗、総年商1兆4,150億円(ドラッグ部門)の巨大ボランタリーチェーン(VC)に成長した。50周年を前に一昨年9月、事業会社(株)ニッドの代表に、ドラッグストアモリの会長である森信氏が就任。ニッドは、加盟店舗向けにPB商品の開発と供給を行っている。NIDの関伸治会長と商品開発を担うニッドの森信社長の両輪でVCを牽引。業界再編が急速に進む今、求められるVCの役割とDgSの将来像を考える。

VC誕生の陰にメーカーの資本参加に対する小売の危機感

 日本ドラッグチェーン会(NID)がVC(ボランタリーチェーン)として産声をあげたのは、1970年。VCとしては、オールジャパンドラッグ(AJD)も同年に創設され、くしくも2つのVC組織が、ドラッグストア(DgS)作りのスタートを切ることとなった。

 VC誕生の背景には、製薬メーカーの薬局・薬店などの囲い込みがあった。69年、大正製薬(株)がTFC(大正フランチャイズチェーン)を発足させた。同社はすでに「ワシの会」を組織化、全国に支部を置き、薬局・薬店など小売店の系列化を行っていた。これは、メーカー系列型のチェーン組織ともいうべきものだった。化粧品の「資生堂チェーンストア」も同様だった。

 大正製薬は、「ワシの会」のほかに、「専売品だけを扱う「大正会」も組織した。専売品とは、ナショナルブランド(NB)製品の名前を変えて「大正会」の加盟店だけに卸した商品。さらに大正製薬は、TFCを通じて、組織化を強化すべく薬局・薬店に出資を始めた。

 メーカーの資本参加に、小売は危機感をもった。当時を振り返って、VCの設立にも参加したDgS関係者は、「商売の自由が利かなくなるのではという危機感が、小売にはあった」と話す。70年にNIDとAJDという2つのVCが誕生したのは、このTFCがきっかけといわれている。

 2つのVCは、今日までDgS業態の確立を目指し、発展・組織拡大してきた。ここで、今回紹介する昨年6月に創設50周年を迎えたNIDと事業会社の(株)ニッドについて、見ておこう。

 NIDは、直近の加盟社数77社、店舗数約5,300、総年商1兆4,150億円(ドラッグ部門、2019年11月末現在)の巨大VCに成長。創設以来、半世紀にわたり、共同仕入れ機構の役割をはたしてきた。

 同会を支える主要加盟社は、(株)サッポロドラッグストアー、(株)薬王堂、(株)イトーヨーカ堂、サミット(株)、(株)トモズ、(株)マツモトキヨシHD、中部薬品(株)(V・drug)、(株)バロー、(株)コクミン、ゴダイ(株)、(株)ドラッグストアモリなどだ。

一定のルールを順守すれば異業種の加盟も認める

 50周年を前に、一昨年9月、ニッドの社長に、ドラッグストアモリの森信氏(19年5月27日開催の取締役会で代表取締役会長)が就任した。森信社長は、8年半にわたりニッドを率いた筒井敏幸氏((株)まるい薬局社長)の後を引き継いだ。

 ニッドは、医薬品の製造および販売、医薬部外品、医療用具、化粧品等の販売を目的に設立された。開発したプライベートブランド(PB)商品の供給は、国内の加盟店舗のみが扱えることになっている。

 昨今、大手チェーンDgSによるM&Aを中心とした業界再編の話題でもちきりだが、大手同士の戦いに、中小DgSが巻き込まれるのは必至。こうした業界環境にあって、中小DgSの“救世主”として機能しているのがVCだ。

 規模で勝る大手に対抗する手立ては限られており、VCに加盟すれば、OTC医薬品、化粧品、サプリメント、健康食品などのH&B商品をはじめ、日用雑貨、また、近年DgSでも取り扱いが増えている食品なども幅広く仕入れ、販売することが可能だ。

 NIDの加盟社や、これから加盟を検討する企業にとっても、規模のメリットを享受することができる。こうした点でも、同会は、DgSをはじめ、他業態の小売業にとって、存在価値のあるVCへと発展する伸びしろをもっている。異業種、異業態であっても、志と考え方を共有できるところであれば、歓迎する意向だ。

 薬業界には、NIDを“野武士集団”と揶揄する声があるが、規制にとらわれず柔軟に自分たちの進むべき道を歩むその姿が、そういわせるのかもしれない。

 柔軟さを示す規約にも、それは表れている。というのも、同会の規約は、たとえOTC医薬品の扱いがない異業態でも、一定のルールを順守すれば、加盟できる内容になっている。こうした柔軟な規約の下、他業界から有力な企業が、新たに加盟している。食品スーパー、ホームセンターなどがそうだ。

(つづく)
【北美 慎一郎】

(2)

関連キーワード

関連記事